――――ヤツはバケモンか。
嫌悪感漂う不気味な槍が、大気を切り裂き悲鳴を上げる。
正直、全身蒼い男の刺突なんて人間の眼で視認出来るレベルじゃないのは明らか。
士郎さんを土蔵に追い遣り、蒼い男の前に立ち塞がった俺は最早ズタズタになっていた。
槍の攻撃を躱し切れなくて血が流れてることと、人間の俺がどう頑張ったところで人の昇れる高みを遥かに凌駕したコイツには勝てない、と言う恐怖感から。
肉体も精神も、既に満身創痍。
――――勝てるはずがない。
その男――サーヴァントと呼ばれる過去の英雄が、現世に出現したことで俺は直感した。
聖杯戦争はもう始まっているんだと。
槍使いは、そんな俺の恐怖を悟っているように、不敵に笑う。
「……ふー、やれやれ。目撃者がまた一人増えたってのに、そいつは俺の槍を辛うじてだが躱しやがる。
ただの人間に俺の槍を躱せるわけがねェってのに。――――テメェ、一体何モンだ?」
Kanon × Fate / stay night SS
Broken Breaker #03
そいつって勿論俺のこと……だよな?
確かに槍使いの放つ槍は、出来損ない魔術師の俺には見えない。
いくら破壊の魔術に長けていると言っても、所詮は出来損ないの魔術師――人間――に過ぎない。
そんな俺が何故槍使いの攻撃を躱せてるか――と言っても数回は掠ってるんだけど――、それには勿論理由がある。
破壊と言う、ある意味死≠ノ最も近い魔術を扱う俺にとって、槍使いが放つ槍は俺の魔力に最も近い。
――見えずとも感じる。
向かってくる気配は迅過ぎて全てを見切ることは出来ないけど、瞬間的になら、致命傷にならない程度なら。
見ることよりも集中力を要する感知と言うことは、俺の精神を更に奪い取る。
「見たところ、貧弱そうな躯してるところからテメェも魔術師か?」
「俺? 良く聞け。俺の名前は相沢祐一! 冬木で三十七番目に料理が上手い人とはまさに俺のことだ! 歳は十七歳とウンヶ月。星座と血液型は牡羊座のO型。好きな女性は、俺を扱き使わない人。…………後は、家事が出来て、俺を大事に思ってくれる人」
「――――…………………………はンッ」
莫迦にしたように鼻で笑われたんですけど……。
やっぱこう言う冗談は通じない、よな…?
正直言うと、俺は槍使いに勝てるはずがないからさっさとこの場所から離れたい。
高が人間風情が、何世紀経とうが伝説と化している英雄に勝てるわけがない。
「オマエ、おもしれーよ」
「そいつはどーも。…………で、ものは相談だけど、今日のところは見逃してくれない?」
「あァ? それは出来ねェだろ。何で俺が楽しい獲物を態々逃がさないといけねェんだよ」
楽しい獲物?
一体槍使いは何のことを言っているのか。
一緒に居て楽しいと言うことなのか、闘争本能の塊みたいな槍使いが楽しいと思う闘う相手のことなのか。
それとも別の何かなのか。
……それらの条件全てを当て嵌めてみるけど、どうにも可笑しい。
合致しない。違和感が消えない。歯車が合わない。
「英雄と呼ばれた俺がテメェを逃がすと思ってるのか?」
………………あー、そういうことか。
なるほどね。だからか。
何が可笑しいのか、解かった。
「――――――そういうことか。アンタは一つ勘違いをしてるよ、“――槍使い――”」
初めてヤツのことを槍使いと呼ぶ。
それが何を示すのか解かるように、その言葉だけを強調してはっきりと明言する。
何か話が食い違っているように感じたのはその所為か、と今漸く解かった。
「――――誰が言った? 誰が助けてくれと頼んだ? ……誰が俺を見逃してくれと言った?」
士郎さんは俺が殺す。
いや、殺さなくても魔術師としての資格を奪えばいい。
少なくても、それは俺が頼まれた仕事だ。
嫌々だったけど、どういう事情であれ一度引き受けたからには全うしなければいけない。
姉ちゃんに無理矢理押し付けられた感は確かにあるけど、もう後には引けない。
だから、コイツにヤらせる必要はない。
……つまりはそういうことだ。
俺が見逃してくれと言ったのは、俺自身のことじゃなくて――
「…………なるほどね。そう言うことか。どうやら俺とテメェは同じ目的でココに来たみたいだな。
それにしても、“自分の獲物を獲られたくないから退け”、とはな……」
――衛宮士郎のことだ。
槍使いに、士郎さんは見逃してくれと頼んだのだ。
何のために…?
士郎さんを助けるため…?
否だ。俺が直々にヤるためだ。
「……だが、生憎とアレは俺が一度自分の手で仕留めそこなった獲物だ」
「なら……」
「……そう」
一泊置いて。
俺たちは全く同じことを考えたようだ。
似たもの同士? 魂の兄弟? 同類項?
ふと、そんな単語が頭を過ぎった。
対象を必ず殺すと言う同じ志を持った二人は、何となく次の台詞も予想出来たのか。
一卵双生児の双子は照らし合わせることなく考えることが一致することあると聞いたことがあるけど、この奇妙な感覚もそれに近いのだろうか。
「早いもの勝ちだ」 「嫌でもそこを退いて貰うぜ」
言うが早く、俺は槍使いに背を向けて走り出す。
目指すは土蔵。
アホか。誰がお前と闘うかっての。
絶対に勝てないのが解かってて、そんな無駄なことするわけがない。
あばよー、槍のとっつぁ〜〜〜ん。
レッツゴー。今こそ限界を超えろ。Bダーーッシュ。
障子をブチ破って、俺は跳ぶ。
「テメェッ! 場の空気を読んだらそうじゃねェだろッ!」
後ろから聞こえた槍使いの言葉は無視。シカト。スルー。聞く耳はあるけど持つ義理はありませーん。
まだ士郎さんは聖杯戦争のマスターとして覚醒はしてないけど、今後のことを考えると今のうちにヤっといたほうがいいだろう。
確かに士郎さんは俺にとって大切な人だけど、そんな私情を挟んでたら立派な魔術師になんて無理。
成れるわけがない。あぁ。パーセンテージで言うと零が三個くらい一の後ろに付くほどありえない。
だから、俺は心を鉄にする。
私情で気持ちが揺らがない、硬く強い意志を持つために。
俺が魔術師として完成するために踏み台になってくれ――士郎さん。
――――俺の進む道はまさに、強引グ マイ 上へ。
更なる高みを目指す。
それがどんな犠牲を生んだとしても、俺は完成したい。
何故なら、俺は――――
――――魔術師として死ぬことを望んでいるから。
「――ッ!? ちィッ!」
土蔵に着いた俺の眼に飛び込んできたのは一筋の剣閃=B――あまりに綺麗過ぎて見惚れるほどの。
その銀色に輝く光を辛うじて躱した俺は瞬時に察した。
目の前にいる女性は、七騎いるサーヴァント随一と言われる剣使いなんだと――――。
あとがき
えー、短編です(ぇ
誰がなんと言おうと短編です(マテ
#02がない?
だから短編なんだってば(ぉ
相当電波受信してますが、あまり気にしないでください。
前回よりグダグダ…?
いや、それは本人が一番わかってますから。
でもこれは短編なんです。
ほら良くあるじゃないですか…………設定だけ同じって言う別の短編(ぉ
……今回はシリアスが半分以上を占めていますが、戦闘シーンでほのぼのチックを出すのってどうなのよ?
――――私的結論・無理。
可能かもしれないけど、私の力量では120%無理。
よって、悩んだ末シリアス風味。
十中八九純粋な戦闘ではランサーに勝ち目がない祐一なんだけど、少し強気に出過ぎたかな、と若干反省。
まぁ、でも祐一はランサーには勝ち目ないけど、(今の)士郎には勝ち目ありますレベル。
一応、他に類を見ないSSを目指しているので、当然セイバーも原作セイバーとは違うわけで。
とりあえず、女性です。
しかも、皆さんの誰もが知っているあの人です。
まぁ、こういう『飛び飛びのSS』は中々珍しいと思います。やったね♪(ぇ
さて、次は#04か#05か、それとも#06か。……流石に#10とかはないです。