第十一話 説教と、ある少年の受難。
栞が助かった翌日。休日の朝にしては騒がしかった。時間としては朝10時ごろ。美坂一家が水瀬・相沢両家に訪問したからだ。
水瀬家の門を叩いているのは栞の姉、香里だ。目に見えるほどの黒いオーラをその身にまとっている。
その後ろでは香里以外の美坂家の人たちが香里のその態度・オーラに引いていた。
「お姉ちゃん、怖いですぅ……」
「ねぇ、あなた。あの子なんであんなに張り切っているのかしら?」
「俺が知るわけ無いだろうに……。何かあったのか?栞。」
自分の妻から問いを自分の娘にその答えを求める。
「知らないですぅ……」
親はなぜ娘があんなことをするのか。妹はなぜ姉がそんなことをするのか。分らなかった。
玄関を三回ノックした時に、その扉は開いた。水瀬家の玄関で対応したのは秋子だった。
「あらあら、いらっしゃい。香里さん」
「秋子さん。祐一君はいらっしゃいますか?」
香里は本来の目的を忘れて、自分の今一番したい事に走った。
「祐一さんなら、さっき帰ってきて、たぶん部屋で寝てますよ。」
「ちょっと、用が有るので、お邪魔します。」
香里は問答無用で中に入っていく。
「あ!お姉ちゃん、ちょっと待ってください!お邪魔します!」
慌ててその後に続く栞。
「すみません。さっき入っていった二人の親の美坂翔太です。」
翔太は恥ずかしそうに秋子に対して自己紹介をした。
「あらあら、ご丁寧に。それと沙良さんお久しぶりです。」
「こちらこそお久しぶりです。あの、相沢さんは今居ますか?」
秋子は『相沢』がどの相沢を指すか迷った挙句に、祐一の両親を紹介する事にした。
「玄関で話すのもなんですから、上がってください。」
「それではお言葉に甘えてお邪魔します。」
秋子はそのまま、二人の居るリビングに美坂夫婦を案内した。これが祐一の半日耐久説教の開始のきっかけだった。
説教の場所となる、祐一の部屋で祐一はぐっすりと睡眠していた。その静かな空間に似合わない音が聞こえる。
ドタドタと如何にも私は不機嫌ですという音が祐一の部屋の前で止まり、部屋の戸が勢い良く開かれた。
その音にも反応せずに祐一は眠り続ける。今日の朝、川澄家から帰ってきた祐一は寝不足だった。
原因はいつもの恵と舞の喧嘩にある。そのために祐一はめったな事では起きない。
「祐一君?起きなさい」
部屋に入ってきた香里が祐一に優しく声をかける。それに対して祐一は布団を被って対抗する。
「ちょっと起きなさいよ!」
「お姉ちゃん。無理に起こさなくても……」
「栞はちょっと黙っていてくれるかしら?」
栞を一睨みしてから祐一の被っている布団に手をかけ、それを引っ張りあげる。
「!?」
目の前から祐一が消えたので香里は焦った。そのまま周りをきょろきょろと見回る。
離れていた栞には引っ張りあげられた布団にしがみ付いていた祐一が、それから香里の背中に移ったのが見えた。
「何処に行ったの!?」
急に居なくなった祐一に対して香里は背中に居る事に気がつかずに焦っている。それを栞は笑いながら見ている。
「ふふふふ」
「栞?何がおかしいのかしら?」
「だ、だって、お姉ちゃんの背中に祐一さんがいるんですもん」
うろたえながら答える栞をよそに、かば!と言う音が似合いそうなくらいの速度で背中に張り付いている祐一を見る。
香里は頭が痛くなった。まさか、こんな所で名雪の従兄弟であることを認識させられるとは思わなかったみたいだ。
「まさか、こんな所で名雪の従兄弟だと言うことを認識させられるなんてね。」
「ところで起こすんですか?もっちょと寝顔を拝見しましょう。」
背中に祐一を張り付かせた姉を見て少し羨ましそうに声をかける。
「今回は駄目。」
そのまま背中から祐一を剥ぎ取り、その襟を掴んで窓際まで歩いてくる。その姿は親猫に掴まれた子猫みたいだ。
おもむろに香里は窓を全開にした。外の冷たい空気が部屋の中に入ってくる。
「っくしゅん」
起きる気配は無く、くしゃみをした祐一を見て香里はしぶしぶ窓を閉めた。
「どうやって起こそうかしら?」
何故そこまでして起こそうとしているのか、解らない栞は姉の行動にあきれ果てている。
廊下から、だだだだと言う音が鳴り響いて、部屋の扉が有夏の手によって開かれた。
「祐一は居るかしら?」
目の笑っていない極上の笑みを前にして美坂姉妹は祐一を差し出した。
「部屋から出て、秋子に事情を説明をしてくれないかしら?詳しいことは秋子から聞くけど、まずはこの子に反省させないとね」
その言葉に震えながら姉妹は顔を縦に何度も振って祐一の部屋を後にする。そして秋子の待つであろうリビングに移動した。
その背後から、聞き取れない怒鳴り声が聞こえてくる。二人はその声にビクっと体を震わせた。
「何も聞こえないわ。」
「でも……」
「言葉通りよ。」
そのままリビングまで降りて有夏に言われた通りに秋子に事情を説明した。主に栞がであるが。
途中、祐治がリビングを出て行ったが、戻ってこなかった。替わりに名雪がリビングに下りてきた。
「あれ?香里が何でここに居るの?あと、隣の子は誰?」
「ちょっと祐一君に用があってね。あと、隣に居るのは私の妹よ。ほら、挨拶して。」
「美坂栞です。よろしくお願いします。」
「香里に妹が居たなんて知らなかったよ。栞ちゃんで良いかな?」
驚いたように見えないが名雪は驚いていた。
「はい。良いですよ。」
「私はなゆちゃんって呼んでね。」
「……遠慮します。名雪さん。」
「……残念。」
本当に座念そうに名雪が呟いた。それを呆れた顔で香里は見つめる。
「少し遅いですけど、お昼にしましょうか?」
時刻としては2時ちょっと前。秋子のその言葉に、水瀬家と美坂家の昼食会になった。
昼食会は滞りなく進んでいく。その内容は大体が栞に関することとそれがいかにして直ったかと言う事を栞が説明していた。
もちろん、祐一に口止めされていたことは、ぼかして説明している。説明が終わった後、秋子が呟いた。
「そんな事があったんですか……やっぱりお仕置きが必要かしら?」
名雪が肩をビクっと震わせる。その様子を正面から見てしまった香里は内心冷や汗をかいた。
「とりあえず、姉さんに事情を説明しないといけませんね。まだ完全に把握していないでしょうから。」
「では説明している間は祐一君を借りてて良いですか?」
翔太は秋子に向かってそう、きり出した。
「姉さんが復帰するまで、ですね。あの調子ですとねぇ……」
困ったように手を頬に当てる。それを見て美坂夫妻は困ってしまった。
「ともかく、祐一さんに会わない事には始まらないですからね。頑張って説明を伸ばしますよ。」
「お気遣い、ありがとうございます。」
「では行きましょうか。あ、栞ちゃん達は残ってください。姉さんが質問するでしょうから。」
「「……解りました。」」
秋子たちはそのまま部屋を出て行く。時刻にして3時。残された香里は名雪に質問する。
「名雪、秋子さんのお仕置きって……やっぱり、あれ?」
やはり名雪は肩を震わせる。心なしか顔色も悪い。
「思い出したくもないよ……」
「やっぱり、そうなのね……」
自分の勘があっていたのか、香里も名雪も深いため息をついた。
「あれって何ですか?お姉ちゃん。」
「栞、世の中には知らないほうが良いことが沢山あるのよ。それでも聞きたい?」
姉のただならぬ雰囲気に栞は聞く相手を変えた。
「あ、あ、あれって何ですか名雪さん。まさか、じゃ「「駄目!」」……えぅ〜」
「栞、言葉に出しては駄目よ。」
「そうだよ!巻き添えを食うのはごめんなんだよ。」
二人のその慌てようから、栞は姉とその親友に聞くことは無理だと判断した。
態度からよっぽど酷い目に合ったのであろう。とそう完結して、自分もお仕置きに合わない様に心に誓うのであった。
さて、場所は祐一の部屋。扉を開けるとそこはシュールな光景が広がっていた。
親子揃って窓際に正座させられている。その前には有夏が二人に説教している。そこへ違う音が入った。
祐治は助かったと言う顔をし、祐一も安心したような顔をしている。
「姉さん。事情をしますからリビングに移動してください。」
「でもまだ……」
「とりあえず、状況を把握しないと無理だろう?」
有夏の隣に立つ祐治がそう畳み掛ける。
「まだ、舞ちゃんの事でも納得してないわよ!」
「あれは、半分位は有夏にも責任はあるぞ……」
「さあ、秋子!下に行きましょうか。」
このまま会話を続けるのは不利と判断したのか、さっきまでの態度を一変させ、下に降りていく。
その後も、祐一は部屋から出る事は出来なかった。美坂夫妻にお礼から始まったが、結局は説教され、
秋子さんが、オレンジジャムのサンドイッチを持ってきてそれを食べている間も秋子さんに説教され、
事情を聞いてきた、自分の母親に説教され、今度そんな事がある場合は報告する事を約束させられ、
全てが終わったと思ったら、美坂姉妹が止めを刺しに来た。時刻にして夜の九時。名雪はもう夢の世界に旅立っている。
疲れきった、祐一の前には美坂姉妹が立っている。特に香里は怒っている事が良く解る。
「よくも私を、騙してくれたわね……」
「よくもって、僕は騙してないよ……」
「その責任は取ってもらうからね。」
「だから、僕は騙してないってば。」
問答無用とばかりに香里が言い放つ。
「大きくなったら私の義弟か栞の義兄さんになりなさい!」
祐一と栞は何のことだか分からずにぽかんとする。栞は意味が解ったのか体をくねくねし始めた。
「な、何の事か良く分からないけど、努力はするよ。」
祐一はそう口にした。香里はそれに対して満足そうに頷いた。
「えぇ、大きくなったら責任を取るのよ。」
10時過ぎにようやく祐一は解放されて、美坂家は自分の家に帰っていった。祐一の長い一日だった。
災難とは、続く時は続くものである。説教は自業自得の事だからしょうがないが、親の趣味とは避けれるものではない。
それが特に、子供を巻き込むものであれば。祐一の受難は、朝から始まっていた。彼が起きたときの台詞がこれ。
「な、な、なにこれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
近所迷惑なドラの音でも起きない名雪が驚いて起きるくらいの叫び声だった。起きたら脱げない服を着ていて、
しかもそれが祐一君の嫌いな、女物の服。それは人形に着せるような可愛い服である。ついでに頭にはリボンも付けられている。
寝ぼけ眼で部屋から出てきた名雪を無視して、そのままリビングに直行する。リボンだけでも外そうと頑張るがそれすら無理だった。
「あら、おはようございます。」
秋子が、いたずらに成功した子供のような笑顔で祐一に挨拶する。
「おはようございます。」
こんな時でも、ちゃんと挨拶してしまう自分がちょっと恨めしい祐一君だった。
「母さん知りません?この服をどうにかしたいんですけど……」
「とりあえず、自分の姿を確認してからのほうが良いですよ。」
この家の持ち主である、秋子にそう言われてしまっては一度確認するしかない。しぶしぶ、洗面所に確認しに行く。
「うわぁ……」
自分の姿を確認して頭が痛くなった祐一だった。
「こんな事なら見ないほうが良かったよ……」
鏡に写っていたのは、可愛い女の子だった。元の祐一の面影が少ししか残っていない。そこへ、洗面所の扉を開けて名雪が入ってくる。
「うにゅ?あなた、誰?」
寝ぼけているとはいえ、祐一と認識されないのはちょっと悲しかった。
「……祐一だよ……」
「え゛!?」
名雪が驚いている間に、すばやく洗面所を出てリビングに行く。そこでは秋子と有夏が、ハイタッチをしていた。
「かあさん!この服何とかして!」
殆ど半べそだった。しかしそれを見ても、有夏達の嬉しそうな顔は変わらない。
「ごめんなさいねぇ、その服はね、秋子の能力で作ってあるから私には脱がせないわ。」
「安心してください。一日経てば脱げますから。」
その言葉に祐一は言葉を失った。そして自分を取り戻したときに発した言葉が次の台詞。
「学院にどうやって行けば良いのさ!こんな姿、誰かに見られたら恥ずかしくて、お婿にいけない!!」
その台詞を残して、祐一は家を飛び出した。
「あの子、どこかずれているわねぇ……それに今日は学院休みなの知らないのかしら?」
「追いかけなくて良いんですか?」
「大丈夫よ。そのうち帰ってくるし、そっちのほうが面白いから。」
祐一は、学院が休みなのも知らずに、誰にも会わないであろう場所を探して移動を開始した。まずは、公園である。
「この時間なら、もうみんな学院に向かっているよね。」
意識が考えに集中していたので、前から来る人影に全く注意を払わなかった。そして、衝突して尻餅をつく。
ぶつかった相手も注意が散漫だったらしく、尻餅をついたこちらに手を差し伸べている。
しかし祐一はその人の顔を見て、焦った。北川だからだ。出来るだけ顔に出さない様にして対応する。
「すまない。余所見してた。大丈夫か?お嬢ちゃん」
手を取って立ち上がり、無言で首を縦に振りそのばを退散する。
「あ!おい!」
声をかけられているが、そんなもの無視して全力で走る。
「あいつの顔どこかで見たことあるような……それにしても可愛かったな……」
そんな感想を漏らしながら、北川は走り去っていった祐一の背中の方角を見ていた。結局、北川は祐一だとは気がつかなかった。
祐一は必死だった。もう既に、家族以外の知り合いに顔を見られているからだ。
「学院は駄目。公園も駄目。そうだ。あそこに行こう。」
祐一はあゆとよく遊んだ、あの樹のある場所に向かって歩き出した。知り合いに会うとは知らずに。
その樹の近くに行ったときに、祐一は先客に気がついた。あゆである。幸せそうにタイヤキを頬張っている。
向こうが気がつかないうちに逃げようとしたが、そうは問屋が卸さなかった。
「あ……祐一君、か、綺麗になったね。」
二匹目であろうタイヤキを手に持って、祐一に話しかける。しかし祐一は急いで回れ右をして脱兎のごとく逃げ出した。
「うぐぅ……祐一君、すごく可愛くなってる……」
可愛くなっていた、祐一に対して軽く嫉妬したあゆだった。
あゆって友達いないのかな?っと現実逃避しつつ、次の避難場所を考える。
「この時間なら、商店街に行っても大丈夫だよね?」
まだよく知らない商店街を辺りを見回しながら、ゆっくりと歩く。商店街は失敗だったと、祐一は痛感した。
なぜか知らないけど、回りから注目されているのが分かる。まだ散策したかったけど、恥ずかしいので商店街を後にしようとした。
商店街を抜けようと路地に入る。その先に見知った三人組が歩いてきた。そこで回れ右をする。しかし、運命は過酷だった。
「祐一!何でこんな格好しているのかな?」
舞から恵が飛び出てきて祐一のリボンを握っている。その顔はかなり嬉しそうだ。
「……恵、勝手に出てこないで。騒ぎにならなかったから良かったけど、注意して。」
「はいは〜い。分かりましたよ〜だ!」
舞に向かって器用にアッカンベーをする恵。舞の堪忍袋の緒が切れかかったが、人の前で切れるほど、理性が無かったわけではなかった。
「……恵、小さい子をいじめちゃ駄目。」
舞から見たら、知らない女の子のリボンを握っている恵は女の子をいじめている様だった。
「この子、祐一だよ?」
「…………恵の嘘には騙されない。それに祐一は男。」
「あぁ〜、そっかぁ〜、舞の祐一への感情は”LOVE”じゃなくて”LIKE”なんだね!」
舞の片眉が跳ね上がる。そこへ、佐祐理が会話に入った。一弥は大きな買い物袋を抱えて前が見えないみたいだ。
「恵、嫌がっているその子を放してあげましょう?」
「……そう。その子かわいそう。」
「分かったよ。佐祐理。」
恵はリボンを離して、祐一の肩をしっかりと押える。祐一は声を出さすに必死に抵抗した。しかしそれは無駄だった。
勢いよく、舞達の居る方向へ向かされる。祐一はまたも半べそだった。
「はえ〜〜〜。可愛い子ですね?」
「…………祐一?」
舞のその言葉に、恵がにんまりと笑う。佐祐理は何の事だか解らず困惑の笑みを浮かべてその場に立っていた。
「姉さん。とりあえず、ここじゃなくて場所を移しましょう。」
「あはは〜。そうですね。じゃあ喫茶店にでも入りましょうか。」
そうと決まれば、佐祐理を先頭に百花屋に向かって歩き始める。祐一は舞と恵に両脇を固められて歩いている。
外から見れば、仲の良い姉妹に見えただろうが、祐一の心の中は果てしなく土砂降りだった。
場所は百花屋。テーブル席に着いている。祐一の隣は佐祐理と一弥。その対面には舞と恵が座っている。
「舞ってば、祐一がちょっと姿、変えただけで解らなくなるんだもん。」
祐一は解らないほうが嬉しかったが、声には出さなかった。舞達は祐一そっちのけで口喧嘩している。
「はえ〜〜、祐一さんはそんな趣味だったんですね〜、言ってくだされば協力しましたのに。」
「ち、違うよ!母さん達が無理やり着せたんだよ……」
ここだけは精一杯否定しておかないと、後で大変な事になると祐一は感じている。
「声は祐一君ですね。」
今まで何のことか分からなかった一弥がようやく話を飲み込めたみたいだ。祐一としては飲み込んで欲しくは無かったが。
「そんな事で解らなくなるなんて、舞の気持ちもたかが知れてるよね〜!」
路地から浮かべている笑みのままで、飲み物に手をつける恵。舞は両肩を震わせて、それを見ていた。
「……祐一は気がついて欲しくなかったから、気がつかない振りをしてた。」
苦し紛れに、舞はそういった。それを解っていたかのように恵が、舞の路地で祐一の顔を確認したときの様子を真似て舞に見せる。
それは、他から見てもまさにその時の舞だった。どこかで女優賞が取れるんじゃないか?と言うほどの演技だった。
舞は、その演技を見てから、顔を下に向けて、両肩を怒りで震わせてた。完全に恵に言い負かされている。
佐祐理はそれを飽きずに見つめていた。もちろん止める事はしない。そんな時、一弥が小さな声で祐一に話しかけた。
「祐一君も苦労しますね。僕も小さい時にありましたよ……」
「そうなんだ……」
「あはは〜、どうしたんですか?二人とも。」
何かを感じたのか、佐祐理が舞達から注意をこちらに向ける。
「「何でもないよ(ですよ)」」
二人の声は、重なっていた。その声は若干疲れていた。
「姉さん、二人を止めなくて良いのですか?」
話を逸らすように、一弥が舞達のほうを呆れた顔で見つつ、言った。
「あはは〜、やっぱり止めないといけないですよね?」
額に大きな汗マークを浮かべながら、佐祐理は答える。周りのお客さんたちは、舞と恵達の喧嘩を見て、引いていた。
結局、舞達の喧嘩が元で、百花屋を出る事となる。祐一は、その買い物につき合わされた。
その後の買い物は騒がしく、買い物では無くて殆ど冷やかしになってしまったが。それでも、楽しいものだった。
祐一はこの格好じゃなかったらもっと楽しかっただろうになぁとか思っている。
殆どの知り合いにこの姿を見られているので、半分やけになっているのが、正確な心情だ。
日が暮れるまで買い物は続き、家に帰ってきたのは日が沈んでからだった。
あとがき
次から新しい、話が始まります。今度は、まだ出ていない人たちが主役のはず……です。
今回は、話と話の中継ぎと言うことで。リクエストに有った、祐一君、女装イベントです。
感想とアイディアをくれた夜想華さん、ありがとうございました!
頑張りますので、見捨てないで見守ってください。ゆーろでした。
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