「志ー貴ーさーん……そろそろご自分のお部屋に戻りませんか?」
「あー……うん、わかってはいるんだけどね……」

 そう言って、志貴さんはぐてーっとコタツに凭れ掛かる。

「本当にわかってますか?」
「うん」
「そんなこと言って、ここのところ毎日、寝にしかご自分の部屋に帰ってないじゃないですか」
「いやだって、琥珀さんの部屋、居心地良いから」

 そう言っていただけるのは嬉しいんですがね……。
 それにしても、志貴さんの今のこの緩みきった顔、とても秋葉様にはお見せできませんね。

「テレビにコタツ、それにゲームまであったら、そりゃあ帰りたくなくなりますよ……」
「でもですね、この事が秋葉様にバレたら、わたしまで怒られちゃうんですよー」

 だから、いつも秋葉様を誤魔化すのが大変なんですよ?
 暇な時はいつも志貴さんを捜しておられますし……。

「……琥珀さん」
「なんですか?」
「強く生きてください」
「志ー貴ーさーんー」

 って、志貴さん、寝る体勢に入ってませんか?

「そうは言っても、俺の部屋殺風景だからなぁ。今の俺には、琥珀さんの部屋以上に理想的な部屋はないわけで」
「なら、秋葉様に頼んでみてはどうですか? 志貴さんのためなら、二つ返事で買ってくれると思いますけど」
「俺もそう思う。……けど、何か買ってくれる家具が全部高そうなのばっかで落ち着けなさそうなんですよね……」

 あー、確かにそうかも知れませんね。
 秋葉様、志貴さんのことになると見境なくなりますし。

「あっ、それならテレビでも買ってもらったらどうですか? テレビならいくら高いのでも困ることはないんじゃないですか?」
「それこそ難しいよ。秋葉、テレビを良く思ってないんですよね?」
「ええ、まあ……」
「第一、だからこうして琥珀さんの部屋でコソコソしてるんじゃないですか」

 あ、志貴さん、コソコソしてる意識はあったんですね。
 我が物顔で寛いでますから、てっきり開き直ったものと思ってましたよ。

「でも、志貴さんが頼めば秋葉様も無碍にはできないと思いますよ?」
「うーん……そうですかねぇ」
「そうですよ。そうやって徐々に志貴さん好みの部屋にしていけば、居心地だって良くなりますし、こうしてわたしの部屋でコソコソする必要もなくなるんですよ」
「確かに。そうすれば琥珀さんも怒られる心配がなくなるわけですか」

 本当は、志貴さんがわたしの部屋に来なくなるのはちょっと寂しいんですけどね。

「―――よし、秋葉に頼んでくるよ」
「志貴さん、頑張ってくださいね」
「うん、それじゃあ行ってくる」










「秋葉、テレビ買って―――」
「ダメです」










「……ただいま」
「どうでした?」
「4秒で却下」
「志貴さーん、もうちょっと頑張ってくださいよー」
「いや、秋葉はそんな隙さえくれなかったよ」
「もっと…こう、情に訴えるとかできなかったんですか?」
「例えば?」
「えっと……泣きの芝居とか」
「ダメですよ、バレたらせっかくのテレビもベッドに張りつけで見れません……」
「あはは……」

 うーん……かと言って、この事態を放っておくこともできませんし……。

「しょうがないですね、最後の手段です」
「何か策があるんですか?」
「いいえ、策も何も、もう素直に全てを話すんです」
「それって、俺が琥珀さんの部屋に入り浸ってるってことも?」
「はい、もちろんです。じゃないと、秋葉様も納得しないでしょうし」
「……琥珀さんはいいの?」
「はい」

 わたしも怒られるかもしてませんが、志貴さんのためです、一肌脱ぎましょう。

「大丈夫ですって、良いお顔はされないかもしれませんが、わたしの部屋に入り浸るよりは良いと判断されるでしょうから」
「そうかな。……うん、ありがとう、琥珀さん」
「お礼は終わってからでいいですよ。―――それでは志貴さん、行きましょうか」
「え、琥珀さんも一緒に?」
「もちろんです。じゃないとちゃんと説明できないじゃないですか」
「そうだね。―――それじゃあ行こうか、琥珀さん」
「はい、志貴さん」










「良かったですね、志貴さん。テレビを買ってもらって」
「うん、これも全て琥珀さんのお陰だよ。ありがとう」
「いえいえ、誰でもない、志貴さんの頼み事ですから」
「これで俺も気兼ねなくテレビをゆっくりと見れるわけだ」

 ―――それはいいんですけどね? 志貴さん。

「何でまだわたしの部屋に入り浸ってるんですかー……」
「いやまあ……」
「何ですか、今度はコタツですか!?」
「そういうわけじゃないんですけど……」
「はっきり言ってくださいよ、志貴さんっ」
「―――俺さ、気付いたんだ」
「何にですか?」
「琥珀さんの部屋に入り浸る理由」
「居心地が良いからじゃなかったんですか?」
「うん、それはそうなんだけど、それの理由がテレビとかコタツじゃなかったんですよ」
「何なんですか?」
「琥珀さん」
「はい?」
「琥珀さんだったんだ。居心地の良い理由」
「…………はい?」

「琥珀さんが近くにいるから、俺はここにずっといたいと思ってたんだ」







 野暮ったいな、と地の文を排除してたらいつの間にか会話文だらけに(汗
 まあ、何つーか許してください。これが今の私の限界です。
 これくらいが気軽に読めるいい感じのサイズですよね(蝶言い訳
 ……にしても、背筋が凍る程おぞましい終わりを書いたもんだorz


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