諸君、あえて言おう。

人が人を愛することに、一体どうしてモラルやルール、常識や世間体や世襲制などの言葉を付け加える必要がある?

私から言わせて貰えば、そんな奴は本当に人を好きになったことのない、所謂クズと呼ばれていいべき人種のはずだ。

諸君、あえて言おう。

モラルやルールに囚われていては、人間……否!生物に進化などは訪れない。

タブーへの挑戦。飽くなき探究心。それは常にモラルとは正反対の人間がやってきたことだ。

浮気?結構じゃないか。そんなのも認められない度量の低い奴は捨てちまえ。でも私は許さない。

離婚?しろしろ。一度の人生なのだから、とにかく突っ走って行ってしまえばいい。どこまでもどこまでも。

諸君、あえて言おう。

私、間宮佐緒里は、実弟であるところのマイブザラー兼マイスイートエンジェル間宮正信を、愛している。




































某所某日某時刻での某三兄弟達の会話




































始めにそんな感情に気付いたのは、中学一年の頃だった。

いや、複雑な家庭事情があるわけでも法律改正がされたわけでもなんでもなく、私の目はいつの間にか弟に向いていたのだ。

正直、弟は可愛い。萌え死ぬ。

もう弟を見ているとベッドでよからぬことをしてしまったりするくらいメロメロのドキュン(意味不明)だ。

で、私はそんなことをしてはならぬと思いながらも結局はベッドでよからぬことをしてしまったり(以下略)なのだ。

もう本当に可愛い。弟についた悪い虫は容赦なく叩き潰すし、多分できることなら一生涯手元に置いておきたい。

でもそれができないから私はベッドでよからぬことを(以下略)だったりしてしまうわけだ。

まああれよ。弟万歳。もっと的確に言えば弟者マンセ━━<゚∀゚>━━ェ !!。ん?違うか?

とにもかくにも、私は弟が好きだ。愛している。ぶっちゃけ結婚したい。総理大臣になれば三頭身以内の関係は認められるだろうか?

そんな乙女なことに想いを馳せつつ、私はソファにどっかと座り込む(自称)兄に目をやった。

今時いないだろう黒縁メガネ。アホらしい七三分け。高くもなく低くもない身長。極めつけはド貧弱。

勉強以外のことは全て母親の胎内で喰らってきましたサー、というこいつの名前は佐竹恭一。名前負け決定だ。

なんでもこいつ、私に恋しているらしい。もちろん私の感想は「ハァ?」である。

脳天とシナプスと脊椎がとうとういかれ果てたようだ。勉強のしすぎで二次成長が止まったのだろうか?

どうして家族に恋する?愛する?お前は二つ向かいの愛美ちゃん(四歳)にでも恋焦がれていろよ。

「さ、佐緒里……その、勉強の調子はどうだ?」

最高、という嘘を付きたいところだが、如何せん私は勉学が苦手だ。唯一のウィークポイントといってもいい。

といいますか、社会に出ても結局は真っ黒か限りなく黒に近い灰色の人生を送ることがわかっていて今さら勉強なんぞできるか。

大体√や二次関数を習ってそれがどこに活かされる?金星の動きを熟知していれば人間飯が食っていけるのか?

答えはノー、だ。だからこそ私は嘘をつかない。

というか(自称)兄の隣にいる正信さえいなければ、私の嘘は私の主観に基づき私にとっての真実になるのだが、残念。

「ちょっと悪いけど、それがなに?」

私達には両親がいない。

いや、いるけど帰って来ない。アフリカ奥地で細々と暮らしているだろう。

え?理由?

そうだな……私と弟の前に立ちふさがる障害は、全力を持って排除する構えである、とだけ伝えておこう。

「いや、ボクが勉強を見てやろうかと……」

そしてほざく兄恭一。お前は本当に私は正信の血を継いでいるのか?

ここまで魅力を感じない男というのも珍しい。まあ、正信が魅力という魅力を持っているのだから問題はないが。

「別にいい。恭一今年東大受験ででしょ。自分のことだけ心配してなよ」

「だ、だけどだな、ボクの成績なら東大だって……」

「……自惚れるなよ浪人生。誰が稼いでる学費出してた?ん?」

そう、こいつは実は浪人生。去年の大学受験で見事に落ちてそのままアボーン。

どうせなら受験ノイローゼでそのまま死体発見にまで繋がってくれると良かったんだけどそうはいかない。

優しさの塊、神様の生まれ変わり、将来はジャニーズを裏で牛耳ると専らの噂である私のラヴァー(正信)が兄を諫めてしまったのだ。

励ましの度合いがちょうど良かったらしく、落ち込んでいたこいつは更に勉学に打ち込みやがった。

一応私が金を稼いでいるものの(これについて追求した奴には一部の例外を除き死)、どうするべきか。

というか、合格したらさっさとテメェでバイトしてこの3LDKの私達の城から出て行け、と言いたい。

もちろん正信の前でそんな不良お姉ちゃんを演じる気は毛頭どころかミクロンの一億分の一もありはしないのだが。

「お、お前も今年で大学受験だろう?一応ボクも経験してるし、なにより過去問とかをだな……」

「は?私は大学なんて行かないよ?」

なんで折角学校生活なんていう枠から開放されるのに、そんなことしなきゃいけないわけよ。

「あれ?お姉ちゃん、大学行かないんだっけ?」

と、そこで私の永遠の恋人、前世からの婚約者、世紀末覇者であるところの正信が口を開いた。

男の子(13)にしても高めの声。ぱっちりとした瞳。ああ駄目。そんな目で私を見ないで。あ、やっぱ見て。もっと見て。

――恭一、その目で私を五秒以上見続けたら殺す殺さないじゃ済まさんぞ。

「大学、行ってほしい?」

「んー……お姉ちゃんの好きでいいんじゃないかな。やっぱり自分の人生なわけだし」

「偉いっ!私は正信がそんな子に育ってくれると思ってた!ついでのどこぞのがり勉包茎野郎にも聞かせてやりたいよ」

「ほ、ほうけ……!!!」

「??ほうけい?」

「事実よ。いいの正信、あなたはそれでいいの。あいつは真性だから手遅れだけど、正信は私が手取り腰とり」

「さ、佐緒里!お前なんということを正信に……!!」

ヒュン、と私の手元からフォークとナイフが飛んでいった。いい速度が出ている。

空を切り風となった二つの凶器は、正信には視認できないほどのスピードで持って恭一の隣を通過していく。

ピッ、と奴の頬が切れ二筋から血が出てきた。この赤い血を全て絞り取りぶちまければどれだけ愉快だろうか。

まあ、そんな猟奇的なことは正信が望まないのでやりはしないが。

「?お兄ちゃん?大丈夫?」

「大丈夫よ正信、こいつがこれくらいで死んだら誰も苦労しないから」

「お、お前……殺人未遂だぞ!?」

「日本の三権分立によって弱まった法律如きで私が縛れるものですか」

三権分立が関係あるのかないのか、私にはよく分らないが。

そもそも三権分立ってなんだったけか?中学時代によったようなやってないような。

「さ、佐緒里……その……なんだ。お前もいい加減弟離れというか……」

「お姉ちゃんが弟を好きになるのは受けるけど、キモイ包茎が勝気の妹好きになっても虚しいだけよ」

多分。

「お、お、お……!」

「っぱい揉ませろ?」

七億六千万積まれてもやだね。

「違う!なんで正信なんだ!?ボクの方が断然お前を……」

「??」

「キモイ、ウザイ、キショイ、ついでに吐き気するほど存在自体が許せない。OK?」

そもそもこいつ、つい三年前まで私に一緒に風呂に入ろうと強請ってきたのだ。

もちろんのこと鉄拳制裁で返してやったが。それ以来あいつが誘ってくる事はなくなったので万々歳である。

大体私の足と足の間がお湯にも入ってないのに濡れちゃうのはこの世の世界で一人きりなのだ。

ベッドに転がり写真を眺めて悦に入れちゃうその人物は世界で一人きりなのだ。

ちょっと小さめのそれを指二本に見立て、なんか放送禁止っぽい声を上げられるのは想像の中でも世界で一人きりなのだ。

――無論、目の前で憤慨している万年童貞メガネではない。

ああ、けれど正信。お姉ちゃんはそろそろ限界です。

もうこれ以上の我慢は出来ません。というか、恭一がこの頃私の部屋覗きにくるので出すものも出せません。いや出ませんけど。

何よりも、そう。年食うごとに可愛くなっていくあなたは反則です。

それに今日は月が綺麗で(関係なし)、夕食も美味しかったし(無関係)、なにより気分が乗った(大いに関係あり)。

ああ、ああ、諸君、あえて言おう。

「正信、久々に私とお風呂に入ろうか?」

「? うん、別にいいよ」

私は、間宮佐緒里は、間宮正信を一人の男としてい愛している。

うん、でもまあ、

肉体関係から始まる愛だって、既成事実だって、愛には関係ねーわけよ?

絶望に浸っている恭一の反比例し、私はこれからのタナトス現象に想いを馳せた。

……お姉ちゃんて役割、役得だなぁとか想ったり思ったり思ったり。




































あとがけ


……これのどこがカップリングなんでしょうかねぇ?

ていうか、既に兄×妹のフラグ成立だとしか思えないわけですよ。

あ、皆様どうもこんばんび、直接的なエロなんて高等技は使えない、ジグに燃えてるシンクです。

間宮恭一、佐緒里、正信の織り成す非日常。正信が普通にのめり込んでいるのは、知識不足と慣れと性格だったりしま

これ、大丈夫なんですかね?まあつきかえされたらこんなあとがき意味ないわけですが。

本当ならもっと妹狂いの兄にしたかったのだけれど、諦めました。収集つかなくなりますし。

短いのは仕様です。短編なんか無理だからエッセイみたいんでもいいや、との結論に至ったわけでは決してありません。

あ、チョウチョチョウチョ(そしてフェードアウト)


































 
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