可笑しな人。考えが読めない。見た目年齢不詳。大人のような子供。
 ………………一言で言うと謎。
 
 貴方の第一印象は、耳にした風の噂と全く同じものでした。
 自分勝手に描いた想像通りの、とても頼りがいのあるお兄さん≠ナした。
 ………少し意地悪ですけど。
 
 素の貴方がわからない。
 普段はお調子者で、子供のように無邪気に笑い。
 でも、誰よりも皆のことを考えて、護ってくれる。
 ………………本当の貴方は、一体どこにいるんですか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 満身創痍な体を引き摺り、血煙をその身に纏った貴方。
 悪魔のように真紅に濡れた紅い髪。
 死神のように握られた双手の黒鉄。
 
 それでも、外見に似合わず笑顔を浮かべていたのは覚えています。
 
 
 初めはただの興味からだったと思う。
 そんな貴方が最後まで付き合ってくれたのが、私には何より嬉しかった。
 私を救い出してくれたのは、その次に嬉しかった。
 
 
 流れる血と温かい笑顔。
 
 そこで私は救われました。
 
 生死の境を歩いていた私は、貴方の手が光芒の導きのように見えました。
 
 この人になら、私は着いて行ける。
 
 一生を懸けてでも、なんて決心しました。
 
 囚われのお姫様なんて役柄の私は、そんなことを考えていました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 私の初恋は、意外にも遅かったのです。
 
 
 
 


 

 

〜汝幸せを願う者〜

 

 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 永続的な電子音が聞こえる。
 煩いくらいの騒音に、聞かなかったと逃避したい気持ちが燻る。
 耳を瞑り、意識を元の深みに戻そうと試みる。
 何を見ていたか覚えてもいない夢の世界に、俺は再びダイブす――――
 
「おはようございます!」
 
 ………。
 ……………。
 …………………俺は再び安らぎの世界に――――
 
「おはようございます!」
 
 ……………。
 …………………。
 ………………………俺は――――
 
「おはようご、」
「何度も言わなくても、わぁってるよ!!」
 
 安眠を妨げた娘≠ノ向かって、吠える。
 怨恨の念でもあるのかと思うほど、その言葉は俺を不快にさせた。
 今日一日の目覚めは、溜息が出るくらい最悪。
 最早二度寝をする気力を失いかけた頭で、枕元の時計を見る。
 
「………げ、まだこんな時間じゃねぇか。何か用でもあるのか、瑞希?」
 
 瑞希、と娘≠フ名を呼ぶ。
 俺を起こしに来た、澄んだ茶色を包むように黄色のリボンで結んだ女。
 寝惚け眼の所為か、見間違える錯覚に陥りそうになる。
 ………………やっぱ親娘だな。
 
「用もなく起こしに来たっていうのなら、俺は怒るぞ」
 
 上体を起こし、瑞希と顔合わせになるようにベットに腰掛ける。
 傍に置いておいた一世代昔の煙草を手に取る。
 口に咥えたのはいいが、肝心の火が見当たらない。
 
「祐一さん、今日が何日か覚えてますか?」
 
 ベットの下。枕の下。胸ポケットの中。棚の上。
 どこを見ても、ない。
 
「………………んー、覚えてないな。今日って何日だっけ。
 それより、火が見当たらん。一緒に探してくれ」
「火なら私が持ってます」
「………あ?」
「ですから、私が持ってます」
「………まぁ、何でお前が持ってるかは別にして、火を貸してくれ」
「その前に、私の質問に答えてください。今日は何日ですか?」
 
 ふー、クイズなんてやってる場合じゃないんだけどな。
 とは、心の中で思ったがとても瑞希を前にして言えなかった。
 ………や、瑞希が何故か神妙な顔つきをしていたから、言えるわけがなかった。
 それはもう、ピリピリとした緊張感が俺にまで伝わってくるほどで…。
 
 あー………それより今日が何日か、だったな。
 んなもん携帯見りゃわかることだろ。
 ………………………えーと、今日は、
 
「三日。今日は九月三日です」
「………………ぇ?」
 
 何故、先に答えを言われる?
 俺は莫迦にされてるのか?
 
――――――この日付に覚えはありませんか?」
 
 文句を言おうとした直前、瑞希の口から出た言葉。
 刺々しく、何処か重く敵意のような思いが見える。
 俺を躊躇わせたのは、その真剣な表情と気迫。
 そこで納得した。
 瑞希は俺をおちょくってるわけじゃないことを。
 だから、俺もそれに応えよう≠ニした。
 その日付が何を指し示しているのか。
 
「特別な祝日でもなし、俺の誕生日でもなし、ましてや瑞希の誕生日でもない。
 ………ん? もしかして音夢の誕生日だっけか?」
「………………も、もしかして、思い出せないんですか…?」
「おう」
 
 自信満々にそう応えた。
 
「………………………祐一さんの」
「俺の…?」
 
 
「バカァァァ―――――ッ!!」
 
 
 あの小さい体のどこから出たのか。
 瑞希の初めて聞く悲鳴のような大声に戸惑う。
 というか、完全に家が振動したぞ。
 ………ま、襤褸屋だから仕方ない。
 
「こりゃ嫌われたかな」
 
 叫びながら部屋から出て行った瑞希を無視して、そう呟く。
 落としていったライターを拾い、咥え煙草に火をつける。
 
「ふー」
 
 チクリと胸が痛んだ。
 嫌われたことによる痛み、ではない。
 捨てたはずの罪悪感が、胸で騒いでるだけだ。
 ………ふ、俺はどうかしてる。
 自らが蒔いた種に文句をつける莫迦がどこにいる。
 これは自業自得の行いなのだから、罪悪感に悩ませること自体間違っている。
 今の俺に、そう思うこと自体愚かというもの。
 
「さて、少し早いが向かうか」
 
 軽く着替える。
 もう少し寝ているはずの予定が狂ったが、これも実は計算のうち。
 いつも以上にラフな格好と、藍色のジャケットを羽織る。
 予め入れておいた物≠ェジャケットの内ポケットにあることを確認する。
 ………よし、確かにある。
 居間を通って玄関を抜けるには、危険性が高い。
 瑞希の気配がまだ家にあることがわかっているだけに、居間は顔を合わせ易い。
 はー、面倒だが窓から出るか。
 
 窓に手を掛けて、飛び降りる準備をする。
 瞬間、瑞希に呼ばれたような気がした。
 だから、振り返り、部屋の戸を見る。
 正確にはそこを通して居間にいる瑞希を、だが。
 
「……………すまん、瑞希」
 
 謝った所為か、決意が固まる。
 その数瞬後、俺は窓を蹴って部屋から跳んだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 唯一つの墓前。
 風が楽しそうに、青々とした空を泳ぐ。
 潮の香りが海風によって絶えず押し寄せる。
 懐かしむ思いを逆撫でするように、鼻をつく匂いは俺を惑わせる。
 
 時間が逆行するような錯覚。
 長い間夢を見ていたような錯覚。
 
 そう惑わせる。
 この街は、全てが懐かしい。
 時間が記憶を流していくのか、懐かしく思う。
 忘れたくないほどいろいろあったこの街を…。
 俺は、少しずつ忘れつつある。
 
 楽しいこと。
 悲しいこと。
 怒ったこと。
 泣いたこと。
 
 ……………オマエと過ごしたあの夏の季節。
 
 俺は、少しずつ忘れつつある。
 オマエは俺を怒るだろうか。
 
 ………。
 ……………。
 …………………。
 
「よぅ、何か言ってくれよ」
 
 帰ってくるはずのない手紙。
 若かった頃、そんなタイトルの映画を見た。
 何故か、それを思い出した。
 
 
 
 
 戦場で亡くなった夫を今も忘れずに、その夫に手紙を出し続ける嫁。
 近況や想いを書き綴ったその手紙を、彼女はいつも書くだけ≠ナ終わる。
 投函することなく、ただ書くだけ。
 死地へ届ける手紙など、決してないのだから。
 それでも、彼女は書くのをやめなかった。
 ――――想いを忘れることができなかったから。
 ――――想いを留めることができなかったから。
 来る日も来る日も、彼女は日々の出来事を書き記した。
 必死に夫に伝えようとした。
 どれだけの年が経とうとも、彼女は書き続けた。
 五年、十年、二十年、五十年。
 しかし、それにもやがて終わりが訪れた。
 彼女は一生を終えたのだ。
 山のように書き綴った手紙と共に、彼女は永久の眠りについた。
 
 だが、話はまだ続いた。
 死んだはずの彼女は、描いていた想像通りの天国で目覚めた。
 閉じていた瞼を開いたら、そこに立っていたのだ。
 楽園のような賑わいの中、彼女は自分の姿に驚く。
 肌の艶、簡単に動く四肢、六十年は若返った姿。
 まさにそれは幸せ絶頂の時代。
 そして彼女は、目の前にいる人物に更に驚いた。
 優しく微笑んでいる人物は、若かりし頃の夫だったのだ。
 言葉を発することなく、二人は抱き合う。
 そして、彼は今までの手紙一つ一つについて返事をする。
 頷き、笑い、怒り、泣き。
 その表情はどれも、幸せに満ちている。
 そして、彼女はここで最後の筆を下ろす。
 
 ―――――――――私は今幸せです
 
 
 
 
 俺の言葉は、虚空へと吸い込まれていくだけに過ぎない。
 まるで、広がる空が本当に記憶を奪い去っていくよう。
 少しずつ忘れつつある俺の記憶。
 やっぱオマエは、
 
「こんな俺を酷く思うか?」
 
 半分自虐的に吐いた言葉。
 何よりも大切だったあの暑い季節。
 一生忘れることができないと思ってた幸せな季節。
 オマエとの思い出が、まるで全否定されたようで、悲しい。
 
――――ううん、そんなことないよ」
「ぇ…?」
「て言うやろな。あの子が生きとったら」
「………………晴子、さん…?」
「何や、鳩が豆鉄砲喰らったような顔して」
 
 全く気付かなかった。
 足音は聞こえず、真後ろに立っている気配すら感じなかった。
 情けない。戦場だったら即死じゃねぇか。
 
「ま、そんだけアンタが真剣にあの子と話しとったからやろ」
 
 完全に心を読まれてる。
 俺が何を思い、どう戸惑ったのか全て悟っているような話し方だ。
 
「今日はどないしたん? しかも、そないなカッコで」
「晴子さんこそ、スーツ姿が映えてますけど?
 ………………というか、その“切り出し”ってもう何度目でしたっけ」
 
 九月三日。
 何かの祝日でもなく、誰かの誕生日でもない、今日この日。
 ある一人の女性が短い生涯を終えた、特別な日だ。
 少なくとも、俺や目の前の女性、晴子さんにとって忘れることのできない日。
 
「そうやな………七度目くらい、か。それより………ウチが毎年スーツなんは、単純に喪服がないだけや。
 そういうアンタは毎年そのカッコやな。毎年思っとったけど………何や、理由でもあるんか?」
「えぇ、勿論理由はありますよ」
「ほぅ」
「このジャケットは、初めてアイツがプレゼントしてくれたものです」
「あの子がプレゼントねぇ。………………でも、その組み合わせはセンス悪ないか?」
「まぁ、これだけラフな格好にこのジャケットは合いませんね」
 
 でもアイツは、珍しく頑固に言い切ってたな。
 その格好にはこのジャケットが絶対似合います、って。
 ………………結局そのときの一回しか観鈴はこの格好は見れなかったけど。
 
 なぁ、空の上から見てるか?
 毎年コレ≠ナオマエに会いに来てるのはそういう意味もあるんだぞ。
 生きてた頃に見れなかった分、今充分堪能してくれよな。
 けど、オマエが選んだコーディネートなんだから、文句は言うなよ。
 
「でも、よう覚えとったな」
「ん? どういう意味ですか?」
「今同棲中なんやろ。それなんに、よう命日を忘れんかったな、て」
「………同棲じゃなくて同居ってことで妥協したんですけどね。
 それに、今日この日は瑞希がいてもいなくても忘れることはないですよ」
「………………あーあ、結局最後は惚気るんか。あの子も幸せもんやな」
 
 幸せ………。
 本当に幸せだったのか…?
 
 違う。
 俺たちは、まだまだこれからだったはずだ。
 一緒にやることがたくさんあったはずだ。
 
 ――――――他愛無いことにも笑うこと。
 ――――――和の成長を一緒に見ること。
 ――――――共有した時間を過ごすこと。
 
 全て俺一人じゃ意味のないことだ。
 俺とオマエがいて、初めて成り立つことなんだぞ。
 
「そういや………」
「………ん?」
「一昨日、その瑞希ちゃんて娘から電話あったわ」
「は…!?」
 
 瑞希が晴子さんに何の用があったんだ?
 いや、それよりも、俺は電話番号を教えた記憶はない。
 どこでその情報を……………って、今はそうじゃないだろ。
 
「瑞希、何て言ってました?」
「んーそれがな………」
 
 九月三日、娘さんの命日に私も祐一さんと一緒に行っても宜しいですか?、だと。
 ――――何を莫迦なこと。
 そう、それは莫迦なことだ。
 瑞希が俺について来て一体何の意味がある。
 事件に関係があったわけじゃなく、血が繋がった親戚でもなく、唯の他人。
 その瑞希に何の意味がある。
 全く無意味なことだ。
 
「やから、ウチはキチンと言ってやったわ」
 
 だろうな。
 全くの無関係者が来ても何を話すと言うのだ。
 
「………何か勘違いしとるみたいやな。そんなん御門違いや思わんか?
 何で祐一やなくて、ウチに訊くん?って」
――――は?」
「アンタと一緒に行くんはウチか? そうやない。祐一と行くんやろ?
 そやったら、訊ねる相手が間違ってへんか?って」
「ちょ、ちょって待って下さい! 本当にそんなこと言ったんですか?」
「ん? そやけど、何か問題あったんか?」
 
 いや、問題って………ありまくりでしょう。
 瑞希はアイツと何の関係もない普通の女だし。
 
――――――たくさん来てくれたほうがあの子も喜ぶんちゃうか?」
 
 衝撃が胸に響いた。
 言葉に秘められた槍で、心臓を抉るように貫かれたような痛み。
 痛みは俺の言葉を無理矢理詰まらせる。
 
 ―――――――――最低だ。
 
 言われて初めて俺自身の間違いに気付き、心の底から罵倒する。
 誤った思いをしていた俺を殺してやりたくなるほど、内心ムカついていた。
 俺は、最低野郎だ。
 瑞希のことばっか考えて、アイツのこと何も考えてなかった。
 そうだ。アイツはそういう奴だった。
 たくさん人が集まって話し掛けてくれたら、踊るくらい喜ぶのがアイツだ。
 ………いや、それは言いすぎか。
 でも、確かにアイツは誰が来るか、じゃなくたくさんの人に囲まれたいと思ってるだろう。
 俺は! 俺は……そんなこと、考えもしなかった。
 
「やから、てっきり瑞希ちゃんと二人で来るもんやと思てたわ」
「いや………それは…」
 
 考えないようにしていた。
 何となく気付いていた。
 
 何故今日に限って瑞希があれほど真剣に迫ってきたのか。
 何故今日の日付を瑞希があれほど真剣に訊いて来たのか。
 
 
 何故、起こしに来た瑞希の服装が黒で統一されていたのか………。
 
 
「気付いとってわからん振りするんはアンタの悪い癖や」
「………………」
「いや、頭では理解しとるんに無意識のうちにそれを拒否すんのが、か」
 
 ………そうだ。
 晴子さんの言う通りだ。
 だから、俺は事前に新幹線を予約して、券をジャケットの内ポケットに入れておいた。
 無論、俺一人分のチケットを。
 
 今日の日付なんて、忘れるはずがない。
 だが、瑞希を連れて行く気にはどうしてもなれなかった。
 今日という日付を「忘れた」なんて言ったのは、その所為だ。
 はっきりと告げたとき、瑞希が取る行動がわかっていたから。
 
 そう。
 俺はわかっていたのだ。
 最初から瑞希が今日この日に取る行動を、俺はわかっていたんだ。
 ………それを、俺は、逃げたんだ。
 わかっていながら、思いを踏みにじったんだ。
 
「ったく………思い出すの遅いんやって。今日はもう帰り」
「晴子さん………」
「今度は瑞希ちゃん連れてこんと、ウチがあの子に変わって怒ってやるわ」
 
 救われたような、怒られたような。
 そんな複雑な気持ちを抱いた。
 ほっと安心したような安堵感は得るが、とんでもない罪悪感も得る。
 
 謝らなくてはならない。
 瑞希に謝らないと、俺は一生後悔する。
 どう罵られても、嫌われても、一向に構わない。
 瑞希がどう言おうが、それだけは済まさないといけない。
 沈んだ肩を上げて、お礼を言おうと晴子さんを見る。
 だが、既に晴子さんは背を向けて家へと向かっていた。
 その背中は語っていた。
 ――――礼を言うんは次にしいや、と。
 その背中を最後に見て、俺は帰り路のために足を進める。
 どこかその足は重くて、墓参りに来たときより気分的には悪かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 私は莫迦でした。
 考えが浅はかだったこと、大切な人に疑惑を抱いてしまったこと。
 ………………ううん、そうじゃない。
 これは罪悪感からの気持ちじゃない。
 私は何も理解してなかったということ、それだけ。
 一体、祐一さんの何を理解していたのか……。
 ………いや、何を理解していたと勘違いしていたのか。
 
「はぁ………」
 
 一人溜息を吐く。
 静まっている居間では、その自責の塊が妙にはっきり聞こえる。
 やっぱり祐一さんは亡くなった奥さんのお墓参りに行ったんだろうな。
 私には黙って、一人で…。
 確かに私は親戚でもないし、関係者でもない。
 でも、こうやって祐一さんの家族≠ニなった私は、こうしてここにいる。
 祐一さんは私に一言も知らせることなく、行ってしまった。
 
 私って一体何なんだろう………。
 
――――ただいま」
 
 祐一さんが帰ってきた。
 でも、どこか声に力が感じられないような気がする。
 
 ガチャ
「瑞希、いるか?」
 
 居間への扉を開けて、開口一番の言葉。
 真剣な表情で、私を見たときの祐一さんの顔は緊張さえ憶えるほど。
 私は自分の言いたいことも忘れて、祐一さんの問いに頷く。
 
「………………………………ごめん」
 
 目一杯溜めた沈黙は、小さい呟きにも似た言葉の準備に過ぎなかった。
 頭を下ろして、精一杯誠意が篭もった謝罪。
 たった三文字に篭められた祐一さんの気持ちが、胸に響いた。
 その言葉を聞くまで、私の存在意義は一体何なのか考えていたほどなのに。
 
「俺、最低だ。おまえの気持ちを知ってて気付かない振りしてた」
「………………」
「瑞希………明日なんだけどな、俺に着いて来てくれないか?
 おまえと会いたがってる人がいるんだ。勿論、俺もそれを望んでいるんだが…」
 
 高められていた憤りがフゥと風に流されたように、消え失せた。
 ………………駄目だ。
 うん、やっぱり私には無理だ。
 そんな真剣な表情で言われたら、私は陥落してしまう。
 とてもじゃないけど、怒ることなんてできない。
 
 
 
 だって、
「わかりました。明日、楽しみにしてますね」
 
 
 
 私は、
「何しろ、祐一さんが初めて自分から誘ってくれたことですから」
 
 
 
 こんなにも、
「期待してもいいですよね、祐一さん♪」
 
 
 
 
 
 ―――――――――貴方のことを想っているのだから。
 
 
 
 
 
 
 
 〜汝幸せを願う者〜
 


 あとがき
 
 三裏音必兎みりおんひっとおめでとうございます!(遅
 ということで、記念SSを寄贈しました(同上
 文才がないなと実感した後半のグダグダっぷり。
 誰か私に文才を下さい。
 
 祐一×瑞希。
 はい。読んでみてわかるように、柊さんが執筆なさってるgunsを使った三次創作です。
 設定として、二人は同棲してます。ちなみにまだ$e娘みたいな関係です。
 祐一は嫌がりましたが、瑞希の強引さに諦めて渋々了承したという具合。
 二人とも自分で考えたキャラではないので、どうも上手く掴めない。
 口調や仕草が合ってるか不安でしょうがないです。
 
 一番難しいところは晴子さんの喋り。
 ぶっちゃけ、いろんな『関西弁』が入り混じったような気がします(汗
 きっと現地の人が読んだらとんでもなく可笑しい文なんでしょうね。
 見つけた人は、大いに笑ってください。
 それと、ここの喋りはこうだよ、みたいな助言を頂けたら嬉しいです。
 
 gunsの最後がどうなるのかわからないので、こういう話が存在できるかはわかりません。
 まぁ、gunsに置けるアナザーエンドという意識で書いてみました。
 補足として、これを書いてる時点でgunsの最新話は28話です。
 
 〜帰ってくるはずのない手紙〜という映画の話。
 そんな映画、聞いたこともありません(笑
 タイトルから内容まで、全部作り物です。
 何故手紙の内容を夫が知っていたのか、それについてツッコミは遠慮願います。
 だって、その方が美談っぽいじゃないですか(爆
 
 それでは、最後に。
 柊さん、本当におめでとうございます。
 そして、これからも頑張ってください。
 
 実は祀り以外で投稿したのはこれが初めてだったり
 ではでは〜。
 
 
 

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