ミーンミーン……



「あつい…ですね……」



 私は愚痴るようにそう洩らした。

 しかし、それが却って逆効果になってたりするのはご愛嬌。……笑えませんけどね。

 ――ここは東京のとあるマンションの一室……の部屋前。

 照りつく陽射しが私の肌を焦がすような錯覚を覚えさせます。

 ……なんでこんなに暑いんですか、ここは。

 北国出身の私には辛いです。拷問です。

 私は身体を蝕む暑さにだれながら、ドアに背を預ける。

 金属製の扉がひんやりと気持ち良い。

 ――もう、どのくらいこうしているだろうか。

 かれこれ2時間近くだと思う。

 このマンションの住人なのだろうか、2時間もドアにへばりついてる私を訝しがる視線が痛いです。

 ……そういえば、祐一さんがウチに来たときも名雪に2時間待たされたって言ってましたね。

 季節は違えど、辛さは一緒。

 名雪にはあのことも含めてお仕置きが必要ですね。……もうそんな歳でもないですけど。

 コツ…コツ……

 そんなことを考えていると、階段の方から足音が聞こえてきました。

 ……まったく、遅いです。何やってたんですか。

 私は陽にやられかけている身体をよろよろと立ち上がらせる。

 そして、歩いてくる人物に目を向けた。

 ……あぁ、その目、その鼻、その唇。――間違いありません。

 私に気付いたのか、彼は凄く驚いた表情を見せる。



「あ、秋子さん……!?」



 心にまで届く、その声も。

 全く変わっていませんね。



「――お久しぶりですね」


 ……いや、随分と凛々しくなりましたね。

 素敵ですよ――



「祐一さん」




















hotter than sunlight




















「……で、どうして秋子さんがここにいるんですか?」



 ずずっ、と私はアイスコーヒーを啜る。

 あ、おいしい。

 まあ、祐一さんの作ってくれたものなら何でもおいしいですけどねー。

 私は部屋をぐるりと見回してみる。

 すっきりとした部屋。とても一人暮らしの男性の部屋とは思えない。



「秋子さん? 聞いてます?」

「……あ、ごめんなさい。ボーっとしてました」



 くっ、私としたことが祐一さんの部屋という魔力に侵されてしまいました。

 それによって肝心の祐一さんの話を聞いてなかったとは……不覚。



「どうして秋子さんがここにいるんですか?」



 あ、そういうことですか。



「ダメですか……?」

「いえ……別に構いませんけど……」

「――家出しました」

「……はぁ?」



 私の決死の告白に物凄く怪訝な表情をする祐一さん。

 ……あ、その顔ちょっと嫌です。

 でも祐一さんは好きです。きゃっ。



「ですから、家出をしてきたんです」

「はぁ……」



 あ、その溜め息、呆れてますね!?

 うぅ……だから祐一さんには言いたくなかったんです。

 ……別に強制はされてませんでしたけどね。私が勝手に自白しただけですから。



「名雪と喧嘩でもしたんですか?」

「そう、聞いてくださいよ祐一さんっ! 名雪ったら、私のイチゴのアイスを勝手に食べたんですよっ!?」

「はぁ……」

「『はぁ……』じゃありませんっ!! 私がどれだけ楽しみにしてたと思ってるんですか!?」

「あぁ……いや。何となくわかります。名雪の母親ですから」



 あぁ〜っ、何ですか、その納得の仕方は!?

 そりゃあ、親子揃ってイチゴ好きですけど、そうやって一括りにされるのはあんまり好きじゃありません。

 私の方が祐一さんを愛してますから。



「まあ、理由を深く訊く気もないですから。――これからどうするんですか?」

「……あ。考えてませんでした」



 ど、どうしましょうか?

 別に名雪と喧嘩したわけでもないですから、すぐに帰ることは出来ますが、それは何となく嫌です。

 それに、祐一さんに逢えるという、こんなおいしいシチュエーションを逃すわけには。

 これに託けて祐一さんの部屋に入り浸ったりしちゃったりして。

 果ては永久就職とか……きゃっ、ダメです祐一さん。……相変わらず強引なんですから。



「…………」



 って、呆れ果てた視線が痛いです。

 あぁ、そのいかにも『……ハッ』って鼻で笑いそうな表情はやめてください。



「……そ、それにしても、暑いですね」



 我ながら完璧なごまかし。……嘘ですごめんなさい。かなり無理ありました。



「……そうですか? これでも涼しい方ですよ」



 なんですと?

 それでも私に合わせてくれるのは素敵です、祐一さん。大好きです。

 でも、その発言は聞き捨てなりません。

 これでも涼しい? そんなわけありません。こんな暑いのに涼しいもクソもありません。暑いもんは暑いんです。



「クーラーつけましょう」

「却下」

「…………」

「…………」

「ど、どうしてですかっ!? こんなに暑いんですよ!?」

「いや、だから、今日はクーラーつける程じゃありませんよ。多少なら我慢すればいいだけですし」

「ダメですっ!! 私が堪えれません!! 私と祐一さんの愛の巣(予定)が卑しい暑さなんかに侵されていくなんて!! あ、お金ですか? お金の心配ですか!? 安心してください。私が祐一さんのためにコツコツ貯めておいた『祐一さん基金』で――」

「途中言ってる事がよくわかりませんが、お金云々じゃないですよ」



 だったら何なんですか!? そういうプレイですか? それなら、その……嫌じゃありませんけど……。

 はっ……!! そういうことですか。そんなんですよね、祐一さん。



「――私を追い出そうとしてるんですね」

「は……?」

「そうですよね……。祐一さんモテますから、彼女の一人や二人いますよね」

「いや、二人どころか一人もいませんよ」

「昔、私を愛してくれたのも同情だったんですね……」

「いやいやいや、そんな記憶これっぽっちもないんですけど……?」

「やっぱり若い娘の方が、こんなおばさんよりいいですよね……」



 いじける私の後ろで、祐一さんは『はぁ……』と溜め息を吐く。

 何ですか。そんなに私の姿が滑稽なんですか……?



「……秋子さんはおばさんなんかじゃありませんよ。そりゃあ年齢的にはそうかもしれませんけど、そこら辺の若い女性よりも俺にとっては魅力的ですよ」

「……本当ですか?」

「こんな性質の悪い嘘は吐きません」

「……本気にしちゃいますよ?」

「え……?」



 この問いは相当意地悪だと自分でも思う。

 何故なら、祐一さんは私を慰めようとしてくれてるだけだから。

 それでも私はやめない。

 何となく、フラれた腹癒せです。

 まあ、私が勝手に玉砕してるだけで、祐一さんはそんなこと気付いちゃないでしょうけど。



「――いいですよ」

「え……?」



 今度は私が驚く番だった。

 祐一さんは、今、なんて……?



「秋子さんこそ、こんなガキでもいいんですか?」

「え? あ、は、はい……」



 ……もしかして、私は今とんでもないことを口走ったのではないか?

 私は慌てて後ろを振り向く。

 そして目に入ったのは、窓から降り注ぐ夏の陽射し。

 それが急に途絶え、視界は人影で埋め尽くされる。



「……よかった」



 影の呟き。

 そして影の顔が徐々にはっきりと映し出されていく。



「今でも充分暑いですから、ちょっとぐらい暑くなっても構いませんよね?」

「……了承」



 微笑みかける影に、私も微笑み、言葉にはゆっくりと肯く。

 そうして、影――祐一さんは私を抱きしめた。

 陽射しよりも暑く、熱く――。





















 意味不明なのはご愛嬌(ぉ
 最後は無理やりだし。ダメダメだぁ。
 さらに、私が神と崇める某秋子マスター(何)さんの影響受けまくりマクリスティー(古ッ
 某へタレボーカルのXaメタルバンドの如く、パクリッシュなところにハマれ。←ネタがわかりずらい


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送