この話は【Ever17 -the out of infinity-】のネタバレを含んでいます。
まだゲーム未プレイの人は読まないで下さい。
もし「Ever17どうせやるつもりないからネタバレ関係ない」という人がいても遠慮願います。
おそらく文中で意味不明な話が出て来ると思うので、読むだけ無駄かと。
「一次創作を普段読むから大丈夫」という人も、おそらく無駄かと。
細部の事情を省いてあるので、一次創作より読者を置いていく内容だと思います。
つまり、具体的な設定を書いてません。
これはEver17プレイ済みの人にのみ、読むことを薦めます。
………いや、胸を張って薦めるほどの出来ではないですけど。
では、下へスクロールして下さい。
それは突然のことだった。
夏の暑さも終わりを告げて、秋の涼しさが身に堪える季節。木々に実る葉々の色合いも変わりつつある衣替えの季節。
あの忘れ難い事故からもうじき五ヶ月が経とうとしていた。
時が過ぎるのは当たり前のようだけど、それを当たり前と思えることが生きてるって証なんだろうな。
たぶん俺にとっての生は“あの日”目覚めた瞬間から再発≠オたんだ。
愛する妻と二人の愛娘・愛息子と供に歩みだしたのは幸せな人生という旅路。
一度生を失った果てに見つけた第二の生を、俺は捨てない。
護りたい者がいる限り、幸せな笑い声がある限り、俺は精一杯生き続ける。
「ちょっと待て。もう一回言ってくれ――――沙羅」
沙羅。倉成沙羅。
俺・倉成武の大事な愛娘である沙羅にそう聞き返す。
何かの間違いであることを確認するために。
どうかさっき聞いたのは間違いであって欲しいという願いを込めて。
……というか、頼むから嘘であってくれ。
だが、そんな懇願するような様子を知ってか知らずか、目の前の娘から聞こえたのはさっきと全く違わない言葉だった。
「今度さ授業参観があるんだけどパパ宜しくね」
授業参観? 今授業参観って言ったのか? 沙羅って女子高生だよな? 今時って高校生でも授業参観があるのか?
俺が高校通ってたときはなかったぞ。
しかも、沙羅が通っているのは女子高だ。
その年頃の女ってのは何故に妙にハイテンションだし、はっきり言って騒がれるのが目に見えてる。
というか、沙羅との関係で冷やかされるのがオチだ。
……………つまり……これは…………あれか。
「………えーと…………………新手のギャグ、か? 最近の女子高生の笑いのセンスはわからんな」
「んもーっ、何言ってるのよ。これは大マジでござるよ、パパ♪」
「アホかー! 高校で授業参観なんてあるわけないだろ」
「やだなーパパったら。ボケるにはまだ早いよ」
…………いや、俺も大マジで言ってるんだけどよ、沙羅。
普通授業参観って小学校中学校くらいまでじゃないのか…?
それとも、俺が眠ってる間に世間一般常識が変わったのか…?
沙羅は不敵に「ふふっ」なんてニヤけてるし。あれは何か良くないことを企んでいる表情だ。
そう、まるで小悪魔的で確信的で悪巧み的な微笑み。
………あぁ、沙羅の将来が物凄い心配だ。どこぞの暴力悪女みたいにならなければいいが。
「んー、パパの時代はどうだったかは知らないけど、
鳩鳴館
わたし
の学校は授業参観があるんだよ。
ほら、保護者宛の書類だってあるんだから」
だから「はい」って言って勝手に渡すなっての。や、確かに俺は沙羅の保護者だけどさ。
……って、ツッコむべきところが違うか。
俺はまだ引き受けた憶えもないし、当日の予定も確かめないといかんのに。
とりあえず読んでみるか。
「えーと何々。………………あぁ、確かに授業参観って書いてあるな」
「だから言ってるじゃない」
「――――って、参観日明日かよ!?」
「そう。で、パパは確か明日仕事休みだよね?」
………ぐ、既に見破られてたか。
判っていて訊くなんて、どこまで用意周到なんだ、愛する娘よ。父さんは涙が零れ落ちそうだ。
娘の成長した姿を見れるのは嬉しいが、少し歪んだ成長を遂げていると思う。
成長するならもっと胸に重点を置いて成長して欲しいものだ。
まだ発展途上だと文句をぶーたれるのは別に構わんが、一向に効果が現れないのはどうしてだ?
とてもじゃないが母親・つぐみの遺伝子を受け継いでるとは思えないぞ。
…………っと、話が反れたか。
んー、時間帯が昼ということもあって、つぐみに頼むわけにもいかんし、やっぱ俺が行くしかないのか。
……まぁ、夜に授業参観があるわけがないから当たり前と言えば当たり前なんだが。
はぁ………仕方ない、ここは腹を括るしかないのか。
「この時間に沙羅の教室に行けばいいんだな?」
途端、沙羅の表情が急変する。
まるで、目の前にした豪華賞品を苦労の末獲得したような、そんな滅多に見られない嬉しそうな顔。
――――やべ、この顔すげー可愛いかも。
って、何自分の娘に動揺してんだか俺は。アホらし。
「……パパ…?」
「ま、愛する娘の願いだ」
これ以上は言わない。賢い沙羅なら理解出来るだろうし、それでいいじゃないか。
嬉しさの余り抱きついてくる娘の頭に手を当て、ポンポンと軽く撫でるように小さく叩く。
それが更に嬉しかったのか、沙羅は腕を俺の腰まで回してぎゅっと抱きつく。
………小動物みたいな奴だな。
明日の気苦労を考えると少し憂鬱になるが、この嬉しそうな顔を見れたから良しとするか。
………………………明日は面倒なことにならなきゃいいが。
Ever17 -the out of infinity- SS
八日目の幸福謳歌
作者 琉海
翌日。
授業参観の予定時刻に間に合うように家を出て、しっかりと施錠する。
つぐみは普段の格好じゃ昼間外に出れないから部屋にでもいるのだろう。
ましてや、昼過ぎの最も直射日光が強い今なんて絶対にそうに違いない。
「しかし、沙羅の奴用意周到にも程があるぞ。こんなモノ、どうやって手に入れたんだ」
着慣れない自分の格好を透明なガラス越しに見る。
そこに映っていたのは、普段の俺を知る人には到底予想もつかないような、どこぞの小説家が普段着にしてそうな男性用着物を羽織っている姿。
そう、明らかに他人の誰かだ。少なくとも俺はこんな格好はしない。
………………って、現実逃避はこれくらいにするか。折角沙羅がくれたプレゼントなんだからな。
忘れろ。忘れるんだ。ご丁寧にも枕元にコレを置いて学校に行った沙羅のことなんて忘れろ。プレゼントされたことだけを覚えておくんだ。
……でもな、下駄までは勘弁して欲しかったぞ、沙羅。歩く度に音がするのはかなり目立つ。
これはあれか、俺に羞恥プレイさせたがったということか。
まぁ、その辺は帰ってからじっくりと尋問してやるか。
……………。
…………。
………。
「っと、ココが鳩鳴館女子高等学校、か。………にしても、やっぱデカいな」
五階建ての校舎って相当珍しいよな。
何でも三年前にとある物好きが学校ごと買収したって話だが、このバカ高い建物もその物好きの影響だろう。
何せ五階を丸ごと理事長室にしてしまったって沙羅が言ってたし。
………というか、この場合、理事長室じゃなくて理事長階になるのか?
とりあえず、校門にずっと立ち止まっているのは明らかに不審者っぽいから中に入るか。
周りには明らかに年齢が違うが、俺と同じ目的の人たちがいることだし着いていけばいいだろ。
生徒玄関から少し離れたところに教職員・来賓用玄関はあった。
同じ目的で来た三、四十台の人たちに横目・伏し目がちに見られたが、そりゃそうだろう。
生徒というよりは少し離れていて、父親というよりは明らかに若いこの外見。
そんな男が普通この玄関を使用しないし、何よりこの場違いの格好。
………………沙羅、俺は今物凄く後悔しているぞ。
などと、愚痴っても今更帰るわけにいはいかないし、結局流れに身を任せるしかない。
その足で俺は沙羅の授業が行われてる三階の教室に向かった。
「…………ったく、こんなデカい建物なら見取り図くらい階段の横に置いとけよな」
目的の階に着いたはいいが、一つの階に教室が二十以上あるから沙羅の教室がどこにあるか分かり難い。
尤も、LeMUの内部なら見取り図がなくても何がどこにあるか完全に頭の中に入ってるけどな。
って、今はそんなことじゃなくて、沙羅の教室を探さないとな。
結局一つずつ調べて行って、その場所に漸く辿り着いた頃には既に授業が始まっていた。
教室に繋がる二つの扉。
それは今も昔と変わらず、教室の前と後ろに一つずつあった。
勿論前の扉から入る人なんていない。
俺はそーっと後ろの扉を開けて、他の生徒の親たちを掻き分けて音を立てずに教室に入っていく。
何か遅刻をした生徒がこっそりと教室に入る様子が思い浮かんだ。
扉から離れ、他に遅れて入ってくる人の邪魔にならないように移動する。
……で、沙羅はどこにいるのか――――って、もう気付いてるよ、アイツ。後ろ向いて手なんて振ってる場合じゃないだろ。
まぁ、沙羅の事情からは授業参観なんて初めてのことだろうし、別にいいか。
笑ってるところを見ると、喜んでくれてるらしいしな。とりあえず、笑顔で沙羅に応えてやる。
「ねぇ、アレって倉成さんの知り合い?」
沙羅の隣に座ってる生徒が小声で話しかけている。アレっていうのは勿論俺のことだよな?
まぁ、どこを向いてるのか見れば、そこには俺以外に誰もいないので一発で分かる。
「やけに若いけど倉成さん家って再婚したの?」
「そうですよね。頼りになるお兄さんって感じがします」
「あっ、もしかして沙羅っちがいつも言っとるホクトさんってあの人なん?」
「こっち見られてるよ? もしかして気付いてる?」
いや、沙羅の席が比較的後ろにある所為か、聞きたくなくても次々と掛けられる声が丸聞こえなんだけどな。
やっぱり俺のことで色々と話が進むのか。
予想はしてた以上に恥ずかしいが、つぐみまで一緒に来てたらもっと凄いことになってたよな。なら、まだましか。
にしても、こうして見てると沙羅って結構人気者のようだな。色々な人たちから話し掛けられてるし。
まぁ、根があんな性格だと自然と周りに人が集まるのは当たり前か。
でもな、お前ら授業聞けよ……。
「………実はね、アレ、私のパパなんだー」
そんな嬉しそうに『パパなんだー』って語尾を伸ばして言うな、恥ずかしいだろ。でも、少し嬉しいが…。
にしても、本当にだらしなくニヤけた顔をしてるな、沙羅の奴は。
「えぇーーっ!?」「うっそでしょ…?」「信じられません……」「別の意味のパパと違うん?」
はい、予想通りの反応ありがとうね。というか、そう思うのが普通だよな。
でもな、最後言った子の発言は少し傷ついたぞ。俺がそう言うことをする男に見えたってことか…?
「……パパ。それ着て来てくれたんだね」
小声で俺に喋り掛けて服装のことを訊いて来る沙羅。
いくら勉強が出来るからってこれはマズいな。
他の生徒も俺たちのことを不思議がってか、それとも興味あってか、じっと見ている。
…………体裁もあるし、これは少しばかり父親らしいところを見せたほうがいいか。
「おい、沙羅。ちゃんと先生の話聞いてないと駄目だろ」
「分かってるって、パパ。………うん。やっぱパパには和風の格好が似合ってるでござるな、ニンニン♪」
じろじろと値踏みするように見定めてから言う台詞がそれかよ。
まぁ、似合ってないって言われるよりましだけどさ。
……いや、だからな、沙羅――――
……………こら、ニヤけないで前を――――
……………………もう夕食の話なんて早すぎるぞ、まだ――――
……………………………そんなことまで友達に言う必要ないだろ、ちょっ、待て、沙羅――――
と、こんな感じで全く授業風景になってない沙羅の授業参観は進んでいった。
担当の先生、すいません。
「はぁ………。授業参観がこんなに疲れるもんだとは……」
ガラガラ―――。
……思わなかった―――が、突然教室の前の扉が音を立てて開いた。
半分以上も時間が過ぎてるのに今から来る人がいるなんてな。
しかも、後ろじゃなくて前の扉を開けるなんて、一体どんな人なんだ――――って!!
「え―――?」
何人もの生徒の驚いた声が重なった。いや、先生の声も入ってたか。
そこから挙動不審に入ってきたのは、誰しも言葉に詰まるような授業参観には異質過ぎる物体。
巨大タヌキのぬいぐるみ――――にしか見えないナニカ。本物のタヌキのわけがない。でも、タヌキにしか見えないナニカ。
……なん、で……? …………おい…………あれって………アレだよな。
「………ぱ、パパ…? あれって……」
「あぁ、………やっぱそうだよな」
一つ返事で頷いて肯定の言葉を返す。
訊いて来た沙羅の考えと俺の考えが一致してると判断したのは、その表情を見れば一目で分かることだ。
直ぐに状況を把握できないけど、それ以外に考えられない。
その巨大なぬいぐるみは、俺と沙羅にとって非常に親しい被り物。
――――――みゅみゅ〜ん。
その愛称で呼んでいる、一見タヌキに見える物体の正体は、レミュール(キツネザル)。
そして、それを被ってる人物とは俺の知る限り一人しか思い浮かばない。それは―――
「――――ママっ!?」
「――――沙羅っ!!」
俺の愛する嫁さんであり、沙羅の母親でもある、倉成つぐみ。
沙羅の姿を見つけたみゅみゅ〜ん――――を被ったつぐみは漸く被り物を脱ぐ。
というか、頼むから目立つような行動はしないでくれ、つぐみ。
日光に当たりたくないからそれを着てくるのは分かるが、何で前の扉から入ってくるんだよ。
ほら、生徒たちだって突然のことと、つぐみの外見を見てざわついてるし。
「ちょっと、倉成さんの両親って若すぎない?」「どう見てもお兄さんとお姉さんにしか見えませんよね」「私、あんな感じのお兄さん欲しいなぁ」「人妻の魅力………恐るべし」「………カッコいいです……ポッ」「やっぱり、人生若さだけじゃ勝ち残れないのね」「沙羅さん、お父さんをください」…………etc
あーぁ、やっぱこうなったか。で、しかもつぐみはそのまま歩いて俺の隣に来るし。
どう見ても、俺たちは沙羅の授業参観に来た兄姉≠ノしか見えない。
まだ教室内はざわついていて、担任の先生はまだ新任なのか事態を良く分かってないらしく、どうしたらいいかうろたえてる。いいじゃん、可愛らしくて――――じゃない。
「つぐみ、お前沙羅の授業参観のこと知ってたのか?」
「それはこっちの台詞よ、武。あなたこそどうやって? というか、その格好は何?」
俺は昨日のことをつぐみに話した。
明日が仕事休みだということを事前に知った上で、沙羅は授業参観に来てくれって言ったこと。
枕元に置かれた沙羅からのバツゲームかと思わせるプレゼントのこと。
「………そう。確かに昼間のこういう行事は私には言えないわよね」
「あぁ。……ん? ってことは、つぐみはどうやって知ったんだ?」
「私はついさっき沙羅の部屋を掃除していて、ゴミ箱に入ってたコレを見たのよ」
そう言って、ポケットから出したのは授業参観の紙だった。何故それが沙羅の部屋のゴミ箱に入ってるんだ?
沙羅から受け取った紙は俺が預かっているはず…………………って、もしかして―――。
「…………沙羅の奴、俺たちを謀ったな」
「どういうことよ?」
俺に授業参観の紙を見せて俺に来させ、事前にコピーしておいたもう一枚の紙を態と自分の部屋のゴミ箱に捨てておく。
それにつぐみが気付いて授業参観に来ることも分かってたんだ。
つまり、俺たち二人がこの場に来ることは沙羅の予定通りだったってわけだ。
現に、今の沙羅の顔は物凄く幸せそうに笑っているんだからな。
「…………なるほど。……でも、沙羅は今まで家族を知らなかったんだからいいじゃない」
沙羅を見ながらつぐみは微笑む。
そうだよな。家族を知らなかったのは沙羅だけじゃないよな。お前もなんだよな、つぐみ。
俺がいなかった所為でお前には随分辛い思いをさせちまった。
今までの時間を取り戻すためにも、これから先何年もずっと一緒にいようぜ。
「辛かったよな、つぐみ」
「………武」
「でも、大丈夫だ。これからはずっと俺が一緒にいるから」
つぐみの肩に手を掛け、少し乱暴にこっちに手繰り寄せる。肩と肩が触れ合い、頭と頭が触れ合う。
一瞬驚いたつぐみだが、俺の思ってたことを理解したのか、ふっと微笑んでから手を握ってくる。
「………んんっ!」
担任の先生のそんな咽喉を鳴らしたような声で我に帰った俺とつぐみ。
見れば沙羅だけじゃなく、生徒全員と保護者たちの視線が俺たちに集中していた。
これは……………マズい……。
体中の血液が沸騰しているかのように熱いし、額からは何かいやーーな汗が、ほら……。
「うわぁ……パパって大胆………」
つぐみなんか完全に赤面させて俯いてる。こういう仕草って意外とツボにはまり、可愛く思える。
かくいう俺も恥ずかしさでここから逃げ出したい気持ちで一杯なんだが。
ざわざわと、沙羅を中心にして生徒だけでなく保護者たちが授業そっちのけで色々俺たちのことを話し始める。
先生まで激を飛ばすことなく会話に参加してるこの状況を一体どうしたら―――
ガラガラ―――。
「――――申し訳ありません、もう少し静かに授業を―――」
おそらく隣の教室で授業をしていた先生からだろう、もう少し静かに授業をしてくれとの抗議が来た。
でも、その先生は俺とつぐみが良く知ってる人物だった。
「「空……っ!?」」
俺とつぐみの声が重なる。
何で彼女がいるのか、不思議でならなかった。
――――――空。本名、茜ヶ崎空。
俺たちにとって忘れることの出来ない仲間であり、かけがえのない大事な人≠セ。
相変わらず凛としていて綺麗なその容姿に、少し惚けてしまう。
「倉成さんっ!? 小ま―――つぐみさんもっ!?」
空も俺たちに驚いている。
それにしても昔の癖が抜けてないのか、一瞬つぐみの旧姓を言うところだったな、空。
そういうところはもう完璧に人間だな。
でも、LeMUで見ていたあの格好じゃない、スーツ姿の空は凄い新鮮な感じがするな。
何よりその少し短めのタイトスカートが、より美脚を露にしていてカッコいい。
「――――逢いたかったです、倉成さん」
俺もだ、なんて言おうとしたけど空はそれを許さなかったのか、思い切り抱きついてきた。
少し涙ぐんだ彼女は何だか少し子供のような感じがして、ちょっとならいいかと思った俺は空の背中に手を回して、その存在を確かめるように抱きしめ返す。
空は俺の胸に顔を埋めるように更に抱きついてくる。
だが、その判断がとんでもないことだと気付いたのはそれから十秒ほど経ってからだった。
「………パパ……パパ」
「沙羅、どうした?」
何も言わずに目線も合わせずに、指先だけある方向を指す沙羅。
気になった俺はその先を見て、驚いた。いや、というより有り得ないほどの恐怖を感じた。
というのも、そこにいたのは今まで見たことないほど怒り心頭という状態のつぐみという名を被った鬼の如き修羅が腕を組んでこっちを睨んでいたから。
これって、やっぱり空とこうしてるのが原因だよな。つぐみは嫉妬深いから、たぶんその所為だろう。
いい加減離れないと、俺の命が危ない。
「……………そ、空? そろそろ離れてもいいだろ?」
「いいえ………。もう少し……もう少しだけ、このままでいさせて下さい」
マズイ。このままじゃ確実にマズい。
感じる。心臓が危険だと言っている。
「ねぇ、倉成さん。お父さんって二股掛けてるの?」「茜ヶ崎先生のあんな女らしいところ初めて見たかも」「うわっ、修羅場現場を生で見れるなんて感激ー」「……沙羅っちって、実は複雑な家庭事情があったんやな」
……………心が、物凄く痛い。
何て勘違いをしているんだよ、ここの生徒たちは……。俺はつぐみ一筋だ!!
というか、沙羅、お前は何故弁解しない?
そんな親不孝な娘を持った憶えはないぞ、お父さんは。
頼むから弁解してくれよ、このままじゃ肯定してるのと同じじゃないか。
「――――空。人の旦那に手を出すなんていい度胸じゃない」
ひいぃぃ。つぐみの声がいつになく低く、こえぇぇ。
目も据わってるし、完全にブチ切れモードだよ。
「あら、
良妻賢母
・・・・
のつぐみさんは
こーんなこと
・・・・・・
で嫉妬するんですか?」
不敵に微笑みながら含みのある言葉を返すなよ、空。
つぐみに見せ付けるように抱きしめてるそれは完全に煽ってるだけだって、絶対気付いてるだろ。
「それに、倉成さんの“アレ”もさり気なく自己主張してますし、最近尽くしてないのではないのですか?」
「なっ―――!?」
「あら、その顔は図星のようですね――――小町さん」
態と一呼吸分溜めて言った空の言葉には隠そうとしない嫌味が込められていた。
つぐみと呼ぶわけでもない、旧姓でつぐみの名を呼んだ空は胸を押し付けてくる。………あ、思ってたより大きい。
………………でも、空ってこんな性格だったか?
「ふん、人になってまだ半年に満たない小娘にアッチのことで文句を言われる筋合いはないわ」
「あら、昔から田中先生に色々と知識は与えられていたので、時間は関係ありませんよ」
「なんだ、意外というか当たり前というか、所詮知識だけの耳年増なのね、空。
処女膜すら破られてない生娘が私たちの問題に口を出す話じゃないわよ」
「生娘のほうがイイこともあるんですよ、小町さん。倉成さんは私を開発したいとは思いませんか?」
「ちょ、ちょっと待て……。二人とも落ち着こう。な?」
「武は少し黙っててッ!!」「倉成さんは少し黙っててくださいッ!!」
一触即発。
前門の虎後門の狼。いや、修羅が二人ここには存在していた。
空なんて俺に尋ねておいて黙ってて、って。
この二人ってこんなに仲が悪かったか?
そりゃLeMUでIBFのことを問い詰めてたつぐみと空は仲が悪そうに見えた――――っていうか、あれはマジで喧嘩っぽかったけど、今回は全然比べ物にならないほど違う。
形相がまさに鬼そのものだ。
「それに倉成さんは私の恋愛の先生なんです。ほんとーーーに色々教えて貰いました」
うわ、また昔のことを持ち出してくるなよ、空。というか、物凄く意味深な発言だな、それ。
あー、頼むから誰かこの場をどうにかしてくれー。沙羅や生徒たち、先生、保護者たちは知らん顔してるし。
ドタドタ……パタパタ―――。
何かの音が廊下に響いている。それも、その音は段々と大きくなってきている。
それは、近づいてきているということか。
「ふん、教えて貰っただけで恋愛が出来るのなら世界は成功者で溢れてるわよ。
口で言うほど、恋愛ってそんなに甘いものじゃないの」
「小町さんもそれほど経験しているわけではないのでしょう?
それに生憎と私は今でも恋愛中ですので私たちにそれほど差はありません」
二人の修羅以外の皆は、廊下に響き渡る音に耳を傾けている。
ガラガラ―――ッ!
後ろの扉が勢いよく開いて、ピシャと叩きつけるように閉まる。
よほど走ってきたのか、はぁはぁと息切れをして教室に飛び込んできたのは一人の女。
いや、まだ幼さが残っている少女のような背格好の女。
「ふーっ、…………全く、しつこいんだからぁ」
………そ、その声は、もしかして―――。
つぐみ、空、沙羅を見ると三人とも同じような顔をしていた。
「「「「――――ココ(ちゃん)っ!?」」」」
「ふぇ? あれ…?」
如何にも不思議です、って顔で俺たちを見る赤………いや、ピンク髪の少女。
…………どう見ても、いや、見間違えることなんてあるはずがない彼女は、間違いなく俺たちの知ってる彼女だった。
――――――ココ。本名、八神ココ。
どう見ても、相変わらず小学生にしか見えないその背格好。そして、歳相応に見られない喋り方。
間違えようがなく、俺たちのよく知ってるココそのものだ。
「あー!! たけぴょん、久しぶり〜」
「だな。いつ振りだ…?」
「……………う〜んとね、たぶん本州に帰る船以来だからぁ」
「五ヶ月振りね、ココ」
「あっ!! つぐみんも、久しぶり〜」
ココの言葉に合わせるように、つぐみが言う。
さっきまで空と言い争ってた怖い顔とは違い、つぐみは優しそうな顔つきでココと向き合う。
娘や息子と話している感じの、いつものつぐみの表情だ。
沙羅も、ココと「五ヶ月振りだね」とはしゃいでる。
どう見ても沙羅のほうが年上に見えるけど、実際はココのほうが年上なんだよな。
ココは沙羅にこの状況を訊いて、つぐみはまた俺と空に向き合う。
久々に会う“仲間”にしばし場所を忘れて話し合う皆だが、空は未だ俺を離してくれない。
「ねぇ、空。そろそろ人の旦那から離れてくれない?」
「そうですねぇ、どうしましょうか? 倉成さん?」
だ・か・ら………分かっていてそこで俺に振るな空。思いっきり確信犯だろ。
どうしても、空の人格があの頃と別人のような気がしてしまう。
あのときの偽空と言うわけじゃないが、俺たちの良く知ってる空じゃないような気がする。
そう。例えるなら、より人間らしく成長を遂げた空。
「ありがと、マヨちゃん。なぁ〜んだ、そういうことか」
「いやいや、拙者に出来ることはこれくらいのことでござるし、ニンニン♪」
「でも、たけぴょんってやっぱりはーれむきんぐ=H」
やっぱりって何だよ、やっぱりって。意外にと言え、意外に、と。
―――と、そうじゃない。何だよ“はーれむきんぐ”って……。
どことなくイントネーションが違うその言葉は、実は全く理解してない証拠なのか。
……………ココの目には、俺はハーレムキングに見えるのか…?
「だって、ココにも告白してたし」
「―――――――――ぇ?」
「こーんな“いたいけな少女”を口説くたけぴょんはロリコンさんなのです」
沙羅、つぐみ、空、は随分と呆けたような顔でそう声に出した。
意識して口をついたのではなく、ポロッと零れ落ちたような様子。
………にしても、ココまでそんな昔のことを………いやいや、あれは告白じゃない。
俺は無実だ!!
「ココよ、それはコメッチョにしては全っっ然おもしろくないぞ」
「あれ? もしかして忘れちゃったの、たけぴょん? ココのこと気になる存在って言ってたよ」
「た〜け〜し〜」「く〜ら〜な〜り〜さ〜ん〜」「パ〜パ〜」
…………何だ、この軽蔑の塊のような視線は。塊だというのに何故か槍で刺しているように痛いぞ。
ちょ、ちょっと待て…!
まさか、お前たちココの言うことを信じてるのかっ…!?
自分の旦那を信頼してないのかつぐみ。
先生の言うことが信用出来ないのか空。
父親に対する敬信はどこにいった沙羅。
「そのときのこと思い出したら、ココ恥ずかしーよぉ」
マテ、その意味深でわけありな感じの言葉は一体何だ。何もなかっただろうに。
というか、俺は年下対象外だ。アウトオブ眼中。
………………むっ、これって死語か。
「あのなぁ……。お前たち誤解しているようだから言っとくけど、別に俺とココは何も―――」
「浮気者」
「なっ―――」
「節操なし」
「ちょ―――」
「ロリコン」
「おぃ―――」
酷い言われようだった。
俺の言葉には耳も傾けないと言った感じで、三人から言いたい放題言葉の嵐を受けた。
文句を言おうとしても、ココはいつの間にかピピと器用にボクシングのスパーをしてやがるし。
そのグローブはどこから出した?
いや、それ以前に後ろ足だけで立って前足にブローブを填めてパンチを打つピピは一体何者だ?
いくら本物の犬じゃないからって、そんなことが可能なのか?
――――って、今はそうじゃない。
今はこの誤解をココに解かせないと、俺の立場が物凄くヤバい方向に進んでしまう。
「おい、ココ」
「あっ……! ココ急いでるんだった。それじゃあ皆またね〜」
「ちょい待て」
横を通り過ぎるココの首根っこを捕まえる。
事態をこのまま放置して行かせるかってんだ。何としても誤解を解いてもらわないとな。
にしても、確かに本人の言うとおり、ココはどこかから逃げてきたような感じだったな。
………一体何から逃げてきたんだ?
「たけぴょん、離してよ〜。早く行かないと見つかっちゃ―――」
「へぇ、誰に見つかったらヤバいのか私に教えてくれないかしら? ねぇ………ココ?」
扉が開いた音なんて聞こえなかった。
なのにそいつ≠ヘずっと前からいたように、俺たちの横に両腕を組んで立っていた。
微かに怒りを含んだ表情は相変わらずのようで、少し懐かしい感じがする。
「――――なっきゅ!?」
あぁ、そうだ。耳にすると納得するけどそれまでは全然思わなかったな。
そういえば、お前の呼び方って、『なっきゅ』だったよな。
約半年………五ヶ月聴いてなかっただけだけど、随分懐かしい気がする。
感慨に浸っていた所為か、俺の手が緩んでいることに気付いたココは勢いよく引っ張り、手から離れて逃げ去る。
「…………優」
「…………倉成」
久しぶりに会う仲間は最後に会ったときと何ら変わってない、記憶通りの優だった。
目や口、鼻も全然変わってない。髪は伸びてるけど揃えてある。
会ってなかった期間が五ヶ月じゃない気がする。もっと長いようでもっと短いような。
それくらい久々に優の顔を見るということもあるが、つい最近までずっと毎日見ていたような違和感。
それはきっとあの七日間の出来事があまりにも濃すぎる内容だったからだろう。
だから、時間の経過を確かめるわけじゃないが、自然と出し合った手同士で優と握手を交わした。
――――――優。本名、田中優美清春香奈。
過去に犯した罪を背負って生きている優はこの長い時間苦しんだのだろう。
つぐみとはまた違った苦労をずっと過ごしてきたのだろう。
「…………優、何でここにいるの?」
つぐみの言うことは尤もだった。
何故沙羅の学校に優がいるのか謎だった。いや、ココもだけどさ。
そういえば、優はココを追って来たらしいけど、この二人って何で学校の校舎内にいるんだ?
でも、優はここで滅茶苦茶デカい爆弾を投下しやがった。
「――――あら、理事長が自分の学校にいるのは当然じゃない」
さも当たり前のことであるように、軽く言ってのけた。何か問題でもあるの、とでも言いたげな表情で。
………えーと、これは……つまり…………何だ?
「はァ!? 一体どういうことよ優。私はそんなこと聞いてないわ」
「あれ、行ってなかったっけ? ……ん? でも、沙羅がいるのに何で知らないの?」
優は沙羅からもつぐみに伝わっていると思っていたらしい。
と言うことは何だ。沙羅は知っていたということか。
まぁ、そりゃ沙羅の学校が買収された話は本人から聞いたけど、誰にされたのかは興味なかったからな俺は。
沙羅だって別に文句一つ言ってなかったし。
………………ん? 文句一つ言ってなかった?
それって……………買収した人が優―――知り合いの母親―――だから安心だったってことじゃん。
「えっ、私はてっきり田中先生がママに言ってると思ったから」
「………………見事にお二人だけ取り残されていたわけですね」
「空。お前はいい加減に離れてくれ」
俺とつぐみだけ知らなかった事実。
でも待てよ、それだと優がこの場所にいるのは分かるとしても、ココまでいるのは何故だ?
「あー、ココはね今私んちで面倒見てるのよ。というか、五階が私んちなんだけど」
マテ。色々マテ。
激しく理解不能な領域になってきたぞ。何で優がココを預かってるんだ。確かココの両親は―――あっ!
そっか、そういうことじゃないんだな。
「倉成は分かったようね。何で私がココを預かっているか」
「武?」
「…………ココも俺と同じなんだ、つぐみ」
「………武と同じって?」
「つまりこう言うことよ。確かにココの両親は生きてるわ。でも、今のココが会いに行ってもいいのかしら?」
ストレートに言わない辺りが優らしい。
つぐみはふと考えるように手を顎に持ってくる。
「倉成が両親に会いに行ってないのは何故か分かるわよね、つぐみ?」
「それは長い間眠っていたか――――っ!?」
そう。そういうことなんだ。
俺と同じ時を掛けて眠っていたココは、成長期という期間を眠って過ごした。
事情を知っている父親は分かるかもしれないが、母親はどうだろう。ココの友人はどうだろう。
以前と同じように接してくれるのだろうか。
おそらく信じてくれない。
だから、優はココを引き取ったのだろう。
裏の世界にある程度知り合いがいる優なら可能なことだ。
「そう。分かったようね」
「あぁ。でも、何でココは逃げてたんだ?」
「今は田中先生がココちゃんに勉強を教えてあげる時間だからですよ」
納得した。
あの年頃は勉強が嫌に思う年頃だしな。
そして安堵した。
漸く空が俺の体から離れてくれたから。……勿論少し寂しくなったのは敢えて言うまい。俺は漢だ。
「確か、今日のこの時間は『人生論』だったと記憶していますが」
……………まだ幼い少女に何てことをココに教えようとしてるんだよ、優のアホは。
逃げたくなるココの気持ちも分からんではないぞ。
「優………アナタ……」
「うっ………そんな怖い顔で睨まないでよ、つぐみ。うーん、やっぱ『弾頭学術』のほうが良かったかな?」
……………やっぱアホだ、こいつ超アホだ。全っ然分かってねぇよ。
そういう問題じゃないってのに、全く気付いてない。
というか、優はココにどういう教育をしてきたのか凄い興味ある。いや、不安のほうが大きいか。
一体ココをどんな大人に育てたいのか、全く見えてこない。
人生論と弾道学術って、全く一般教養学問じゃないし。
というか、弾道学術なんてどこで活用するんだよ。
まぁ、んな難しいことをココに理解させることなんて不可能だし、全て無意味な授業になるだろうな。
「倉成、何か言いたげね」
じと目で睨んでくる優。
理解不能な思考はホント相変わらずだよ。
「……いんや、ただ優は変わってないな、って思ってただけだ」
「どういうことよ」
「ん、別に意味はねえよ。優らしいってことだ」
「私……らしい…?」
不思議そうに怪訝そうな顔をする優。
まぁ、こういうのは得てして本人には分からないもんか。
「…………優のそういうとこ、結構好きだぜ」
誰に対しても遠慮なくズバズバ言ってくるところ。
自分勝手な行動で他人を振り回すところ。
感情の起伏が激しくて我が強いところ。
………ホント見ていて飽きないし、羨ましいよ。
「えっ? えぇっ? ……………えぇぇええぇ!?
ちょ、ちょっと倉成っ!! アンタ、もしかして………えっ、そうなの? そういうことなの?」
「武……」
「倉成さん……」
「ん? 皆どうしたんだ?」
何故か凄く動揺してる優に、怒りと呆れ顔のつぐみと空。
見れば沙羅も深い溜息なんて吐いてるし、某国流のやれやれと言ったジェスチャーまでしてやがる。
「超絶無意識ハーレムキングパパ」
……何だそれは。
というか、文法無茶苦茶だぞ、沙羅。
ブチッ
一体何の音だ…?
まるで、何かがぶち破れたような……。
「武、私の前でよくそんなことが言えるわね」
「つ、つぐみ………?」
これから先は会話のみでお楽しみ下さい By 作者
「倉成ってばそう思ってたんならもっと早くに言ってくれれば」
「いえ、今の好きは恋愛感情の好きではないと思います」
「というか、アナタたち何を勝手なこと言ってるのよ。武は妻である私のものよ」
「残念ながら小町さん。世の中にいは略奪愛という素晴らしいものが―――」
「……空、それは犯罪だってば」
「ママ、私は応援するよ」
「そうです。毎日沙羅さんと顔を合わせているのは小町さんだけではありません。私にもアドバンテージがあります」
「ふっ、一気に本丸へは行かずに城門から落とそうと言うの、空? 残念ながら沙羅は母親に似て聡明なのよ」
「あら、別に沙羅を落とす必要なんてないわよ」
「どういうことですか、田中先生」
「私の娘がホクトとくっ付けば、倉成とは親戚になるから時間とチャンスはたっぷりあるわ」
「優、それは倫理的に問題があるんじゃないかしら?」
「そうですそうです」
「いや、略奪愛宣言した空とあまり変わらないと思うでござるが」
「第一、空のその感情は本当に恋愛感情なのかしら?」
「ちょっとつぐみ。そこまで言う?」
「それはプログラムされたものじゃないの?」
「大丈夫です。この気持ちは本物です。なぜなら、胸が火照るように熱くて下腹部が疼いてますから」
「………………表現が卑猥な気がするのは気の所為?」
「いや、私もそう思ったよ。空ってこんな性格だっけ、ママ?」
「この際、空のことは後回しにしといて。やっぱ私もつぐみと同じで娘がいるからさぁ」
「ちょっと田中先生。後回しってどういうことですか!?」
「娘がいるから、何なのよ?」
「ココまでいるからどうしても父親が欲しいんじゃないかと思うときがあるのよね」
「あー、そういえばココちゃんってパパに懐いてるところがあるよね」
「でしょでしょ。何だったらアナタもウチに来る?」
「何を勝手に他人の娘を誘拐しようとしてるのよ」
「私だって子供くらい産めます! そういう体になってますので」
「いや、空。そんなところで張り合ってどうするのよ。あの頃の知的な空はどこにいったんでござるか」
「皆がそこまで言うんだったら、たけぴょんに決めてもらえばいいんじゃない?」
「「「ココ(ちゃん)…!?」」」
「一体どこから」
「いつの間に」
「というか」
「
それだっ!!
」
「武ッ!」「倉成さんッ!」「倉成ッ!」「パパッ!」
皆が一斉に振り向く。
だが、当の倉成武は危険を察知したのか早々と逃げ出して既に教室から退散した後だった。
これからどうなったのか、それは誰にも分からない。
To Be Continued ?
あとがき
すいません、勢いに任せて随分好き勝手やりました。
というか、武の口調ってこんな風でしたっけ? 覚えてない(マテ
当初の大まかな予定としては、つぐみVS空VS優春の三つ巴のドタバタ授業参観モノだったんですが、
前半から沙羅が大きく出番を食うという可笑しな流れになってしまいました。
しかも、気が付いたらココまで乱入するという大惨事。
勢いだけで書くのは無謀ということが今回良く分かりました。
原作の面影と少し違和感があるような空は優春の影響と考えてください。
このあとがきを読んでいるということは勿論Ever17をコンプリートしたということですよね?
コンプリートしてないのに読んでいる人には悪いですが、というより遅いですが、ネタバレです。
ですが、最初に忠告はしました。私は責任を持ちません。
ちなみにこれはグランドエピローグ後の話です。
柊さんのEver17SS『約束』を越えるモノを書きたかったのですが、全然足りない。
実は何気に物凄く悔しかったりします。
ずっと武視点なのがいけなかったのだろうか。
所々につぐみ視点や空視点、優春視点を入れれば良かったかなと書き終えて後悔しています。
…………あー、マジで悔しいです。
最後に。書式をかなり変えてみました。
コメッチョコメッチョ(使いどころ違
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