カリカリカリカリ・・・・・
「・・・・・・・・」
カリカリカリカリ・・・・・
「・・・・・・・・」
カリカリカリカリ・・・・・
暦は10月、肌寒くなり始めるこの季節に受験勉強という名の試練に打ち込む。
後数ヶ月もすれば大学受験が始まるので当たり前のことか。
しかしこれが俺一人なら絶対に続かないだろうな。
え、じゃあなんで続いてるかって、それはもちろん・・・・
「・・・はあ・・・・ん、どうしたの祐一」
隣にいる俺の彼女美坂香里のおかげだろう。
Album
今俺たちは香里の部屋で勉強をしている。
ベットの横に置かれた座るとちょうどよい高さの机にお互い向かい合って座っている。
香里の部屋なのだから自分の勉強机があるのにどうしてこの机でやるのかと聞いたら・・・
『だ、だって祐一の顔を見ながらやりたいから・・・・(///)』
と顔を赤らめ俯いて答えた。
(もうなんていうの『激萌え』?あの顔は反則だろ。
普段凛としている香里とのギャップにそそられまくりで思わず襲いそうになった、と言うより襲った(爆))
「何よ人の顔じっと見て」
無言で香里を見続ける俺を訝しく思ったのか少し強めに言う。
「なんでもないよ、ただ今日も香里は可愛いな〜って思ってただけだよ」
「なっっ!!!!!(///)」
その言葉を言ったとたん『ぼっ』と効果音が聞こえるくらいの勢いで顔を赤く染める。
「も、もう!なに言ってるのよ!!」
香里は恥ずかしさを紛らわすため机をばんばんと両手で叩く。
その行為で少しは落ち着いたのか顔の赤みが薄れていく。
「唐突に変なこと言わないでよね、まったく!」
「何を言うか!変なことじゃないぞ。香里の可愛さは!」
「なっっっ!!!!!(///)」
俺の倒置法よろしくな言葉にセリフに再び赤くなる香里。
「もういいわよ!あたし飲み物取ってくる!!」
からかわれるのが癪にさわったのかそう告げると香里は部屋から出て行ってしまった。
(少しからかい過ぎたか・・・)
勢いよく閉められたトビラを眺めながらそう思った。
机の上の問題集に目をやるがどうにも問題を解く気にはなれない。
しかたがないので香里が戻るまで休憩、と勝手に決めごろんと寝転がる。
見上げる天井はもう何度か見たことがある。
この部屋で香里と二人きりということはそういうことになる確率が高い。
しばらくぼ〜、と天井を見てから寝返りをうつ。
すると今度は視界に本棚が映る。
棚には参考書が隙間なく綺麗に並べられ、またぬいぐるみが並べられている段もある。
下から上へと視線を上げていくとふとあるところに目が止まる。
それは他の参考書などよりも大きくビニールに包まれている。
(何だ、あれ)
と思うのは人として当たり前だろう。
見慣れない物、ましてやそれが自分の恋人の部屋にあると言うならその正体はつきとめたくもなる。
起き上がりそれを手にとってみる。
(アルバムか・・・・)
それは一般家庭には必ずある過去を保存するための本だった。
(今この部屋には俺一人。これは神様が見ろって言ってるんだな。)
そう勝手に解釈した俺は早速アルバムをめくる。
『香里 0歳』
まず最初に目に入ってきたのはそう題名付けられた赤ん坊の写真だった。
写真の中の香里は目を開けて何かを取ろうと手を空中でぱたぱたと掲げている。
おそらく写真を撮っている人に反応しているのだろう。
次のページを開いてみる。
そこには小さな赤ん坊がよつんばになっている写真があった。
写真の隅には香里の母親である美織さんが写っているので『はいはい』をしているところの写真であろう。
そのページの写真をあらかた見終わったその時・・・
「祐一、飲み物紅茶でよかっ・・・・ってなに見てるのよ!!!」
香里が部屋に戻ってきた。
「いや部屋を見渡したらこんな物があったから」
「あったからじゃないわよ!勝手に人の部屋をあさって!!!とりあえずアルバムをこっちに渡しなさい!」
「なんで?良いじゃないかよ、少しくらい」
「良くないわよ!ほら早く!!」
せかす香里を無視して俺は次のページを開く。
「おお、香里可愛い〜〜〜」
次のページには母親と幼稚園の前に並んでいる香里の写真があった。
「あ、ちょ、ちょっと!!」
「う〜〜ん、かおりんはこの頃からぷりち〜だったんだな」
「こら、やめなさい!」
「どれどれこっちは・・・・おお、こっちもぷりち〜!!」
「ああ〜もういい加減にして!!」
次々とページを開いて幼女香里を堪能する俺に必死になって俺からアルバムを取り返そうとする香里。
「そんなに見られたくないのか?」
アルバムを取り返そうとにじり寄る香里に真剣な顔で聞く。
「え、あ」
俺の突然の変化に少したじろう香里。
「俺は昔の香里のことなんてちっとも知らないから知りたいんだよ。香里がどんな子でどんな事をしてきたのか」
香里の目をじっと見つめて言う。
「そう言うの迷惑か?」
「ち、違うの!ただ部屋に入ったらいきなり見てるからついかっとなって・・・」
「なら見ても良いんだよな?」
「もう、仕方ないわね」
俺の言葉に香里ははにかんだ笑顔を浮かべる。
「ならこっちに来てどれがどういう写真なのか説明してくれよ」
座っている隣に座布団を持ってきて座るように促す。
香里は
「はいはい」
とそっけなく、しかし嬉しそうに座る。
「これは小学校の入学式の時のね」
「これは学芸会の時の」
「これは遠足で山に行った時の写真ね」
「これは・・・・」
香里は俺の隣でひとつひとつ丁寧に説明をしてくれた。
その話は入学式の前日父親がカメラのフィルムを買い忘れ夜中にカメラ屋をたたき起こしたこと、
学芸会で緊張してセリフをかんでしまったこと、遠足の前日興奮して眠れなかったことなど微笑ましいものばかりだった。
次々とページをめくっていく香里の手があるページで止まった。
「ここからは中学生の時のね。正直あまり見て欲しくないわ・・・」
悲しい顔でそうつぶやく香里。
「どうして?」
「中学に入ってからすぐに栞の体調が悪くなったの。
普段からあまり体調が良くなかったからすごく心配であまり笑ってた記憶がないの」
その言葉の通りにめくられるどのページの香里には前のページのような笑顔がなかった。
その表情は悲しみを押し殺し無理やり笑顔を作っているのがはっきりと判る。
「ひどい顔ね」
ページをめくりながら香里がつぶやく。
「ここで終わりよ」
中学の卒業式の写真の説明を終え、アルバムをたたむ。
「え、高校に入学してからのは?」
「ないわ」
「なんで?」
「ずっと体調の悪かった栞がもう助からないって言われたのがちょうどこの時期なの。だからもう写真とか撮るのが辛くて・・・」
涙目で俯きながらそうつぶやく。
中学までの写真にはクラスメイトと写った写真よりも栞と一緒との写真のほうが多かった。
おそらく学校に行けない栞が寂しがらないために撮っていたのだろう。
しかしそれはいつか栞の病気が治り一緒に学校へ行けると信じていたから。
もう助からないと言われそばにいるのも辛くなった香里にとって写真という思い出は耐えられるものではなかったのであろう。
でも今は・・・・・
「なあ香里」
「・・・・・・・・・」
俺の呼びかけに反応せず俯いたままの香里。
「写真、撮ろうか?」
「えっ・・・・」
その言葉に反応して顔を上げる。
「だから写真。撮ろうぜ」
「で、でも・・・」
「確かに香里と栞には辛いことがあった。でも今は違うだろ?栞の病気は治ったし何より二人は笑い会えてるじゃないか」
「・・・・・・・・・・」
「それにこれからだって嬉しいことや楽しいことが山ほどあるんだぜ。写真に残しておかなきゃ損するって」
「・・・・いいのかしら」
「何がだ」
「あたし笑っていてもいいのかしら。栞のこと忘れようとしていたあたしが」
「当たり前だろ!」
香里のその言葉に声を荒げてしまう。
「香里はずっと苦しんできたんだろ?ならもう十分だよ!今まで苦しんできた分これからを楽しまなきゃ!!」
重い沈黙が流れる。香里は顔を俯けにしその表情が読めない。
「あたし・・・・」
その沈黙を香里が静かに破る。
「あたし、笑えるかしら?カメラの前で、栞と一緒に・・・」
俺はその言葉が嬉しかった。
「あったりまえだ!そりゃもう輝かんばかりのまぶしい笑顔ができるさ!!」
いつも過去に縛られ後悔ばかりしてきた香里の言葉に。
後ろではなく前に向かって歩き始めるためのその言葉に。
だから俺は・・・・
「よしっ!!早速撮ろう!俺は使い捨てのカメラを買って来るから香里は栞を呼んで来てくれ!」
そういい残すと俺は部屋を飛び出てコンビニへと急いだ。
カメラを買い美坂家に戻ると玄関の前で香里と栞が待っていた。
「祐一さん、どうしたんですか?いきなり写真を撮るだなんて」
「いいからいいから、ほらそこに並んで」
レジ袋からカメラを取り出し二人をせかす。
「ほら香里、もう少し栞のほうによって。栞、あんまり頭をふらふらさせない」
「えぅ〜祐一さん注文が多いです」
「ふふっ」
香里が俺の言葉にぶーたれる栞の肩に手を乗せる。
「これでいい、祐一?」
「ああ、そのままそのまま動くなよ。」
「はい」
「ええ」
「よ〜〜し、じゃあ、5782×258−1491754=〜〜」
「え、えぅ〜〜〜なんですかそれは〜〜」
「祐一」
「冗談冗談、それじゃほんとにいくぞ、いちたすいちは〜〜」
「「に〜〜〜」」
カシャッ
後日、香里の机の上に笑顔の香里と栞の写真が飾られるのはまた別のお話・・・・
FIN
あとがき
どうもはじめましてuniと言う物です。
今回のこの祀り、すんばらしいです、はい。
かおりん最高、ビバかおりんってな感じです。
そんなこんなで私のかおりん好きをこめたこの駄文を祀りに謙譲したいと思います。
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
それでは祀りが今以上に盛り上がること願っています。
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