Jack-O'-Lantern プロローグ  チェシャ猫は嗤う

漆黒の中に浮かぶそれが、シナプスを食い破り俺を侵食していった。 祐一の呪文は適当。ただし、英霊召喚用のものではない、と弁解 「――――源に法れ二又の風。因果に透せ八股のオロチ。七つの波と十二の焔に抱かれよ」 月が背を撫ぜた。 漠然と浮かび上がるビジョンを文字と化し、故もなく疑問は霧散しそれを紡いだ。 「望むは峰、望むは尾、望むは頂」 体中を、極彩色の線が細く、長く、狂ったように駆け巡った。 様相は盤石。体中のあらゆる骨という骨を粉微塵にされたと錯覚するほどの激痛が俺を襲う。 「果てとて望むは在りし御姿いにしえ」 フィルターがかった奥に、それが垣間見える。 高みに片手を突っ込んだ瞬間。相沢祐一を相沢祐一足らせる何かが、大声を上げて叫んでいる。 「――――――名をち、誓う」 貴様の在り方はそうではないと、身体が精神に訴えるのだ。 出来損ないですらなく、焦がれた影を追う資格などはない、この身はただ虚ろうのみ。 だが、固めた足場は既に出来た。 「反故は許されず、                          糸は紡がれ、         籠目の紋様に綾を彫り、                         此処の瞳に、                                       幾年に尽きた導を其の右腕に」 陵辱は本望だ。 過ぎた力を嘲るならば嘲ればいい。だが、やれることがあるのならそれをやるだけだ。 その選びをたとえ世界に笑われようようと、ならば世界など見切ってやろう。 「血の贄、水の箱、凪がるる狂乱に櫃」 脳髄は絶叫を、四肢は悲鳴を、周りの空気すらも哀願した。 痛覚そのものを弄ばれているのではないか、と愚痴りたくなる。痛いなどではすまない、傷み。 イメージが黒塗りで遠ざかる。待ってくれ……後、もう少しのはずなんだ。 「鉄鎖の縛り、初音の囀り、なれば固き結び目に誓約を」 何かが途切れる音が、したような気がした。 背に巨躯とすら思えるほどの真っ白な掌が当てられ、押される。そんな愚に尽かない世界が、俺の中に展開された。 ああ、だが、どうだろう。 後半歩で、届いたというのに。 黒塗りの文字は全てを食い潰し、先には届かない。これ以上の顛末は相沢祐一には存在しない。 ここが、俺の限界――――――。 ――――――――それを、けれど俺は赦しはしない。 「いいから……」 届かないのなら届かせる。 そこにないならどこからでも引っ張ってきてやるとも。 反射で伸ばした腕は虚空を掴むだろう。だが、それでいい。たとえ虚空であろうとも、俺はそいつを掴んでやった。 「さっさと、出て来いッ!」 途端、 俺は太陽が撃墜してきたまでの光に足をすくわれ、 淡いパステルカラーのそれが塵となり、 また世界は闇色を増し、 「――――――――今晩は、マスター。良い月ね」 そいつは、そこにいた。 俺の体験したこの一刻のことなど、些細過ぎて脳裏にすら置くこともないと言いたげに。 漠然とした、薄い笑顔すら浮かべて。 ――――――それが、一般人もどきの俺と、セイバーもどきのこいつとの、どこか可笑しな出会いだった。 あとがき 意味不明、支離滅裂、暗中模索なSSのプロローグ、お楽しみいただけないかと存じ上げます。 いえ、解っているのですよ。何がなんだかわからない、そう言いたいですよね? 曖昧模糊ここに極まり。主人公は相沢の祐一くんです。一応文中での名前は出ていますがね、一度だけ。うん。一度だけ。 セイバー、という呼称から(今の年代の人は)お分かりでしょうが、fateです。ええ、誰が何を言おうと。 所謂クロスオーバー。向こう風味で言うならば、平行世界での「在りえたかもしれない世界」のお話しです。 冬と月の送る物語、序曲は序曲らしく盛り上げるための布石にしておきたいものですね。 まあ、その荷がこれでは重過ぎるようですが。 はてさて、いらん口を挟みすぎましたようなので、ここらでお開きにしておきたいかと。 一応「創る人」も「あかい悪魔」も、その他大勢の方々が出てきますよ。 が、作者は未だにホロゥ未経験者ですので、そこで明らかになったオフィシャル設定との差異があればどしどしどうぞ。 でわでわ。
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