今日は本当に色んなことが起こる日だ。
姉ちゃんからガンドぶっ放されるし、槍使い相手に死にそうになるし、剣使い相手にも死にそうになるし、魔術知識がほとんどない士郎さんは聖杯戦争に参加するし、胡散臭い教会の言峰ナントカには変な言葉かけられるし、目の前にはバカデカい城みたいな巨人兵が威圧感丸出しで立ってるし、終いには……………
「――士郎さん。アンタもしかして……ロリコン?」
なんて言いたくなるようなことが。
つか、目の前の幼女にお兄ちゃんと呼ばれる士郎さんは、こんな小さい子に何させようと――
「祐一。俺のこと変な風に考えてるんじゃないだろな?」
「――え……っ。…………い、いやでゃなぁ、士郎さん。そ、んなことあるわきゃにゃいよ?」
「何噛み噛みで言ってるのよ、祐一。それじゃ考えてますって言ってるも同然じゃない」
…………ハイ、ソウデスネ。俺の莫迦。姉ちゃんの言う通りじゃん。
でも、士郎さんをお兄ちゃんと呼ぶこの幼女は一体なに?
なに、って言うか…………誰?
士郎さんとどういう関係?
もしかして、生き別れの兄妹?
名前は何て言ったっけなー、あまり長い名前は一度言われただけじゃ覚えるの難しいんだよな。
確か、イリ――
「………………アインツ……ベルン……」
あー、確かそんなツベルクリンみたいな名前だったな。
で、何で姉ちゃんはそんな驚いてんだ?
もしかして、この幼女って――
「私の名前はイリヤ。――――イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、と言えばわかるかしら。リン?」
――実はスゴいのか?
姉ちゃんは知ってるかも知れないけど、俺には全っ然、これっぽっちもわからんぞ。
と言うか、そのアイ……アイ……アイン、ツ……ベルン? だったっかな。
その名前はそんな衝撃的な名前なのか?
…………うーん。わからん。
「なるほどね。やっぱりイリヤも既に召喚して参戦してたんだ」
「ふふっ。当たり前じゃない。私を誰だと思ってるの?」
「…………それも、相当アタリを引いたみたいね」
ちらりと視線を外して、姉ちゃん。
何が、とは言わない。
威圧感あるヤツは明らかにサーヴァントだと、俺でもわかる。
何のサーヴァントかはまだわからないけど、それを後にして今一番疑問なのは、
「――――姉ちゃん。あの幼女って結局誰なんだ?」
目の前の幼女が一体誰なんだ、と言うことだ。
Kanon × Fate / stay night SS
Broken Breaker #06
「――はァッ!?」「――よ、幼女ッ!?」「――ふぅ」
何か、三者三様の返事が返ってきたんだけど……?
…………しかも、士郎さんのサーヴァント・剣使いなんて、溜息を吐いて呆れてる様子だし。
……というか、何故、過去の英雄がこの幼女を知っているんだ…?
「仮にも魔術師の家系だって言うのに、アインツベルンを知らないなんて…」
「いや、俺自身は魔術師の家系じゃないし」
「…………ふ、ふふ、あははっ。へえ、面白いモノを飼ってるのね、リンは」
か、飼うッ!?
……ま、まぁ、即座にそうじゃないと否定できない自分が少し悲しいんだけど。
「…………ふふん。確かに祐一、頭はド素人だけど、生憎こと戦力に於いては上級者の凄腕なのよね」
褒められたような貶されたような。
士郎さんも微妙な顔つきで俺を見てるし、剣使いは興味なしと言った様子で幼女のサーヴァントを見ている。
じっと睨むように、凝視。
「――ふぅん。確かに賢そうには見えないわね。でも、リンが自信あり気に言うんだから相当デキるのかな?
じゃあ、予定通りシロウは殺さないで他は全員殺しちゃって――バーサーカー♪」
「■■■■ーーーッ!!!!」
『ッ――!?』
…………い、今、なんて、言った…?
「そのユウイチって子はマスターじゃないけど今後邪魔になるかもしれないけど一応危険だからヤっちゃって」
狂戦士――――バーサーカー。
地響きを起こすようなバカデカい咆哮と共に、今までよりその存在感を誇示したサーヴァント。
本来の英霊能力より強くなるが、自我を失う諸刃のサーヴァント。
純粋な強さなら最強と噂されるサーヴァント、狂戦士。
それが、まさかこんな幼女の手に渡っていたなんて。
「姉ちゃん、走れ」
「は――?」
「…………言い方が悪いわね。凛が不思議顔をするのもわかるわ。
……サーヴァントが使い物にならないマスターはこの場にいても仕方ないって言ってるのよ、そこの破壊魔術師は」
剣使いが姉ちゃんに、俺の伝えたかったことを代弁してくれる。
そう。この剣使いの言う通り。
弓使いと言うサーヴァントが重傷で現界させることすら叶わない姉ちゃんはただの魔術師にしかならない。
正直言って、今の俺たちに誰かを護りながら闘うのは困難。
剣使いは士郎さんを護りながら闘うのは出来るかもしれないけど、俺は自分のことだけで精一杯。
「………………祐一はどうするのよ」
「剣使いだけにこの場を任せるわけにはいかねーだろ? 当然残る」
「ならッ――」
「弟のことを想うのなら彼の気持ちを汲んであげるのもまた姉の役割じゃなくて?
彼は貴女をこの戦争で勝たせるために、敢えて今あの狂戦士を食い止めようとしてるんだから」
……流石、俺のことを良く知っている剣使いだ。
ついでに、どうしたら姉ちゃんを説得出来るか、その一番効果的な方法を取りやがった。
こう言われて納得出来ないような、無能でお莫迦な姉ちゃんを持っているわけじゃない。
必ず俺の行動を無駄にすることはしない。
「……………………じゃあ、“あの場所”で待ってるわよ、祐一」
そう言って、悔しそうに納得いかない表情のまま姉ちゃんは一人この場所を後にした。
…………
………
……
さーて、いっちょ化け物退治でもやりますか。
俺は巨人兵のような狂戦士を見上げる。
「…………へー、バーサーカーを見ても怖気付かないなんてニンゲンにしては度胸だけはあるわね。
それとも、実力の差を理解してないだけなのかしら……?」
剣使いはどうかわからないけど、俺と士郎さんは明らかに実力の差を知っている。
魔術師になりそこなったただの人間二人にどうこうできる相手じゃないのは解かり切ってる。
――――ただし。
それはサーヴァント相手の仮定、だ。
人間対人間なら話は別。実力差はそこまでない。
だから、
「狂戦士とマトモに闘り合うのは不利以外の何モンでもない。
だから、剣使いは狂戦士の足止めを、士郎さんは彼女の援護を」
「…………と言うことは、祐一は」
「あぁ。幼女に聖杯戦争から降りて貰うよう説得して、無理なら一応今後のため殺す。それしかないだろ…?」
えぇ、そうね。と剣使い。
士郎さんが何か言いたげだけど、無視。
甘ちゃんの士郎さんの言いそうなことは凡そ検討がつく…………だからこそ、無視。
俺と剣使いは互いの眼を見てアイコンタクト。
俺たちが立てた作戦は至ってシンプルなもの。
言伝を終え、俺は隠し持っていた武器を取り出す。
――――槍。それも折り畳み式の、強度が非常に低い石木の一矛槍。
「俺をただのニンゲンと思わないほうが利口だぞ――」
言うが速く、やや迂回しながら狂戦士との距離を保ちつつ、標的を幼女へと定める。
ちらっと、狂戦士を挟んだ向こうを見ると、剣使いはやや後方から。
士郎さんは彼女の援護をしているのが見えた。
「■■■ーーッッ!!!!」
「……ふ。一丁前に吠えるんじゃないわよ、アインツベルンの飼い慣らされた駄犬風情が」
何か詠唱を始めたかと思ったが、一瞬で終えた剣使いの右手から拳大くらいの魔弾が三つ生成される。
溜めることを知らない三つの光は、空に漂うこともなく一直線に狂戦士の元へと飛ぶ。
いや、この場合は飛ぶと言うより“飛ばした”と表現するのが正しいのか。
その魔弾をこの時代に不釣合いな石斧――それでも人間が扱える大きさではない――で迎撃する狂戦士。
魔術と言う認識ではなく、気に障ったナニカを払ったと言った感じのように見えた。
やはり思考能力がほとんどないから、今のように赤ん坊のような反応しか出来ないのか…?
――――瞬間、剣使いが掲げて振り被ろうとした剣を見た。
「――ば、バーサーカーッ!?」
「サーヴァントより、自分の心配をしたらどうだ…?」
「――ッ!?」
サーヴァントを心配そうに叫ぶ幼女を背後から捕らえる。
矛先を幼女の顎へ密着させ、テレビで良く見かける三流の悪人宜しくお決まりの台詞。
あー、何故こんなとき人は同じような言葉しか思い浮かばないのでしょうか、神様。
「――大人しくしな。命呪を破棄さえすれば命までは取らない」
なんて陳腐な脅し文句。
――言葉は幼女に、視界は剣使いに。
俺の咽喉を付いて出た言葉に気の緩みなどは全くないが、瞳はある一つの光景に心奪われていた。
唯一つ、剣使いに。
唯一つ、剣使いが持つ剣に。
唯一つ、剣使いが持つ宝 石 剣に。
――――――――今より遥か未来の遠坂凛が持つ煌剣に。
俺はそれに魅了されていた。
可憐な女性でもなく、数え切れないほどの金銀でもなく、唯一つの剣に――。
あとがき
この回は何と言っても、セイバーの正体がメイン。
かと思われますが、個人的に一番のお気に入りは、幼女――イリヤ――です。
ハイ。色んな意味で暴走してますね。
士郎でも祐一でもなく、私が。
・遠坂凛がセイバーとして召喚される。
この設定はあまり他ではないだろう、と思っていましたが、先日とある人に言われました。
そう言う設定のSSありましたよ、と。
……ちょっとだけ設定を変更しようかと悩みました。
何故ってそれはあまり他では見られないSSにしようとしているので、どうしても二番煎じだと抵抗がありますし。
まぁ、でも、前回のあとがきで「誰もが知っている」セイバーと書いてしまったので後戻り出来ませんでした。
そんなことで、このまま当初の設定で進めようと思っています。
何故かこれの感想が来るんですけど、これって需要あるのだろうか…?
いや、感想が欲しくないわけじゃないんですけど、というか嬉しいんだけど、嬉しい誤算ってやつ…?
息抜き感覚で書いているので、これで感想をもらってもいいのかどうか。
まぁ、もらえるものは何でももらうのが信条なので、感想をくださった皆さん、この場を借りて申し上げます。
感想を読んだ日の私のテンションは激高です。モチベーションもバリ高です。
そういう日は大体そのSSの執筆をします。
ありがとうございます。
Broken Breaker #06 〜ANOTHER STORY〜
「私の名はエヴァンジェリン。――――エヴァンジェリン.A.K.マクダウェル、と言えばわかるだろう…?」
「…………いや、アンタ誰?」
さも当然のことのように言ってのける姉ちゃん。
いや、俺も知らないけどさ。
「――な、にィ…ッ! この最強無敗にして、吸血鬼『闇 の 福 音』――――“不死の魔法使い”である私を知らんと言うのかッ!!!」
「祐一、アンタ知ってる?」
「姉ちゃんが知らないのに俺が知るわけないだろ」
「衛宮君は?」
「右に同じ。剣使いは?」
「愚問。知ってるわけないでしょ。それより魔法って、それ魔術じゃないの?」
完全に見下した様子で言う剣使い。
なんだろな……。
物凄い危険な予感と言うか、嫌な気配がビンビン肌を刺激してるんだけど。
もしかして俺たちは、この誰かわからん人の逆鱗にでも触れてしまったのか…?
「………………ほう、我が名を知らないとはなッ! ならば身を持って知るがいいッ。――――茶々丸ッ!!」
「――――お呼びですか、ご主人様」
どわ……ッ!
突然空から一人の女性…………いや、機械人形、か…?
足の裏には噴射装置のバーニア、両の手にはごっついライフルが二挺。
この、マスターと呼んだこの女性は…………
「「「サーヴァント――――ッ!?」」」
…………んなわけなく、ただの従者、か…?
でも、なんだ、この気持ちが昂ぶる変な気持ちは…?
この女性を見てると動悸が激しくなる。
胸が苦しく、なる。
透き通るような淡い瞳を覗いていたら意識が飛んでしまうような、この錯覚は一体なんだ…?
もしかして…………。
この気持ちは…………。
まさか…………。
―――――――― To Be Continued
勿論続きませんよ?