静かな風が流れ続ける。

満月の下に蒼く広がる草原。

その草原に青年と女性が、静かな風の音とは裏腹に激しい金属音と爆発音を奏でていた。

青年を七夜 志貴、女性を青崎 青子。

殺人貴、魔法使いという二つ名を持つ双方が再び交差する。













――――――――――― 七つ夜の草原で ――――――――――
















「疾ッ!」


ヒュッ―――。


「―――――。」


その激突も十数分、その戦いは終局を迎える。

志貴が縦に振るう短刀・七夜を青子は大きく後退してやり過ごす。

これ以上の遠距離攻撃はさせないとばかりに志貴は体制を低くし突進した。

青崎 青子のメイン攻撃は魔法使い・マジックガンナーと呼ばれる通り、遠距離からの魔術攻撃である。

対する彼は短刀一本、距離をとられては防戦のみ。

極死・七夜を始め多くの技が使えなくなる。

有効手段はすばやく懐に着き畳み掛けるのみ。

これで決着をつけると言わんばかりに先ほどよりも志貴は速く駆けた。


「―――――!」


彼の意図を掴んだか青子は腰を低くし右手を引く。

その右手から蒼い光が生まれる。


スヴィア・ブレイク


青子の切り札の一つ、光は輝きを増す。

志貴は止まらない、このままでは無防備に攻撃を受けることになる。

いや止まった所で回避は不可能。

攻撃を受ければそれを意味するのは消滅、敗北。

だが志貴は駆ける。

速く速く速く速く速く―――――。



――――『閃鞘』



志貴が駆ける、だが青子の右手が光る。

どうやってもこの距離では追いつけない。

彼女の右手が前に出される。

そして光が一閃する―――。


ガッ!

フォン!

ズシャアァ!!


―――――『一風』


右手を掴まれそこから即座に投げ飛ばす。

青子は凛とした顔としたまま仰向けに倒れる。


あぁ、負けた。


そう心に呟いた。

口では言わない、いや言わせてくれない。

そんな彼女の予想通りに志貴は短刀を逆手に彼女の心臓へと―――――。











「・・・・・・。」

「・・・・・・。」


短刀は心臓の手前で止まった。

そこから互いの時も止まった。


「・・・・・・。」

「・・・・・・。」


何も言葉を発しない。

聞こえるのは風と草のなびく音だけ。

見えるのは互いの無表情な顔と揺れる髪。









「・・・・・・―――――。」


志貴は短刀を引いて数歩下がった。

それが当然と言うような流れで。

魔眼のせいか殺気が消えてないものの先ほどの戦意はもはや無かった。

青子もそれに応じて立ち上がった。


「・・・何で、殺さないの?」


静かに、優しい表情で彼女は問うた。

彼は空を見上げた、どこか寂しい眼差しで。


「何で、か・・・何でだろうな・・・俺にも分からん。」

「・・・本当に?」


嘘ね、と断言するような言い方だった。

志貴はハッと笑う。


「そんな言い方されても知らん、・・・そうだな、ただ。」

「ただ?」


志貴は蒼い瞳を閉じる。










「・・・あの時の借りを、返したかったのかもしれん。」






あの時―――。

あの少年が草原で果てたかもしれないあの時。

偶然通りかかった魔法使いに命を救われたあの時。




青子は目を開く、あの殺人貴がそんな事を思い出して自分の在り方を変えるなんて思っても見なかった。



「貴方、結構義理堅いのね・・・。」

「・・・・・知らん、なんとなくそう思っただけだ。」


志貴は何となく照れたのかあさっての方向を向いた。


「・・・ぷっ!あっはっはっはっは!」


青子はそんな志貴の姿に豪快に笑った。

この青年は本当にさっきまで殺しあってた殺人貴か、と。

ギャップがありすぎて笑わずに入られなかった。

不満そうに志貴が彼女の目を見て言った。


「・・・ふん、借りは返した。次は確実に殺してやる。」

「あはは、闘り始める前にこれが最後の夜だって言ったでしょ?」

「・・・・・。」


志貴が顔をしかめる。

レンという鏡が消えた今、彼女が生み出した存在も今宵で役目を終える。



「偶然会ったとしても本物かまた別の存在なんでしょうね。」

「・・・・・・。」

「だから今日のことも覚えていないしあの時の事を覚えているならまだ殺さないわね。」

「・・・・・・。」

「まさかそんなことも気づかなかった?」

「む・・・。」


馬鹿にするような口調に志貴が唸る。

青子はまたも噴出しそうになったが堪えた。

誰だ誰だこの少年は。

あの殺気はハッタリか、偽者か、それとも分身か。

あまりにも違いすぎる、自分の持つ彼のイメージ。

それとも、自分の認識がずれている?


「だったらそいつが借りを返すだけだ。それまで殺さないでやるさ。」


志貴は俯き懐かしい思い出を見るような目で言う。


「あの時に、俺とあいつが救われたのは事実だからな。」


(へぇ・・・。あんな目もできるんだ・・・。)


彼女にとっては新しい発見の連続だった。

魔法使いとまで呼ばれた彼女がまだ自分の知らない事がそれなりにあった事に驚く。


「恩知らずってのも何だかな、そんな下劣な物になった覚えも無いし・・・。」


そして苦い顔になる。忌々しいとでも言うような顔に―――。


「だが、あの馬鹿はせっかく救われた命とも知らんのかどこぞと首を突っ込んで自らを死地に追いやる。」



―――――あぁ、どうやら―――――。



「どうしようもない時、手を貸そうかとしたがいつも拒否する、そしていつも奇跡的な確立で生き残る。」


認識が少し、いやかなりずれていた事に青子は気づいた。


「あの馬鹿は真祖や代行者、あまつさえは死徒に対しても膨大な殺気を向けられても、俺を出す事を許さなかった。」









この男は―――――。






「最悪自分が殺される所なのに・・・それを否定するかのように俺を抑えつける。こっちとしては気が気でない。」






―――――誰よりも





「だがそれはそれでいいのかもしれん、自ら大切なものを切り裂くよりは・・・。」


「あいつは強い、戦闘的な強さは持っちゃいないがどんな時もこの俺をこえる抑止力で必死に生きている。」


「ま、命を守るためなら、少しは頼ってくれたほうがいいんだが、な・・・・。」







―――――遠野 志貴という人物を理解しているのだろう。








「ん・・・もう夜明けか・・・。」


太陽の光が差し込む。

彼の姿が光に透けてきた。


「これにて上映は終了だ、俺はこのまま闇に消えるとしよう。」

「ふーん・・・・・・。」

「何だ、不服そうだな?」


志貴が問う。

青子は少し寂しそうな笑みで答えた。


「んー、別に不服とかそんなんじゃないのよ、・・・・・ただ―――――。」

「・・・・・・。」


時が止まる、そのまま志貴も消えず、青子も表情を変えず止まった。










「あっちの志貴もだったけど、貴方も素敵な男の子になったんだなぁって・・・ね。」










青子の言葉によって再び時は動く―――――。


「ふっ・・・。」


それは嘲笑か、本当の笑みか、どっちとも取れるような声で。


「そうか・・・・・・。」



―――――どこかあの青年に似たような表情で。



「先生がそう言うんなら。」



―――――鏡によって創られた殺人貴は。



「そうかもしれないな・・・・・。」



―――――太陽の光に。



「ま、嬉しいって言えるのかな、この心境は・・・・・。」



――――――――――音もなく消えた。











「嬉しいなら嬉しいって素直に言いなさいよね、そんなところが彼との決定的な相違点、かな。」


誰もいない朝の草原でつぶやく。

太陽を笑顔で見ながら。


「バイ、志貴・・・・・ま、気が向いたらそっちにも顔だしてあげるわ。」


魔法使いは歩き始めた。






END





あとがき

殺人貴と先生、メルブラReACTラストでのお話。

メルブラでの敵の七夜とかってまぁ普通?の殺人貴だと思うんですが、

本当の七夜 志貴ってあんな性格じゃないと思うんですよ。

アルクェイドの十七分割はある意味例外としてネロ戦や紅赤朱・秋葉戦や止めを躊躇ったのとか。

自分である遠野 志貴を守りたくてでてたと思うんですよ。

秋葉の止めを躊躇ったのも遠野の意思と七夜の意思が捉えられてるなぁって。

表裏一体で誰よりも

七夜 志貴は遠野 志貴を理解して、

遠野 志貴は七夜 志貴を理解しているんだと思っています。

まぁこんな少し子供っぽい殺人貴は変だなとは自分でも書いてて思いますが(ぉぃ


勢いで書いた駄作で文法無茶苦茶ですが感想くれると嬉しいです。

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