1 / Remembers in the HIMMEL

 ―――――約束だ―――――
 倉成さんはそう言いました。
 いつになるかわからない。
 でも、私はその言葉を信じ、意識を手放した。
 次に目覚めた時、そこには倉成さんの笑顔があることを願って。
 そして、約束を果たしてもらえることを願って。



2 / Promise

 視界に光が射し込む。
 瞼を開き、不明瞭な焦点を合わせる。
 するとそこには―――

「おはよう、空」
「―――おはよう、ございます」

 私が一番求めていた姿。

「倉成さん」
「なんだ?」
「おはよう、って良い言葉ですね」
「―――そうだな」

 倉成さんは優しく微笑む。
 そう、これこそが私が眠っている間ずっと求めていた姿。

「ほら、ボーっとしてないで行こうぜ。皆のところへ」
「え?」

 倉成さんが指し示す方向を見ると、皆さんの姿が。
 田中さん、小町さん、少年さん、ココちゃん。
 あのとき、苦難を共にした大切な仲間。
 その皆さんの笑顔も、今私の目の前にあります。

「空」

 倉成さんの手が差し出される。
 その瞬間、私の頭に記憶にない記憶が流れ込んできた。
 覚えのないはずの約束―――ピグマリオン。
 そして、私はその手を握った、、、、、、、



3 / Fortunate Blue

 水面が揺れる。
 眩い太陽を反射し、ゆらゆらと。
 その中を、私たちは船で駆ける。
 潮風が流れ、心地良い刺激が頬を掠めていく。
 つい先程身についたこの感触は、とても気分が良い。

「空、こんなとこにいたんだ」
「田中さん」
「どう? 身体を持った気分は」

「幸せです」



4 / Anxious Pt.1

「それにしても」
「はい?」
「―――空って、倉成にベッタリねぇ……」
「そうですか?」
「そうよ。インゼル・ヌルで目覚めてから、今初めて倉成の傍にいないの見たわ」

 そうでしょうか?
 確かに、先程まで倉成さんの傍にいましたけど……。

「ま、無意識なのかもね。ってことは、それほどまでに倉成のこと好きなんだ……」
「えぇ。私、倉成さんを好きになれて本当によかったと思っています」
「…………惚気ぇ?」
「ふふ、そうかも知れませんね」
「言ってくれるわね。―――そんなにいいものかねぇ、倉成って。あ、別に悪いって言ってるわけじゃないよ」
「確かに、倉成さんにも悪いとこもあります。でも、それも含めて私は倉成さんが好きなのです」

 いつか倉成さん本人に告白した言葉。
 あのときの情景が鮮明に脳裏に映し出される。

「―――よし、決めたっ!」
「どうかしましたか?」
「空のお陰で決心がついたわ」
「えっと……よくわかりませんが、頑張ってください」
「うん、ありがと」

 田中さんはうん、と頷くと、私の側を去っていく。
 そして、歩いていった先には―――倉成さん。

「倉成ー」
「ん、なんじゃい」
「……秋香奈のこと、憶えてる?」
「優の子供……だったか?」
「うん、そう……私の全て」
「その子がどうかしたか?」
「私がこのまま育てても、私と同じで、ほとんど片親状態。あの子には、私と同じ道は歩かせたくないの……」
「ああ」
「だから、倉成がよかったら……あの子の父親になってほしいの……」

 …………それってもしかして。
 ぜ、前言撤回です! 田中さん、頑張らないでください!!
 って、倉成さん! 何肯いてるんですか!!
 ―――あ、あぁぁぁっ! 田中さん、今倉成さんの唇に……っ!!
 そ、そんな……私だってまだ倉成さんとしたことないのにぃ……。



5 / Anxious Pt.2

「倉成さぁ〜ん、どういうことですかぁ……」
「いや、何というか……」
「私のこと好きだって言ってくれたのは嘘だったんですか……?」
「嘘なんかじゃない。俺は空のことが好きだ。それは間違いない。―――でも、優のことも放っておけないんだ」
「倉成の唇って、結構柔らかいのね……」
「…………っ!?」
「優、お前こんなときにそういうこと言うかぁ?」
「別に私はいいのよ、空と一緒でも。……私が一番なら」
「く、倉成さんの一番は私ですよねっ!?」

「お取り込みのところ悪いんだけど、ちょっといい?」
「おお、つぐみ。どうした?」
「武に話があるの」

 小町さんはそう言って少し微笑む。
 ―――事件後、一番変わったのは、やはり小町さんだろう。
 以前のような刺々しい剣呑とした雰囲気はほとんどなくなり、非常に女性らしい柔和な雰囲気を醸し出している。

「話って、ここでいいのか?」
「……そうね。ここでいいわ。―――その方が手っ取り早いしね」
「ん? 何か言ったか?」
「なんでもないわ」

 なんでもなくないと思います。
 何か嫌な予感がするんですけど……。
 それと、何かを忘れてるような……。

「武。私―――できちゃったみたいなの」

 小町さんは恥ずかしそうに顔を俯け、お腹を優しく触れる。
 ―――って、このこと忘れてました!!

「お、おい、つぐみ……何言って―――」
「く、倉成? どういうこと……?」
「言葉通りよ、優」
「……ちょっと、説明しなさいよ、倉成」
「いやだから、誤解……っていうか、つぐみ、出鱈目言うなよ」
「本当のことよ、武」
「嘘だ、大体そんな早くわかるわけ―――……あ」
「くーらーなーりー……?」
「お、ちょ、優、やめっ」
「やることやってんじゃないのよ―――――っ!!」



6 / Cloudy → Clear

「あなたは驚かないのね、空」
「……一応、知ってましたから。……忘れてましたけど」
「そうだったわね」
「…………」
「どうかした?」
「いえ、ちょっと……」

 目の前で繰り広げられる倉成さんと田中さんの戦いを眺めながら、私は考える。
 田中さんには、お子さんがいるらしい。
 それと、小町さんにも。
 そして、倉成さんはその両方の親になると言うのだろうか。
 ……全身を不安感が掻き立てる。
 倉成さんは私を好きだと言ってくれたはずなのに。
 倉成さんの心が離れていってしまいそうで……怖い。
 倉成さんがいなくなったら、私は何のために生きていいのかわからなくなる。
 それぐらい……不安。
 田中さんや小町さんにあって、私にないもの。
 それはやはり、あれ、でしょうか―――

「倉成さん」

 争っていた二人の動きが止まる。
 私は倉成さんの目をしっかりと見つめて言った。

「―――子供、作りましょう」

 すると、倉成さんや田中さんを始め、小町さんまで唖然とした顔で私を見る。
 …………私、何か変なこと言いましたか?



7 / Pygmalion

「のどかだよなぁ……」
「そうですね」

 見渡す限り、穏やかな青。
 それを眺めながら、甲板に二人、寄り添って座る。
 こうして身体が触れ合うだけで、私は全身が熱くなる。

「倉成さん」
「ん?」
「……実はあのとき、今こうしている時間がくるなんて、思ってもいませんでした」

 約束。
 あれは願いだけだった。
 本当にそんな時間がくるといいな、という。

「それこそ、今このときは夢なんじゃないか、とも思ってしまいます」
「夢なんかじゃない」

 倉成さんは、海を見つめながら、力強く言った。

「言っただろ? ―――俺は死なない。死なない限り、約束は守る。これからも、必ずだ」
「倉成さん……」
「―――ああそうだ、空。あのときの約束を果たさなきゃな」

 倉成さんは視線を私に向け、笑った。
 ―――私の大好きなあの笑顔で。

「―――――ピグマリオンって、知ってるか?―――――」




 超if。
 ライプリヒとか知らん。
 真面目なの書こうとして、どっかで何か壊れた。


感想など

 

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