女心と春うらら         作者 JJ





春うらら隣の客はよく柿食う客だ食いしん坊万歳。
何でこんなに思考がおかしいんだろう。
ああ、そうか、今日は祐一さんが出掛けてしまったからか。
しかも女性と。
そんなに飢えていたなら私がいくらでもお相手をするのに。
特に夜の。
だめです、やっぱり思考が纏まりません。
こんな時には凄く実感してしまいます。
私がどれだけ祐一さんを必要としていたか、依存していたか、と言う事を。
一人が寂しくなる。
私の世界にはもうたった一人しか見えていないと言うのに。
怖くなる。
もう私の元へは帰ってこないんじゃないかと。
求めてしまう…愛しい人の温もりを。
祐一さん…祐一さん…祐一さん…
彼がいないだけでこんなにも私は弱くなってしまう。
ああ、駄目です。
彼への愛情を悟られてはいけない。
彼の愛情を求めてはいけない。
だって、私たちは血が繋がっているから…

―――はて?血が繋がっているだけなら名雪はOKなのにどうして私はNGなんでしょうか?

法律で禁止されているからと言うのがありますね。
…国家レベルで私の愛を否定しますかこのやろう。

ああ、駄目駄目駄目。
さっきからとりとめもないことばかり考えてしまいます。
そうだ、ここはもっと健全な事を考えましょう。
えーと健全な事、健全な事…
そういえば名雪は進路をどうするんでしょうか?
そろそろ決めておかないとまずいと思うんですけど…
昨日聞いた限りではお嫁さんとか言っていましたね。
しかも祐一さんを見ながら。
あの小娘が。
祐一さんの生涯の伴侶はもっとこう、大人の女性が良いと思うんですよ?
主に私。特に私。絶対に私。なにがあっても私。

あうぅ〜どうしてすぐに祐一さんのことばっかり考えてしまうのでしょうか。
それもこれも全部祐一さんが悪いんですから。
正に魔性の男です。…いいですねそれ。
ああ…祐一さんになら誘惑されてみたい。
むしろ望むところ。

ふにゅう〜〜、こんな事を考えちゃだめです。
そうだ!こんな時は本人に解決してもらいま――ってデートに行っていないんですってば!

「ただいまー」

と、玄関から私が聞き間違えることのない声が聞こえてきました。
言うまでもなく祐一さんです。
遅いです、だいたい高校生は勉学に勤しむべきで、女性と出掛けるなんてもってのほかです。
よし、ここは人生の先輩として不純異性交遊はいけませんとしっかりと言わなければいけませんね。
思っていることとは反対に、浮き足立つ体を気合で必死に抑えて玄関へと向かいます。

「秋子さん、ただいまです」
「こほん、いいですか祐一さんあなたは―――」

私の言葉は祐一さんが差し出したモノによって遮られてしまいました。

「これ、日頃の感謝を込めて秋子さんにプレゼントです」
「――え、ゆ、祐一さん?今日はデートだったんじゃ…」
「ち、違いますって。友達にこれを一緒に選んでもらってたんですって」

ただの友達です、と必死に弁解する祐一さんを見ていると今まで心に溜まっていた
暗い気分が吹き飛んでしまいました。

「あ、あははは」
「あ、秋子さん、笑わないでくださいよ」
「あ…いえごめんなさい、祐一さんを笑ったんじゃありませんよ」

私があまりにも単純だったから。
デートじゃなくて私の贈り物を選んでいてくれたんだってわかったら嬉しくて。
ほんと、単純ですよね。

「もう…勘弁してくださいって。はい、ちゃんと受け取ってくださいね、そうじゃなきゃ大損ですから」
「ええ、わかりました。祐一さんが選んでくれたんですから喜んで受け取ります」

渡されたのは薄く、小さな紙が二枚。
これは――

「旅行券…ですか?」
「ええ、日頃の疲れを取ってもらおうと温泉にしました。あ、そんなに高いものじゃないですよ」

そうは言ってもやはり学生ではかなり厳しかったのでしょう。
それも二枚…ん?二枚?

「あの、どうして二枚も?」
「あ、そ、それは、ですね。秋子さんにも一緒に行きたい人がいるんじゃないかと思って、ですね」
「はぁ…」
「いえあのその、も、もしもそういう人が誰もいないんだったら名雪と行ってもいいし…お、俺でよかったら
 一緒に行っても…っていうか、あの、ですね」
「?」

良くはわかりませんが、あと一枚は私が誘った人と一緒に行ったらどうか、と言う事でしょうか?
なんだ、それならもう決まってるじゃないですか。
 
「それなら祐一さん。一緒に行きませんか?」
「え!?あ、よ、喜んで!!」

はて、どうしてそんなに気合いっぱいなんでしょう?
そんなに温泉に行きたかったのでしょうか。

とにかく――学生さんもたまには気分転換が必要ですよね。
不純異性交遊上等です。
これは神が与えたもうた最大にして最後のチャンスです。
逃してなるもんですか!






あとがき

秋子さん祀りとあっては黙っていられず投稿しました。
初めて短編を書いたのでどんなもんやら。
これがどのくらいのものなのかは自分では良くわかりません。
自分なりに精一杯やったつもりですが、ご指摘があればどんどん言って下さい。

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