「やっと…報告に来れたな」

「ええ…許してもらえるかしら?」

「アイスで許して貰え…ないよなぁ」

「祐一…あたしの妹を何だと思っているのよ…」

「冗談だよ。 香里」



雪国の遅い桜も葉桜に変わり、短い夏が始まろうとしている。

季節は巡る。

『彼女』が居た季節もまた、二度と戻らない過去の記憶になっていく…。










 〜Two Persons' Loves〜











町外れにある墓場。

そこに一組の男女がいる。

男性の名は相沢祐一、その傍らにそっと寄り添う様に立っている女性の名は相沢香里。

二人は今日入籍したばかりだ。



「栞遅くなって、ごめんな…」

「これからは、一杯来るからね…」



小さな声で。

二人はお墓に語りかける。

返事が返ってこないとしても。

二人は優しく語りかける。
















まずは遅くなってごめんな。

正直、お前に会うのが怖かった。

俺達の姿を見たら怒ると思って。

でも、俺達もいつまでも逃げてはいられない。

だから、今日は全部話しに来たんだ。





貴女を拒絶した事…。

例え貴女が許してくれたとしても、あたしは何処かで脅えていた。

栞があたしを怨んでいるかもしれないって。

だから、あたしは罪を償おうとしたの。





香里の部屋に無理やり入った時。

香里は自分の手首にカッターを当てていた。

直ぐに止めたけど、香里の目の焦点は定まっていなかった。

最初は…香里が元気になるまで支えようと思った。

元気になれば、それで終わりだと思っていた。






祐一はあたしの事を支えてくれた。

気持ちを理解してくれて、励ましてくれた。

でも…辛いのはあたしだけじゃなかった。

貴女という恋人を失った祐一も辛かった。

それに気がついたのは、祐一が公園で一人で泣いているのを見た時だった。





俺は一人で泣いていた。

香里に弱みを見せてはいけない。

彼女は俺を頼っているのだからと。

でも、結局それは俺の自惚れだった。

香里は泣いている俺を優しく包み込んでくれた。






それは初めて見た祐一の弱さだった。

何時もあたしを励ましてくれた祐一の弱さ。

その弱さを見た時、あたしは祐一に支えられているのが恥ずかしくなった。

祐一と支えあっていきたいって思った。





俺と香里はその時から付き合いだした。

傍から見ると単なる傷の舐め合いかもしれない。

いや…実際傷の舐め合いだった。

でも、俺達はそれで良かった。

いつか、本当に愛せると信じていたから。





あのね、栞。

あたし、祐一の子供が出来たの。

祐一と共に歩いていくわ。

だって、祐一の事を愛してるから。





俺は香里と共に生きる。

香里の事を愛しているから。

我が侭承知で言うぞ。

俺達の事、祝福してくれないか?





栞におめでとうって言われたい。

栞に祝福されたい。

だってあたしは…

だって俺は…






















栞を愛しているのだから





















小さな声で。

二人はお墓に語りかける。

返事が返ってこないとしても。

二人は優しく語りかける。

愛する者と語りかける。

例えその愛が、傷の舐め合いから生まれたとしても。

二人は確かに愛し合っているのだから。

二人は『彼女』を愛しているのだから。

小さな声で。

二人はお墓に語りかける。

返事が返ってこないとしても。

二人は優しく語りかける。

愛する者と語りかける。

例えその言葉が、愛するヒトを裏切った言い訳だとしても。

二人は確かに愛し合っているのだから。

二人は『彼女』を愛しているのだから。





優しい笑みで。

『彼女』は二人を見守りつづける。

返事をする事が出来ないとしても。

『彼女』は優しく見守りつづける。

愛する者を見守りつづける。

例えその愛が、既に伝えられない事だとしても。

想いは残り続けるのだから。

『彼女』は二人を愛しているのだから。

優しい笑みで。

『彼女』は二人を見守りつづける。

返事をする事が出来ないとしても。

『彼女』は優しく見守りつづける。

愛する者を見守りつづける。

例えその行為が、愛するヒトを残してしまった謝罪だとしても。

想いは残り続けるのだから。

『彼女』は二人を愛しているのだから。



















後書きっぽい雑談

え〜この作品はJust Because It Merely Lovesの続編として書きましたが、Just Because It Merely Lovesを知らなくても十分楽しめる(?)作品にしたつもりです。
栞ファンの方で、気を悪くされたのならゴメンナサイ。
でも、私は栞好きですよ?嫌いじゃないですよ?


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