ぬくい。

 非常にぬくぬくです、コタツ。

 発明した人は神ですね。ホント。



「はあ……」



 わたしは顔を天板にへばりつけながら、幸せを噛み締める。

 嗚呼、至福の時……。



「……秋子さん」

「なんですかー?」

「……いや、なんでもないです」



 我ながら、かなーりやる気のない返事。

 いや、これはコタツの魔力ですから仕方ないんです。

 身体中の力という力、全て抜けてく感じで。

 だから祐一さん、そんな目で見ないで。



「…………」



 祐一さんはわたしの向かい側で黙々と小説を読んでいる。

 ……よくこの魔力に耐えられますね。

 わたしなんか、数十秒で屈したのに。

 ふと視線だけを向けて祐一さんを見ると、祐一さんもこちらを見ていたのか、目が合う。

 さっきから、これの繰り返し。

 なんですか、祐一さん。わたしになにか言いたい事があるんですか。



「なんか、秋子さん―――老けて見えますよ」



 ……………………痛っ。



「疲れが顔中に満ち溢れてる感じ」

「しょ、しょうがないじゃないですかっ! 主婦は大変なんですっ! 疲れが溜まって当然なんですっ!」

「……すいません。俺が迷惑ばっかかけてる所為で」

「あ、いえっ、祐一さんを責めるわけじゃなくって、寧ろ迷惑かけてるのは名雪の方で―――」



 というか、祐一さんはいてくれるだけでいいっていうか。

 いないと生きていけないっていうかって何いってるんだわたし。

 そんな慌てふためくわたしを、祐一さんは笑って見て―――――笑って?



「くくっ……見てて面白いですよ、秋子さん」

「祐一さんっ!!」

「でも、可愛かったですよ」

「ぐっ……そ、そんな甘い声で言ってもだ、騙されませんからっ」

「へぇ。―――で、どうするつもりですか」

「そ、そうですね。意地悪な祐一さんにはお仕置きが必要ですね」

「お仕置きって―――こんな?」

「ひゃうっ!?」



 祐一さんは言葉と共に、わたしの太ももと足で撫でてきた。

 きゅ、急にそんなことしないでくださいよぉ。

 びっくりしましたよ……。―――あ、ちょっと涙目になってきた。



「どうしました? 俺にお仕置きするんじゃなかったんですか?」

「あ、あんっ」



 そう言って祐一さんは再びわたしの太ももを内側から撫でる。

 ちょ、や、やめてくださいよぅ。

 そこ弱いってこと、知ってるくせにぃ……。



「―――どうしました? 秋子さん?」

「―――――っ!?」



 くっ、やられっぱなしで堪るもんですかっ。

 わたしに水瀬の血が流れてるって事、祐一さんに思い知らせてやります!



「えいっ」



 ごすっ。

 ……あ、ちょっと強すぎました。

 大丈夫ですかね? 祐一さんの足。

 ちょっと顔が歪んでますけど……。



「秋子さん……っ」

「い、痛かったですか? で、でも、謝りませんよっ。祐一さんが変な事するからいけないんですっ」



 もう既にこれは戦ですから。

 情け無用。



「変な事ってこんな事ですか?」

「あっ、やっ」



 ゆゆゆ祐一さんの爪先がスカートの中奥深くまで侵入してきました。

 あーあーあーあーっ!!

 ダメですっ! 触れたりするのは絶対にダメっ!!

 ―――ごきゃ。



「はうぁっ!? す、脛っ!!」



 悶絶祐一さん。

 ……どうやら、わたしの暴れた肢が祐一さんの肢を蹴り上げたらしい。

 当然、コタツ内は天井が低い。特にヒーター部。

 それで、末路が…………あの悶絶ぶり。



「―――――っ!?」



 祐一さんは肢を抱え、のた打ち回る。

 こ、これは流石に痛そうです。



「ご、ごめんなさ―――」

「―――よくもやってくれましたね、秋子さん」

「……へ?」



 あぁ、祐一さんの眼光がヤバイです。逝っちゃってます。

 口元もなんか邪悪な笑みを浮かべてますよっ!?

 って、祐一さん!? コタツに頭突っ込んで何を―――



「―――ひゃあっ!」



 は、鼻が、口が、息が、ふふふ、触れてますっ。

 どこってそんな、い、言えるわけないじゃないですか!!



「あっ……あぁっ!!」



 し、舌はダメですよ!!



「や…やあっ! ゆういちさ……捩じ込んじゃ……っ!!」

「―――ただい…ま……?」



 ……………………あ。

 見られました。名雪に。

 そりゃあもう、物凄く。

 コタツに入り、悶々としているわたしと、頭だけ突っ込んでいる祐一さん。

 弁解の余地……なし。



「お、おかえり、なゆ―――きゃあっ!?」



 祐一さん、そこは刺激が強―――じゃなくて、名雪に気づいてないんですかっ!?



「…………おかあさん、祐一」



 特殊スキル"威圧感"、発動。

 ……あ、祐一さんの動きが止まりました。



「―――今、何してたのか」



 あぁ……ね、眠れる獅子が……。



「―――じっくり」



 って、祐一さんっ! さっさと出てきてくださいっ!!

 今度いくらでも好きなようにしていいですから! だからそんなとこ舐めてる場合じゃ……っ!!



「―――聞かせて欲しいもんだねぇ?」



 ――――――――暗転。












 written by 柊


 オチとか知らん。

 祀りに相応しいかも知らん。

 短いとか言われても知らん。

 とりあえず、おねいさん最高。


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