会話だけにしようと思っただけど無理だったという、それだけのこと












ドデカバクハツシサンヘタレーノスノハーラ With 馬鹿崎
「よ、岡崎。おはよう」 「世間一般ではこんにちはの時間帯だけどな」 「気にするなよ、いつものことじゃん」 「確かに、お前が日本語を正しく使えないのはいつものことだな」 「そっちじゃないっすよ!」 「うん? ああ、確かにお前が馬鹿なのはいつものことだな」 「んなこと一言も言ってないでしょ!?」 「なんだよ、一々五月蝿いやつだな。じゃあアレだ、お前がへたれなことか」 「僕へたれじゃないし!」 「……?」 「心底不思議そうな顔しないでくれますかねぇ!?」 「よし、お前がへたれじゃないって言うなら証拠を見せろ」 「え? 証拠?」 「おう。この学校のどこかに封印されたっていう、妖怪ドデカバクハツシサンヘタレーノスノハーラを生け捕りにしてこい」 「ま、マジかよ!? そんな妖怪がうちの学校に!?」 「ああ。特徴はいつもぶるぶる震えていて、臆病者のくせに自信過剰。色魔で変態で害悪存在だから、学校側が封じ込めたんだ」 「そ、そうなんだ……強いの? それ?」 「いや、あまり強くない。ただの変態妖怪だからな。あと口癖は「マジかよッ!?」と「ヒィッ!」。小さいッは必須だ」 「じゃ、簡単に捕まえられそうじゃん」 「それが俺の知る春原の、最期の言葉だった」 「勝手に人の人生締めくくらないでくれますかねぇ!?」 「しかも捕まえたじゃなくて捕まえられそうだぞ。お前死ぬな、ヘタレーノに殺されて」 「ふ、不吉なこと言うなよ!」 「……?」 「だからそこで心底不思議そうな顔しないでくれますかねぇ!?」 「それが俺の知る春原の、最期の……本当に最期の、言葉だったんだ……」 「誰に語ってるんすか!? ていうかまた僕死ぬんすね!」 「しかも不思議そうな顔しないでくれだぞ? 傍から聞いたら随分な遺言だよな」 「だから僕死にませんから!」 「ま、いいや。ほら、とっとと行ってこいよ。情報では資料室の本棚の影とか、机の下らしいぞ」 「資料室の? 有紀寧ちゃんが危ない!」 「そうだな。かっこよく助けたらお前も一躍ヒーロー時の人。宮沢もお前にどっきゅん☆すること間違いなしだ」 「よ、よーし! 岡崎! 僕やるよ!」 「おいおい春原、強姦は重罪だぞ」 「そっちのやるじゃねぇよ! 人が真剣にやる気になってるのに邪魔しないでくれよ!」 「わかったわかった。警察がうちに来ても、俺は何も知りませんって言っといてやるから」 「そうじゃないでしょ!? ああもう、ったく。僕は行くからね」 「おう」 春原が良い笑顔で去っていった。 うわ、 すごい、 本当に、 あいつは凄い、 ――――馬鹿だ。 さて、それじゃ宮沢のお友達の方々、うまく春原を料理してくださいよっと。 俺は机に突っ伏し、昼休みの麗らかなひと時を惰眠に当てた。 ちなみにその十分後、「ドデカバクハツシサ(以下略)と死闘を繰り広げてきた」と悲痛な面持ちで言いながら春原が戻ってきた。 可哀想な星の元に生まれたように顔を腫らしている。なるほど、どうやら宮沢のお友達は俺の期待通りにしてくれたらしい。 「で、ドデカバクハ(以下略)は捕まえられたのか?」 「いやー、それが後一歩だったんだけどさ。「ヒィィィッ」って悲鳴あげながら逃げちゃったんだ」 「残念だったな」 「ホントだよ。あーあ、捕まえたらまず岡崎に見せてやろうと思ってたのにな」 「でも、あと少しで捕まえられそうだったんだろ?」 「もちろんだよ」 「じゃ、明日も行くよな?」 「――――――――え?」 「いや、愚問だよな。俺の知る春原は一度の失敗でめげるような男じゃないしな。そんなの男じゃねぇ。ただのへたれ。いや屑だ」 「そ、そうだね……」 「よし、それじゃ明日に期待するな」 「う、うん。でもさ、ほら、封じられた妖怪を、わざわざ出すことも……」 「あ、ちなみに今までの全部嘘だから」 「嘘かよッ! ていうか変な嘘つくなよ! この馬鹿! 馬鹿岡崎! 略して馬鹿崎!」 「……あ、杏ー。春原があんな暴力が服着て歩いてるような女はいつか傷害罪で捕まるって言ってたぞ」 「へへん、どうせ杏なんていないんだろ! 僕を騙そうたってもう――――」 「そう、なら被害者になってみる? 陽平?」 「はいデッドエンドーーーーー!!」 ――――――――うわぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッーーーーーーー。 「た、た、た、たす、たすけ……!」 「太助・ザ・庵福亭?」 「どこの落語家っすか! ってヒィィィィイィィッ! う、腕がぁ! 足がぁ!」 「おーい杏、俺が言うのもアレだけど、頭は勘弁しろいてやれよー、元々悪いんだから、これ以上悪くなったら……ほろり」 「分かってるわ! 大丈夫こいつ不死身だし!」 「何で泣いてるんすか! それより助けて……イギャァァァァァァ!」 「おお、壮絶な断末魔だな。そして何が大丈夫かの説明はなしか」 「痛いよー、痛いよー……腕がぁ、足がぁ、腰がぁ、首がぁ……」 「……腰? つーか、首?」 「……朋也、後始末、頼んだ!」 「あ、おいこら杏、逃げんな! ……ったく、しょうがねぇな。よし春原、燃えてみるか?」 「何でだよ!?」 「いや、いっそのことHP0になればゾンビの如く復活するんじゃないかと。ほら、お前灰から復活するだろ?」 「復活したことあるみたいに言わないでくれますかねぇ! 死ぬからさそれ!」 「それはそれでいいだろ。この苦しみからの卒業〜」 「変な替え歌作らないでくれますかね!? 大体古いよそれ!」 「あぁ? お前のボンバイエだかボインボインだか春原へたれ伝説なんかよりはよっぽど良いセンスしてんだろうが」 「ボンバヘッを馬鹿にするなぁ! 大体最後の何だよ!」 「作詞作曲春原陽平。プロデュース春原陽平。音響、レコーディング、その他諸々春原陽平。聞くか?」 「聞くか! っていたたたた……い、今ので首がさらに摩訶不思議な方向に……」 「すごいな春原頑張れ春原。リアルワールドに出現したエクソシストに出てくる化け物になるぞ。手始めにブリッジだ」 「しませんよ!」 なんだ、つまらん。 結局春原は保健室に行き、手遅れということで外科医に通うことになった。 さすが人間凶器藤林杏。冗談でなく、女のくせに素手で骨を折るとは。 ちなみに全治二ヶ月のはずが、その次の日から春原は元気に登校してきたせいで杏も処罰はなかったらしい。 ――――やっぱり灰からでも復活するんじゃないのか? お前。 あとがき オチがないという話。
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