精霊と人の詩。
第二十三話 相沢の名前とその意味。〜存在と意義〜
グラウンドへと続く門の前。美坂姉妹に名雪が石橋先生を相手に騒いでいる。
栞の話では、その門の向こうに祐一がいるというのだ。あの光の柱を落としたという。
「何で通してくれないのですか!?」
「とにかく、状況を把握するまで待ってくれ。」
「防人の人が来るまで待てって言うんですか!?」
「そうは言っていないが……」
訂正。騒いでいるのは栞だけだった。しかしその剣幕は尋常じゃない。何故、外に出れないのか焦っているようにも見える。
香里と名雪は困ったように、栞を見ている。その二人を恨めしそうに石橋先生は見ていた。
しかし、その二人は騒いでいる栞ほどではないが、グラウンドに出たいと思っているのでその視線を無視して栞の後ろに立っている。
騒ぎ始めてかなりの時間が経った。ごねる栞に、粘る石橋先生。香里も名雪もいい加減うんざりし始めたとき、
石橋先生の後ろの扉が開いた。そこから有夏と冬葵に支えられた満身創痍の祐治と同じく美晴に支えられた秋子が中に入ってきた。
その後ろには佐祐理達、5人が続く。祐治が香里達に気がついて顔を上げた。
「恥ずかしい所を見せるね、名雪ちゃん達。」
「おじさん?それはどうしたの?」
「まぁ、詳しくは栞ちゃんも詳しく知りたいと思うから、後で説明するよ。それで良いかい?」
「絶対にですよ?それと、お母さん、かなり疲労しているけど大丈夫?」
「大丈夫よ。名雪。怪我は無いから。」
「……うん。」
軽いやり取りの後に、祐治達は学院の中に入っていった。烏がその後を追う。
それと入れ替わるように学院から出てくる人が居る。久瀬兄妹と、天野三姉妹それにあゆだ。
ただ、美汐と飛鳥の顔が微妙に戸惑っていた。圭一はげっそりと疲れ切っている。
圭一と浩平と目が合い、浩平は嬉しそうに目を細め、圭一は会いたくも無かったという笑みを浮かべた。
そして諦めたように、口を開く。その声はやはり、疲れきっていた。
「……佐祐理さん。後ろの人たちは?」
「ふぇ?」
後ろを振り向いて驚く佐祐理達。そこにはそんなリアクションしなくても良いじゃないかという浩平達が居た。
真琴は美汐の後ろに隠れて新しい人を警戒している。一体あなたたちなんなのよぅ!とその瞳が言っていた。
美汐がそれを横目に、香里達に話しかける。
「さっき、祐治さんから紙を渡されました。祐兄さんに関して説明を受けたいなら、自警団会議室で待っていてくれとのことです。」
「うん。ありがとう。天野さん。」
そのまま移動する一団。そのまま付いて行こうとする浩平達。それを遮る様に佐祐理達と圭一が前に立った。
「あなた達、一体何の用ですか?」
「そうけちけちするなよ。圭一、知り合いだろ?」
「えぇ、知り合いですとも。でもただの知り合いです。」
「えぇ!?冷たいぞ?」
「あの……大変申し訳ないのですが……」
そのやり取りの中に入り込む美汐。その後ろには、やはり真琴がついていた。
どうやら、浩平達が良い人か悪い人かはかりかねて居るらしい。その後ろの幸大は曖昧な笑みを浮かべていた。
美汐の横にはいい加減うんざりだ、そんな顔の飛鳥が居る。
「祐治さんはどうやら、その人たちの事を知っているらしいです。紙にも書いてありますし……」
「お兄様。諦めなさい。」
「……ならしょうがない……」
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
「狼藉するのなら、覚悟はよろしくて?」
「そんな事する気はさらさら無いから。安心して良いぜ。」
その様子を冷や冷やしながら見ている美汐。飛鳥はそのまま歩き出した。どうやら道案内をするらしい。
それを見て一安心する美汐。そのまま、自警団会議室まで歩いていった。
自警団会議室は案外広い。職員会議にも使われる場所で、教室を二個ぶち抜いたような広さだ。
部屋の中には、祐一に関して説明が欲しいメンバーが全て集まっていた。祐治の説明を今か今かと待っている。
エターナルから来たメンバーと自己紹介をしてその気を紛らわせているが、いい加減焦れてきた。
その時、有夏に支えられた祐治が部屋の中に入ってきた。名雪がまず有夏に質問をする。
「あの、有夏さん。お母さんは?」
「あぁ、秋子なら今、寝ているわ。心配は要らないわよ。明日の朝には元気になってると思う。」
「そうですか。」
心配そうだった、名雪の雰囲気が少し薄まる。祐治は皆の顔を見回して、決心したように話しはじめた。
「相沢家はちょっと特殊な家系でな。各地で嫌われているんだ。それは何故か。原因は神を降ろせる事にある。」
一部を除いて、皆が祐治の説明で?マークを浮かべる。神を降ろせるとは何ぞやと言う顔だ。有夏が祐治の説明を引き継いだ。
「さて、詳しく説明するわね。昔、と言ってもかなり昔なんだけどね。どのくらい昔って言うのは省略するわね。
ともかく、人が神の存在を知っている時代に何度か神からの連絡役が必要だったと言われているわ。しかし、
わざわざ神界を出て、大地に行くのは疲れる。そう感じた神は人のある家系に目をつけた。それが相沢家ね。
精神のみを大地に飛ばして、相沢家の人間の体を乗っ取る事で人に伝えたい事を伝えて、そして神界に帰る。
それが神降ろしの始まりと言われているわ。ともかく、それを確認する術は無いけど相沢家の直系には
精霊に体を貸すことが出来るのよ。」
「実際に見せてみた方が良いか。ティアマット、同調を……」
『やれやれ。人使いが荒い。』
祐治の体に変化が現れる。皮膚は黒くなり鱗状になる。そして目の色が真っ赤になった。
その口から祐治とは違う、重く低い声が紡ぎだされる。
「さて、今は祐治に体を借りておる。と言っても信じはしないと思うがな。」
「ティアマット、あんまり無理をさせないで。」
「解っている。今の祐治の体ではもう維持が出来ない。すぐに出て行く。」
またも祐治の体に変化が現れた。さっきとは全く反対の変化だ。祐治が激しく咳き込む。有夏は背中を擦った。
その間の皆の顔は驚愕の一言であろう。何も声が出ない。それが本当の所だが、一人だけ例外が居た。
「ところで、それは直系の人なら誰にでも出来るんですか?」
「それは違う、栞ちゃん。直系でも才能の有る人しか出来ない。」
「なら、祐一さんには出来るものなのでしょうか?」
「それは解らない。祐一にはその才能は全く無かった。でもさっきのあれを見るとあるとしか考えられない……」
祐治は考え込むように説明をやめた。それはこれ以上は自分にも解らない。そんな感じだ。
その後を有夏が引き継ぐように軽い口調で話しはじめた。
「さて、次は身内の話をしましょうか。祐一には妹が居たの。祐夏って言うね。」
「え?そうなの?私、知らないよ!?」
名雪が驚きの声を上げる。それを見た有夏はさも当然という顔だ。
「名雪ちゃんは知らないわ。何故なら、神遠に移り住む前に死んじゃったのよ。」
「え……」
「神遠に移り住む前はエターナルに住んでいたのね。ずいぶん前、十年位前の話になるかな。」
「エターナルに?」
「そこに居る浩平君達なら、その時期に何が有ったか分かるわね?」
「あれ?俺はあんたに自己紹介したか?」
いきなり話を振られて戸惑う浩平に瑞佳。留美は何の事だか訳が分からなかった。
「あら、冷たいわね。おばちゃん、あなたに飴玉をあげた事があるわよ?」
「む?」
「はぁ、みさおちゃんと由紀子は元気?」
「!浩平、あの良く、みさおちゃんと私に服を作ってくれた……」
「……有夏さん?」
「ようやく思い出したのね……」
「しょうがないだろ?その頃に俺は外で遊びまわってたわけだし。」
「さて、話はずれちゃったけど、その頃に何があったか解るわね?」
「ちょっと折原、何の話してるのよ!」
「エターナルに移住してきた七瀬は知らないと思うが、その頃に戦争があったんだ」
「そう、それが私達、相沢家の神遠移住のきっかけにもなったのね。その戦争は一部の地域が独立するかしないか
それで戦争になったわけ。住んでいた場所が悪かったんでしょうね。その地域の近くに住んでいたんですもの。
その戦争はある日、突然、起こったわ。それでその付近の住民は全てが殺された。生き残ったのはただ一部だけ。」
「思い出した……悪霊家族って噂になった……」
「そう、私達、相沢家ね。人とは違う能力を持つ私達が居たからその地域は狙われたと言われたわ。
実際には独立をする地域の管轄の役人が大勢がそこに住んでて、酷い事した報復だった訳ね。私たちには関係なかったけど。
でも、エターナルでは私たちの存在は許されなくなった。だから神遠へと秋子を頼ってきたという訳ね。
話はずれてしまったけど、祐夏はその戦争の際に殺されたの。それも祐ちゃんの目の前で。よほどのショックだと思うわ。
あの子はエターナルに居た頃の記憶がすっぽりと抜け落ちてるの。でもそれはしょうがない事だと思うの。
祐ちゃんじゃなくても受け止められないと思うわ。そんな事を納得させるだけ、心が成長していなかった頃だし。
それで、神遠近郊に来て祐夏を森の中に埋葬したの。多分祐ちゃんの記憶はそこから始まっているわ。」
「それで祐一はどうなっているの?」
「解らないが、これだけはハッキリしている。もし、人に害があるなら、私たちの手で殺さないといけない。」
その言葉に、質問した名雪は声をなくした。そのまま口をパクパクと動かしている。
祐治の言葉に納得のいかないという顔が大半だ。話は終わりと言う感じでそのまま、祐治と有夏は部屋を出て行く。
部屋の中には残された祐治達の言う子供たちだけがそのまま黙り込んでいる。
結局、何も教えてもらえなかったのと殆ど同じだ。過去はある程度教えてもらえたし、相沢家の情報も教えてもらえた。
しかし、今の祐一の状態が一言も話されていない。栞は祐治達が完全に遠くに行ったのを確認してから口を開いた。
「ウィッシュさん。いい加減、説明してくれてもいいんじゃないですか?」
栞が部屋の隅の方に冷たい視線を移していた。
「嫌なら、私から言ってしまいますよ。あなたが精霊ではない事を含めて。」
『……そうか、そうだったな。栞殿には魔族の知識が有ったのだったな。すまないが、私を見えるようにしてもらえないか?』
「解りました。」
その姿は、天使そのもの。ただしその姿は常に揺らめいている。背中からは翼が2枚生え、雰囲気に高貴さを少し滲ませていた。
栞を除くメンバーが息を呑むのが良く分かる。メンバーの中には自分の精霊さえ見えない人が居るのだからしょうがない。
その姿に間違いないと思われる、少し冷たい声がその場に響く。
『我が主、つまり相沢祐一に付き従った理由が聞きたいのではあるまい。一体何が聞きたいのだ?』
「そうですね……今の祐一さんの状態と、何故そんな状態になったか。それを教えてください。」
『話が長くなるが良いか?』
「構いません」
『そうか。じゃあ、聞くがさっきまで聞いていた神降ろしの事は何処まで信じる?』
そんな様子で、ウィッシュは今ここに居る人の顔を見回す。
神遠メンバーは全て信用できる。そんな顔の人間が多い。エターナルは浩平以外半信半疑と言う顔だ。
エアの二人組みは分からないし、さっきのは祐治の精霊の力なのでは?という顔をしていた。
『信じる信じないは個人の勝手だ。が、我が主は確かに私を降ろして戦っていた。私の能力のみを引き出して。』
「やっぱりそうですか……」
「……やっぱり。」
「そうだよね。」
「ちょっと栞どういうこと?」
「ねぇ、舞に恵、佐祐理にも分かるように説明してくれますか?」
舞、恵、栞、以外のメンバーはみんなが全て?顔だ。既に頭の上に大きなクエスチョンマークがついている。
説明に困る、舞に恵。そんな二人を横目に栞が説明を始めた。
「祐一さんが能力を行使するときに大体、同調をとか言いますよね。その後に大体女の人の声になると思いません?」
「……そうかもしれないわね。」
「……そうですね。」
「それだけで、おかしくないですか?それこそ、さっき見た神降ろしをした祐治さんと同じ状態です。」
『まぁ、ともかく、私を降ろして戦っていた。』
無理に納得せざる終えないメンバーが殆どだ。祐一が奇跡の行使をしているところを直接見ていない限り、
信じれないことだが、殆どの神遠メンバーが祐一のそれを見ている。
『私は、天使だった者だ。力の全てを封印されてここに追放されたな。そして、人という種の先祖でもある。』
「あぅ〜、話が面倒なのよう。もっと簡単にできないの?」
『まぁ、信じる信じないは勝手だ。難しいと言うなら聞き流してくれ。主の今の状態は天使とほぼ同じ状態と考えて良いだろう。』
「それはどういう事なのかな?」
名雪が顔を険しくして聞く。回りのメンバーも聞きたいと言う顔だ。
『我々は全ての力を封印されて大地に追放された。既に身も心もボロボロの状態で、だ。
そのままでは体どころか、精神さえ守ることは出来なかった。だから我々は、自分の体を分割して人という種を作り、
精神体、つまり精霊化することで、精神のみを守ることにしたのさ。それを成功させたのは私だけだがな。
人と言う種は元々、天使の体から生まれたといった方が良いだろう。それも殆どの力を封印されたというな。
全ての封印が解けることで、天使と同等の力を引き出す事の出来る体が出来る。ただしそれには3つの条件がある。
一つに、全身に回路があること。二つ目に、膨大な魔力を持つこと。最後に力の封印を解く事が出来るものが居る事。
この全てが揃って、ようやく天使と同じ力が有ると見れるだろう。むしろ天使よりも性質が悪いかもしれないな。』
「それでどうして、祐一君にそんな下地があったのよ。」
『じゃあ、聞こう。我が主は今までに一体、何度、死と同じだけの体験をしたと思う?』
いきなり切り出される意味不明な質問に誰もが、黙る。それはそれだけ祐一の事を知らないと言う事にも当てはまった。
『分かるまい。大地に戻ってきてからは少なくとも3回。精霊界に飛ばされる前に少なくとも2回。
そして、精霊界で少なくとも85632回。これらの数字は少なく見積もってだ。これがどういう事か分かるか?』
皆が絶句するなか、ウィッシュが淡々と、表情もなく続けていく。
『精霊界で既に体が魔力に耐え切れなくなっていた。普通なら体の一部を無くすだけ、つまりは回路の部分だけを失うだけで済むが
我が主はそうはいかない。その頃にはほぼ回路は全身に作られていた。つまり、魔力に耐えられないと言う事は死を意味する。
左手に巻かれていた包帯は鎧だったが、包帯のときは際限なく魔力を吸い出す存在だ。それのおかげで生きながらえていた。
あれは元々、神のための鎧だった物だ。精霊界に一つだけあったそれを、精霊王が主の為にくださったのだ。
それを人の身で無理やり起動させて、魔力を吸い出さなくしてみるとどうなるか、体が魔力に耐えられなくなって崩壊する。
今回は力の封印と言っても我が主の場合は後一箇所だけを解くだけだったが、それを解いて体組織を天使のそれへと変換させて、
生き長らえさせた、と言うわけだ。誤算だったのは我が主の魔力の容量が私の想像以上だったこと。この位で満足か?』
「……ちょっと待ってください。」
『既に、必要な事は説明したと思うが?』
「大地に降りた天使の能力は一体どんなものだったのですか?後、祐一さんが一番近いタイプはどれですか?」
『そうだな、まず私の能力は、精霊、動物達の姿を見て、その声を聞き、再生・変換の力を他者・自己に行使する力だ。
我が主は今まではこれに一番近かった。私がその力を貸していたからな。今はその力は無い。
次に見えない力、破壊の力を具現化しそれを行使する力。これは舞さんが一番近い。
そして、回路を特殊な状態にして、相手の回路を破壊する力。これは飛鳥さんの能力そのままだ。私に見覚えがないかな?』
「……やはり、そうなのですか?」
『残念ながらな。貴方の持っている記憶は私の義妹の記憶だ。黒い仮面を被されたのなら間違いはない。
最後に世界と共鳴し、絶大なる力を力を行使できる力。唯一神に対抗できる力。今の我が主はその力を無意識の内に
行使している。つまりは、最後の最も迷惑なタイプを持っていると考えた方が良いだろう。
しかし、天使の魔力では本来あれほどの方向性を持った力を取り出すことは出来ない。』
またも皆の顔に?マークが浮かぶ。一体この人は何を言っているのか?そんな顔が殆どだ。
『先ほどの光の柱を見たであろう?それか、山を撃ち抜いた光を見なかったか?
神、天使の本来の戦い方は純粋な魔力と魔力のぶつけ合いだ。とは言っても、天使の魔力など高が知れている。
殆どの天使の魔力は今の人と比べてもそう変らない。天使は少ない魔力ではなく、特殊能力を磨く事で戦場を生き残ったのだよ。
その子孫である、人がどうして、これほど方向性を持った力を行使できるのか。それを考えた事は無いのかね?』
「私達には守護精霊がついてるからなんだよ……力が行使できるのは。居なかったら何も出来ないんだもん。」
『そう、精霊が魔力を奇跡の力に変換する。精霊は、最も魔力の扱いに特化している。しかし殆どの精霊は魔力を持ち得ない。
何故か。力を持つ精霊の一部が神に反乱を起こしたためだ。そのために神は反乱を起こした精霊から魔力を奪い去った。
そして持てない様にしたのだ。ちなみに魔力を所持していて、反乱をしなかった精霊が精霊界に移り住んだのも同じ時期だ。
話が逸れてしまったが、魔力を巧く使う事に関しては精霊には敵わない。そして我が主はそれを身をもって知っている。
それは知っているな栞殿。貴方はそれを目の前で見ているはずだ。』
皆の視線が栞に突き刺さる。栞は神妙な顔でそれに頷いた。
「……知ってます。私に闇払いの法をした後に精霊を祐一さんの体に降ろしていましたもの。」
『我が主は精霊界でも神降ろしをしていた。意識の正面に出ていたのはそれぞれの精霊達だが、神を降ろしている間も意識はある。
つまりは精霊の魔力を使う事に関する事すべてをその身に刻み込んでいる。実際にそれを行使しているのだからな。疑いようは無い。
今の主は天使と同等の体を持ち、神とほぼ同等な防具を装備し、そして精霊と同じ力を行使できる。
貴方達が止めようとしている相手とはそんな相手だ。反則も良い所だと思うが?それと、私の再生の力は持っていないが、
どうやら、それに似た力は持っているようだ。今、我が主を相手にするのはどうかと思うぞ?』
気まずい沈黙がその場を包み込む。ふと思い出したように、名雪が言った。
「でも、なんで祐一を相手にしなくちゃいけないの?」
「それもそうね……」
名雪の不思議な質問に香里が頷く。確かにその通りだった。それに水を差したのはあゆだ。
「それは祐一君が正常だったらの話だよね?斉藤君が既におかしかったから祐一君も何かおかしくなってるかもしれない……」
『あゆさんの指摘通りだ。我が主の精神状態は今は普通じゃない。』
「……どういう事?」
『簡単に言うと、止めようとする者は全て敵だ。人に害が無いかというと微妙な所だな。』
「なら止めないとまずいよね?あのときの舞を止めた祐一にみたいにね。」
ジト目で舞を見る恵。舞の頬は若干赤い。過去の行いは恥ずかしいようだ。やっぱり、仲が良いのか悪いのか判らなかった。
「でもどうやって止めましょうかね〜?」
「さっきの話を聞いている限りでは、祐兄さんに死角はありませんよ?」
「あぅ〜。」
またも、気まずい沈黙がその場を包み込んだ。
あとがき
強引です。本当に強引です。もっと巧く会話の流れを持っていけると良いのですが、拙い私には無理です……
しかもこれだけメンバーが集まると、把握しきるだけで精一杯になってしまっています。
本当に、実力が無いんだなぁ……っと痛感しているところです。本当に何とかなって欲しい。
なんて思うくらないならもっと努力します。頑張りますので、見捨てないでくださいお願いします。ゆーろでした。