「――――姉ちゃん。それどういう意味だ?」
帰宅早々、俺は血の繋がらない姉から衝撃的なことを告げられた。
本人は至って普通のことのように、「何か間違ってる?」とでも言いたげな表情で、俺に言った。
それがどういうことなのか、ホントに分かっているのかと言い返したいくらいだ。
夢――。
夢だ。夢に違いない。現実の訳がない。そう。だから、俺は現実に戻らないと――
「
祐一
アンタ
ねぇ…………何現実逃避してるのよ……はぁ」
――え? えぇ? 何この展開?
まるで俺が超ヘタレで、姉ちゃんに呆れられてるこの雰囲気は一体どこからクルわけ?
あー、まだ見ぬ姉ちゃんの両親さん。
アナタ方の一人娘は何故こうも先が読めない突発性爆弾発言症候群をお持ちなのでしょうか?
……いや、突発だから爆弾発言なのは当たり前なんだけどさ。
………………兎に角、この姉ちゃんは何か変だと思うのです。
「何失礼なこと考えてるのよ」
しかも、考えを見破られて一蹴されました。
文字通り一回蹴られた辺り、姉ちゃんはかなりの乱暴者……と言うか、かなりの自己中だと思う今日この頃。
何て言うかな………………ッ! そう! 女王様ッ!! クイーンオブクイーンッ!
天上天下唯我独尊典型的破天荒女王様。
「ですよね、
凛姉ちゃん
じょおうさま
?」
「…………
祐一
アンタ
は一体何を考えてるのよッ!!!」
――げしげし。
天国の親父よ、
遠坂凛
ねえちゃん
の蹴りで
相沢祐一
オレ
もそっちに行くかもしれない。
Kanon × Fate / stay night SS
Broken Breaker #01
「――――――で?」
足蹴にされた患部を押さえながら、俺。
「ん? どしたのよ、祐一」
「いや、“――俺が士郎さんを殺さないといけない――”ってどういうことだよ」
「そのままだけど? 士郎が魔術師としての資質があるみたいだから、聖杯戦争に参加する前に士郎の腕を切断するか、命を絶って来て、ってことだけど」
文字通り。さっきの言葉と全く同じことを言う姉ちゃん。
さらりと「今晩のメニューは何?」「昨日の残り物と漬物」って言うくらい自然な素振りで、怖いことを言ってのける我が姉は色んな意味で流石と言える。
でも、それはさっき聞いたっての。
俺が訊きたいのは、“何故”、“俺が”、“士郎さんを”、“殺さないと”、“いけないのか”、ってことなんだよ。
――――――聖杯戦争に参加する魔術師を殺すのは分かる。
――――――姉ちゃん以外の魔術師は殺しておく必要があるのは分かる。
士郎さんには義理がある。
士郎さんには恩情がある。
士郎さんとは友情がある。
それでも、俺が士郎さんを殺すのは関係ない。
私情は捨てる。
簡単だ。
――士郎さんが魔術師だっただけ。それだけ。
その唯一の理由から、俺は士郎さんを殺す――――
「――――んなことは
分かってる
・・・・・
よ。俺が疑問≠ネのは、
何でその役目が俺
・・・・・・・・
なのかってことだ」
「………………何でって、祐一が私の使用人だから?」
「嘘つけーッ! 何でも言うこと聞く奴隷だと思ってるだろーがッ!!」
「あら。バレてた…?」
……や、バレてないと思うほうがどうかしてる。
俺はお手伝いとして遠坂家に雇われたが、実際のところお手伝いと言うより奴隷と化しつつある。
…………それも、遠坂家ではなく当主遠坂凛姉ちゃんの奴隷に。
「でも、私は今から
弓使い
アーチャー
と一緒に街に偵察行かないといけないの。だから祐一しか頼る人が」
「ヤ」
出来ないわけじゃないけど、めんどぃ。以上。
即答する俺。相沢祐一十七歳とンヶ月の日の夜。
「――ッ!?」
……あ、ヤバい。
この魔力の波動は――。
――ッ!!
そう感じたときときには、刹那的閃光と魔力の射出が視界に映っていた。
咄嗟に跳ぶ俺。
その直後、俺がたった今まで居たところを見ると、小さい風穴が空いていた。
手品でもなく、見間違いでもなく、本気で穴が空いてるんだけど……?
……思わず横に跳んで躱してなければ大変なことになっていただろう。
「おいコラァ! いきなりガンドかよッ!!」
とりあえず文句を口にする。
今の俺はプチ切れ状態。
ブチじゃなくプチ。
この傲慢さは間違いなく俺のクラスメート美坂香里と同等レベルか、それ以上。
ただ、言えるのは我が姉のほうが攻撃性が激高いってことか。
「…………ねえ祐一。もう一度だけチャンスを上げるわ?」
「……………………え、えーと…………何のチャンスか教えてくれないでしょうか、お姉様?」
般若。修羅。悪魔。
とりあえず、言葉でどう表現するかなんてどうでも良かった。
振り撒いてる笑顔の裏の形相が、とんでもなくヤバいことってだけは確か。
「――――生きるか死ぬか、選びなさい」
「不肖相沢祐一! 直ちに衛宮士郎の魔術師の資格剥奪の任務を遂行してきますッ!!」
はいぱーダッシュ。
姉ちゃんストレート過ぎーーーッ!!
言い終えると同時に、姉ちゃんの顔を見ることなく、姉ちゃんの返事を聞くことなく、逃げ――。
じゃなくて、遠坂家を後にした。
目的地・衛宮家。
目的・衛宮士郎の両腕の切断……若しくは生命活動の停止。
俺、相沢祐一が唯一得意とする魔術。
それは――――破壊。
無機質有機質、生物や物体、関係なくこと破壊に関して俺は遠坂家当主の凛姉ちゃんより資質はあった。
ただ、破壊以外の魔術に関してはズブのド素人と同等レベルだけど。
何故か訊かれても俺自身その答えは分からない。
でも、何故か破壊に関して俺は姉ちゃんから絶大な信頼を得ている。
こう言う仕事も初めてじゃないし、何度か経験もしている。
だから、俺は“破壊”しなければならない。
一歳年上の友人を。
親友の思い人を。
衛宮士郎と言う存在、魔術師としての資質を。
――――――破壊しなければならない。
遠坂の家を出た俺は、重い足取りのまま何度も通い慣れた衛宮家へと赴く。
あとがき
とりあえず補足。
祐一の両親が共に亡くなって、それなりに交友があった遠坂家のお手伝いさんということで引き取られる。
養子ではなくお手伝いとして雇われている祐一が、何故凛のことを姉ちゃんと呼んでいるか。
――――凛が姉っぽかったから。以上。
お手伝いとして雇われた歳、現在より五年前。
正確な雇用主は凛の爺さん。
ただ、現在は遠坂凛が名目上相沢祐一の主人と言う形式になっている。
祐一の年齢は桜と同じ歳。
作品紹介。
KanonとFateのクロスもの。
後々月姫キャラが出て来るので、正確にはTYPE-MOON作品とクロスになるのかな。
蛇足ですが、月姫の世界ではシエルグッドエンドと言う設定。
――で。
神薙祐樹さんとシンクさん(五十音順)が書いていたので何となくノリで私も。
こんな理由で書く私、死んでしまえ。
あ、そうそう。忘れてましたけど、これは
短編
です。
#01とかありますけど、
短編
です。
終わり方が不自然だとか言う抗議は却下したいです。
ジャンル指定は、シリアスかほのぼのか。
戸惑うけど、一番ピッタリ当て嵌まるジャンルはこれだと思う。
――――電波。
テーマは、死とか殺すとかシリアス調でありながらもほのぼのチック。
それと、誰もが書かないような設定、展開のSS。
クロスしてる各主人公が同学年ってのは正直読み飽きた。よって、こんなSSに。
まぁ、簡単に言ってしまえば中途半端なSSですが。
そして、最後になったけど、テーマにお手軽さを取り入れた。
「こんな文章書く奴バカだなー」と言う感じで読んでくれれば嬉しい。
冒涜してるかもしれないけど、私自身「おバカSS」と思ってるので全然構いません。
補足。
タイトルのBroken Breakerとは、破綻している破壊者と言う意味。
勿論意訳。フィーリングで感じ取ってください。
でわ。
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