Fate/snow night 雪降る街の幻想曲





二章 アインツベルンの魔術師





 ――――圧倒的なまでの存在感。ただ、そこに『在る』だけで息が詰まりアレが放つ威圧感で押し潰されそう

になる。白い少女の横に護衛をするようにして立つその姿は、まさしく従者サーヴァント

 だが、そのサーヴァントの目にははっきりとした理性の光が映し出されていない。この凶悪的な威圧感と理性

なき瞳……これから導き出されるこのサーヴァントのクラスは……



「……バーサーカー」



 恐れと驚愕の入り混じった呟き。それが遠坂の口から発せられる。

 いや、彼女だけではない。俺と士郎、セイバーまでもが目の前に聳えるように立ち塞がっている異形の存在に

目を見開く。狂戦士、という名を冠するクラス・バーサーカー。それが俺達の目前に悠然と立っている。



「こんばんは、赤い髪のお兄ちゃん。また会ったね」



 少女はその場に似合わぬ、可愛らしい顔で笑いながら俺達―――士郎に向かって話しかける。自然、俺達の視

線は士郎へと向かう。



「ちょ、衛宮君。あの子と知り合いっ?」



「え……あ、前に……一度すれ違ったあの子……?」



 呆然と銀髪の少女を見つめる。自分の事を覚えていない士郎の様子に、少女は一瞬むっと不満気な表情をする

がすぐに笑顔へと戻る。しかし、その笑顔は温かい笑顔ではなく冷たくこちらを敵として認識しているような笑

顔。

 あの小さい、俺達よりも幼いあの少女も、俺達と同じ魔術師……そして、聖杯戦争のマスター。バーサーカー

のサーヴァントを従える魔術師。



「シロウ、下がってください……!」



 セイバーが士郎を庇うように前に立ち、雨合羽を脱いで不可視の剣を構える。霊体化していたアーチャーも実

体化し、己もマスターを護るように赤い外套をはためかせ立つ。

 サーヴァント組の迅速な行動に対し、俺達人間側三人は動けない。あまりに圧倒的な威圧感と恐怖を与える存

在が至近距離にいる事が、恐怖の感情を焼き切り肉体を凍りつかせる。俺はその硬直を解く為に気合一閃、纏わ

りつく恐怖を跳ね飛ばす。

 そして悟られないように令呪を通してランサーへと念話を飛ばす。



(……ランサーっ!)



(マスター、どうした……!?)



 すぐに反応があった事に安堵する。しかし、そうゆっくりもしていられない。訊きたい事は山ほどあるが、今

はこの現状を改善させる事が最優先だ……!



(今すぐに新都郊外の教会下まで来てくれ! バーサーカーが現れた!)



 驚きの感情が念話を通して俺に伝わってくる。その後、すぐにランサーの怒声が俺へと響いてくるが文句は後

で訊いてやるから今すぐに来いと叫び返す。それを気にランサーとのリンクが切れ、令呪から熱が引く。

 少女は優雅にスカートを両手の指で摘み上げ、一礼しながら、



「初めまして、リン、お兄ちゃん達。私の名前はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン……って言えば分

かるでしょ?」



 最後に微笑を浮かべ、こちらを見た。少女の名乗った姓を聞いた遠坂の表情が強張る。



「アインツベルン……!」



 ――――アインツベルン。言うまでもなく、その一族も魔術師の一族。だが、ただの魔術師一族ではなく、聖

杯戦争を基盤を創り上げた家系の一つ。それがアインツベルンという姓が持つ意味だ。

 遠坂の先祖も聖杯戦争創立に関わっており、魔術師としても優秀であったがアインツベルンもそれに引けを取

らない、もしくはそれよりも優秀な魔術師が多いと聞く。こんな年端もいかないような少女が聖杯戦争のマスタ

ーで俺達の敵。

 ……正直、信じられない。悪い夢でも見ているようだ。



「ふぅん……一人は知らないお兄ちゃんみたいだね。まぁ、別にいっか」



 俺の方へと視線をやるが、すぐに興味を失ったように士郎と遠坂へと向き直った。傍に付き添うように立つ、

二騎のサーヴァント……セイバーとアーチャーを見て、思案するような表情になる。



「サーヴァントが二騎か……。ちょうどいいわ、ここで二騎とも倒してあげる」



 白い少女、イリヤスフィールはその顔をニヤリと不敵な笑顔へと変える。握り締めてしまえばすぐに折れてし

まいそうな小さな手を、ゆっくりと振り上げ……



「―――バーサーカー、やっちゃえっ」



 子供が蟻を踏み潰すのを躊躇わぬ様に、無邪気にそう自身のサーヴァントに命令を下す。バーサーカーの理性

なき瞳に、一つの意志が生まれる。

 それは、俺達という己のマスターの敵となる障害の排除……純然たる殺意。



「■■■■――――!!!!」



 辺りを揺るがすように狂戦士が吼え、跳躍する。その衝撃で道路が陥没、整えられていた道は破壊され無残な

姿となった。



「くっ!」



 襲い掛かるバーサーカーを迎撃せんが為、セイバーが瞬時に疾走する。鎧が軋む音が耳に聴こえ、一瞬にして

離れていく。



「アーチャー!」



 遠坂もアーチャーに指示を送り、彼の尤も得意とする遠距離戦の間合いまで距離を取らせる。その間にセイバ

ーは爆風のようにバーサーカーへと疾る。上空から自然落下してくるバーサーカー目掛けて、セイバーの斬撃が

迎え撃つ。

 だが、バーサーカーは手に持った巨剣を盾の様に使いその一撃を防ぐ。着地の衝撃で大地が揺れ、道路が罅割

れる。セイバーは攻撃を止めない。烈火怒涛……正にそう言い表す事しか出来ない攻撃が、バーサーカーを絶え

間なく襲う。

 夜の闇に耳障りな剣戟音が響き渡る。セイバーの不可視の剣、バーサーカーの岩を削り取ったかのような巨大

な剣が何度も何度も触れ合っては魔力の火花を散らし、二人の体を一瞬赤く照らし出す。

 接戦を繰り広げるセイバーとバーサーカー。体の大きさ、力、魔力供給などに大きな差が出ているのか、セイ

バーは微かに押され気味だ。そのセイバーを援護する為に、バーサーカーの背後上空から赤い外套を纏ったアー

チャーが、手に弓と矢を持ち狙いを定める。



I am bone of my sword我が骨子は 捩れ狂う。――偽・螺旋剣カラドボルグU



 何かの詠唱と共に、捻れた剣がバーサーカーへと迫る。当たれば確実に重傷を負うほどの攻撃。風を切り、凄

まじいスピードで捻れた剣はバーサーカーを貫かんとする。

 しかし、その攻撃を事もあろうにあのその狂戦士バーサーカーは、



「■■■■■―――――!!!」



 振り向きもせず、セイバーと打ち合わせていた巨剣を背後へと振り回し、叩き壊す。捻じれた剣を破壊したそ

の一瞬の隙をついたセイバーの攻撃すら、バーサーカーは瞬時に巨剣を振り回して弾き返した。……出鱈目もこ

こまで来ると感心してくる。



「ちっ……! 食らいなさい! durchbohren貫け Eiszapfen氷柱 vollenden完全 Zerstorung破壊――!」



 遠坂が手にした宝石三つを解き放つ。一つ一つが巨大な氷柱となり、バーサーカーの体を貫く為に疾る。セイ

バーとの剣戟を続けるバーサーカーの側面から、遠坂の放った魔術が迫る。それに気付いたセイバーが剣戟を止

め、バックステップでバーサーカーから離れた。そして、魔術が直撃。

 ―――――だが、遠坂の放った魔術は全て、バーサーカーには何のダメージを負わせる事は出来なかった。直

撃した筈の氷柱は全て、粉々に砕け散る。バーサーカーの肉体には掠り傷一つつかず。



「な、何よあれ! まさか対魔力!? バーサーカーには対魔力スキルは無い筈じゃ……」



 掠り傷どころか無傷のバーサーカーの姿に、遠坂は驚きを隠せない。対魔力とは違う、あれは……



「……違う、あれはただ純粋に効いていないだけだ……!」



 士郎の言う通りだ。奴は肉体的な能力だけで、遠坂の魔術をかき消しやがったんだ……! 今の遠坂の魔術は、

衛宮邸の前でセイバーを攻撃した時と同じほどの魔力を込めていた。それを対魔力もなしに身体の強度だけで弾

き返すなんて、反則にも程がある。



「ふふっ、どうしたのリン。そんなちっぽけな宝石を使った魔術じゃ、私のバーサーカーには傷一つ付けられな

いわよ」



 バーサーカーのマスターである少女、イリヤスフィールは余裕の笑みを浮かべて俺達を見つめている。あれは

自身のサーヴァントであるバーサーカーに、絶対的な自信と信頼を置いている証拠だ。それほどまでに、あのバ

ーサーカーの戦闘力は高いというのか。



「くっ……ふざけんじゃないわよ。さっきのはかなり魔力を注ぎ込んだサファイアとアクアマリンまで使ったっ

てのよ……? それが『ちっぽけ』ですって? 私の宝石代返しなさいよ!」



 高かったのに、と遠坂は地団駄を踏む。この状況で良くそんな事が考えられるなと、感心する。俺はセイバー

とバーサーカーが鬩ぎ合っている様を、ただ見ている事しか出来ない事が悔しい。下手に俺がバーサーカー相手

に突っ込んで行っても、逆にセイバーの足手まといになりかねない。

 何も出来ない、自分が嫌になる。俺の横で、体験した事のない恐怖に震えながら戦いを見ている士郎も、恐ら

くは俺と同じ事を思っているのだろうか。

 セイバーはバーサーカーと鬩ぎながら、移動を続け先程訪れた教会の外人墓地で再びバーサーカーへと斬りか

かって行く。



「はぁぁぁぁっ!!」



 自らを鼓舞するようにセイバーは声を張り上げ、さらに剣戟のスピードを上げていく。斧剣と不可視の剣がぶ

つかりあって巻き起こる衝撃風が、二騎のサーヴァント周囲の地面を削り取る。



(くそっ……ランサーはまだか……!?)



 焦りが心中を支配する。アーチャーの放つ弓矢は、正確にバーサーカーの急所全てに向けられているが完全に

無意味。あの捻れた剣を撃ち込もうとも、それは迎撃されて終わりだ。もし軌道が少しでも外れれば、セイバー

に攻撃が当る危険性もある。

 アーチャーに出来るのは、バーサーカーの足止めと牽制。俺達に出来る事など、何一つない。無力さに苛まれ、

苛立ちが募る。先程から、うるさいほどに心臓の鼓動が俺の耳に聴こえてくる。その鼓動がさらに激しさを増し、

次第にそれはバーサーカーに対する退魔衝動へと変化していく。



ドクン!



 ―――何も出来ない事などありはしない。何を恐怖する必要があるのだろうか。今まで、死ぬような目に遭う

のは珍しい事ではなかった。



ドクン!



 自分はいつでも、死と隣り合わせの場所で生きていたのではなかったのか。死徒と殺し合い、戦う事に高揚感

を覚えていたのは何故だ。戦う事に、何かしらの喜びを見出していたからではないか。



ドクン!



 このままただ圧倒的な力の前に、殺されるのを待っているのか。セイバーがやられれば次はアーチャー、その

次は俺や士郎、遠坂が殺される。そうすれば、俺達に関わりあう人全てが悲しむ事になる。

 ――――そんな事は、許されない。許されてはならない。



ドクン!



 身体の底に眠る俺のもう一つの人格……『七夜』を呼び起こし、『相沢祐一』としての俺の意識は入れ替わる

ようにして暖かい場所へと消えていった。



[interlude3−4]



 一撃、二撃、三撃とセイバーの攻撃が放たれていくが、その全てはバーサーカーに手傷一つ負わせる事が出来

ない。セイバーの能力も相当高いのだが、それ以上に相手のバーサーカーの能力が異常なほど高かった。



「無駄よ。私のバーサーカーは不死身。何せギリシャの英雄だからね」



 銀髪の少女、バーサーカーのマスター……イリヤスフィールから聞かされた言葉に反応するのは凛。



「ギリシャの英雄!? まさか……」



 不死身に近い肉体……そして、ギリシャの英雄。凛が知る限り、この式に当て嵌まるギリシャの英雄はたった

一人しか存在しない。主神ゼウスの血を引く、神の子。



「そう、あれはヘラクレスって言う魔物。いくらセイバーが強くても勝つのは無理よ」



 その言葉に、士郎はあの化け物……セイバーと激戦を繰り広げているバーサーカーを見る。理性を失い、ただ

の人形と同じになりながら狂っているとはいえ、英雄としての能力は衰えてはいない。

 ―――ヘラクレス。

 エウリュステウス王の出した十の難題を全て成し遂げ、不死を手に入れたと言われるギリシャ最大の英雄。ギ

リシャ神話の中で、尤も有名でありポピュラーな英雄だ。その知名度でも神話でも有名なヘラクレスが、バーサ

ーカーのクラスに納まっている。

 本来、バーサーカーとはさして知られておらず能力的にも弱い英霊を狂わせる事によって能力アップを図るク

ラスだ。しかしその英霊が持つ固有能力や宝具を使えなくなるというデメリットが存在し、制御に莫大な魔力を

消費する為に過去、バーサーカーのマスターとなった魔術師は自滅していった。

 そのバーサーカーのクラスに、ヘラクレスという強力な英霊を召還し完全に制御しているこのイリヤスフィー

ルという少女の、魔術師としての能力の高さが伺える。



「はぁっ!」



「■■■■■―――――!!!」



 剣戟音が教会の墓地に響き渡る。イリヤスフィールの手によって人払いと消音の結界が張られている事により、

一般人が巻き込まれる事はない。少し離れた場所からアーチャーが尚も弓矢を放ち続けるが、まったく意味を為

さない。相変わらずやりにくい相手だ、とアーチャーは内心舌打ちする。

 こうなれば、自分の宝具を使ってバーサーカーを撃退するべきか……その考えが脳裏に浮かぶ。



「無駄なのが分からないのかしら……」



 イリヤスフィールは勝てるはずないのに、と小さく呟く。そろそろ、セイバーとバーサーカーの戦いを見るの

にも飽きてきた。ちまちまと遠距離から攻撃してくるアーチャーにもうんざりしてきていたところだし、この辺

りで幕を引こうかという結論を出す。



「バーサーカー、もうやっちゃ……」



 生前戦場を駆け抜け研ぎ澄まされた聴覚が、イリヤスフィールの声を捉える。ちっ、とアーチャーは舌打ちを

声に出し、捻れた剣をもう一度弓に宛がう。隙さえつけば、自らのこの宝具でアレの命の“一つ”なら持ってい

ける筈だ。

 限界まで弓を引き絞り、確実にこの一撃を当てられるべき場面を手繰り寄せる為に、全てをセイバーの一挙一

動へと任せる。が―――――――



「…御託は、それで終わりか?」



 ぴたりと、少女の声が止まる。止めを刺すべく狂人に命令をしようとした瞬間、突然生まれでた殺気に、少女

は凍りつき激戦を繰り広げていたセイバーはバーサーカーから距離を取り、バーサーカーは少女に向けられた殺

気を感知。マスターを護るべく瞬時に傍へと移動した。

 アーチャーも宛がっていた矢から力を抜き、状況の把握を最優先に努める。



「俺達はな、こんな所で死ぬわけにはいかないんだ」



 その殺気を放っていたのは、祐一だった。ただ、違うのは祐一の纏う雰囲気と左右の眼の色が違うと言う事だ

け……。セイバー達サーヴァントが放つほどではないが、冷たく鋭利な殺気が滲み出ている。



「祐、一……?」



 様子のおかしい祐一に、士郎は戸惑う。普段の祐一とは掛け離れた冷たい目。敵対するものは全て排除する、

とも言わんばかりの殺気。今までの祐一が日常での顔だとすれば、これが『こちら側』……魔術師、否、退魔師

としての相沢祐一なのだろう。

 我知らず、その目に呑まれそうになり士郎は唾を飲み込む。だが、士郎の考えは半分正解であり、半分間違い

である。



「セイバーっ、アーチャーっ! 俺が撹乱をするからその隙にバーサーカーを!」



 懐から『七ツ夜』を取り出し、逆手に構える。バーサーカーは少女を庇うように一歩前へ進む。次の瞬間、祐

一はバーサーカーの下へと疾走した。



「■■■■■――――――!!!!」



 狂人が吼え、祐一を叩き潰す為に巨剣を勢いよく振り下ろす。その巨剣が疾走する祐一を捉え、回避不能の位

置で地面を抉る。

 物凄い衝撃と共に、地面が削れる。しかし、削れた地面には祐一の肉塊どころか腕一つありはしない。



「はぁっ!」



 その隙を突き、セイバーがバーサーカーに斬りかかった。再び、二人の剣戟が始まる。が、セイバーは二、三

度バーサーカーと打ち合うと即座に離脱。次には、アーチャーがほぼ同時に放った八つの矢が襲い掛かる。

 その攻撃は無効化される。しかし、アーチャーは舌打ちする事なく口を満足げに歪めた。バーサーカーの頭上

に消えた祐一が現れる。アーチャーの攻撃は囮で、祐一の襲い掛かるのを悟らせない目的の為に放たれたのだ。



―閃鞘・八穿―



 頭上から放たれる七夜基本技の一つ、『閃鞘・八穿』でバーサーカーの肩を斬りつける。だが、その攻撃もバ

ーサーカーには効果がない。当然だ、誰にでも分かる。あんな化け物に、人間が太刀打ち出来る筈が無い。

 地面に着地した祐一はすぐにバーサーカーから距離を離す。姿勢を低く、上体をクラウチングスタートをする

ような位置まで落とし、『七ツ夜』を握りなおす。その間にも、セイバーがまたもやバーサーカーと打ち合い続

ける。



「くっ……」



 先程の『閃鞘・八穿』で斬りつけた時の衝撃で、右腕が痺れている。それを左腕で抑えつける様にして握る。

それで右腕の痺れは取れた。もう一度、別の技でバーサーカーへと攻撃を試みる為に、祐一は走り出そうとする。



「■■■■■■――――――!!!!!」



 それを、そうはさせるかとも言わんばかりに、バーサーカーは剣戟を繰り広げていたセイバーを無視し地面を

蹴り潰して、祐一のいる所まで一気接近し攻撃を繰り出す。

 理性を失っているというのに、なんという決断力の速さであろう。爆風のように襲い掛かってくるバーサーカ

ーの姿に、はっきりと祐一は恐怖を覚える。その恐怖を払底し、己の持つ“力”を使う。



「『歪曲ディストーション』、『転移アポート』」



 回避行動を取らず、祐一は何も無い空間に『七ツ夜』を振るい何かを呟く。一瞬の後、祐一の姿が消え、そこ

にバーサーカーの一撃が振り下ろされた。



『なっ……!?』



 走り出していたセイバー、士郎に凛、イリヤスフィールが驚く。何故なら、祐一はその場から動いてすらいな

い。それが、ただのナイフを一閃しただけで消えてしまったのだから、当然だろう。

 見るも無残な姿になった地面に、祐一の姿がいないのを確認したバーサーカーは一時的に動きを止めてしまう。

祐一は消えたままで、影も形もないどころか気配すらない。そのバーサーカーに向けて、アーチャーは今一度螺

旋剣を放つ。

 狂化によって鈍っている直感が、その飛来する螺旋剣の存在を感知。即座に迎撃を行う。固まっていたセイバ

ーもすぐに我に返り、バーサーカーに肉薄する。

 剣戟を繰り広げるバーサーカーの背後に突如、祐一が現れる。何もない空間から、ゆらりと陽炎のように現れ

た祐一は地面を蹴り上げバーサーカーの背中に蹴りを放つ。



―閃走・六兎―



 六つの蹴撃がバーサーカーの上体を襲うが、それも左程ダメージを与えられていない。空中に滞空している祐

一目掛けて、裏拳の要領でバーサーカーは剣を振るう。空中では体勢を立て直す事は出来ない。

 今度こそ、バーサーカーの攻撃が祐一へと直撃――――する事はなかった。振り向いた瞬間に、祐一の姿は空

中に存在せず、完全にがら空きとなったバーサーカーの懐へセイバーが迫る。防御は間に合わず、かといって回

避も既に不可能。



「はぁぁぁぁぁっ!!」



 セイバーの放つ不可視の一撃が、バーサーカーの巨体を切り裂く。灰色の鋼の肉体が、袈裟懸けに斬られそこ

から大量の血液が吹き出る。確実に致命傷となった一撃。

 バーサーカーの巨体がぐらり、と揺らぐ。破壊の限りを尽くすと思われた、狂戦士のサーヴァントはゆっくり

と地面へ体を横たえる。巨体が地面にぶつかり、轟音が辺りに響き渡る。



『…………』



 士郎と凛はその光景に、唖然とするしかなかった。それは無論、バーサーカーのマスターであるイリヤスフィ

ールも含まれている。バーサーカーを打倒したセイバーにではなく、あのバーサーカーに挑んだ祐一の行動に対

して。

 セイバーは倒れたバーサーカーから離れ、マスターである士郎の下へと戻る。そこに祐一も合流する。その顔

は酷く青白く、息も荒く滝のように汗があふれ出ていた。祐一の左眼だけが、紫色の光を放って幻想的だ。

 ふぅ、と小さく疲れたように溜息を漏らし、祐一は眼を閉じる。後に眼を開いた時には、その左眼は紫色では

なく元の黒眼に戻っていた。

 もう一度眼を瞑る。がくん、と膝から力が抜けたように祐一の体が倒れる。地面に倒れかけた祐一の体を、士

郎が慌てて抱きかかえた事により激突だけは避けられた。はぁ、はぁとうなされたようにぐったりとしている。

 意識がはっきりしていない様子の祐一を、士郎と凛が支えあって立ち上がる。ぐったりしている祐一の体は、

通常よりも重いと幻視させられる。



「……何者なの、人間の癖にバーサーカーと戦って生き残って、一回殺すなんて」



 目の前の現象が信じられない――それも当然だろう――といった表情のイリヤスフィールは、畏怖と驚愕の声

を上げる。さらに、その瞳には祐一に対する強い興味の光が見えた。

 対して、凛は不可解な表情をする。別段、イリヤスフィールの言う事には何も異論はない。凛とて、祐一の非

常識さが完全に理解できているわけではない。ただ、彼女の言った『バーサーカーを一回殺した』と言うおかし

な言い回しを怪訝に思っただけだ。



「一回? 何言ってるのよ、あんたのサーヴァントは死んだわ。これであんたの負けは……」



 完全、と口にしようとした凛に切羽詰った声が掛けられる。



「凛、下がれっ!」



 アーチャーは凛と抱えられていた祐一、セイバーは士郎を腕に抱きその場を即座に離脱する。次の瞬間、そこ

に『死んだ筈』のバーサーカーの一撃が放たれた。

 サーヴァント二人がすぐに祐一達を抱えた為、その場に無残な死体が出来上がることはなかった。しかし、今

の士郎と凛にはそれを感謝する余裕はない。二人の視線は、土煙へと向かっている。

 土煙が晴れる。そこに佇むのは狂った英雄、ヘラクレス。完全に沈黙したと思われていた怪物は、致命傷であ

る傷を受けても何事もなかったかのようにそこに佇む。そのとても現実だとは思えない光景を、二人は見つめる。



「無駄だって言ったでしょ? 不死身だって。バーサーカーの宝具は十二の試練ゴッド・ハンド。蘇生魔術の重ね掛けをしてい

るのよ」



 先程、バーサーカーのクラスに納まった英霊は宝具を使用する事が出来ないと言った。それは、宝具にも真名

がありその名を開放口にするによって発動を可能とする。ほとんどの宝具が、これに該当する。

 しかし、中には真名を唱える事せずに発動する事が可能な宝具も存在するのだ。その代表が、ヘラクレスの宝

具『十二の試練ゴッド・ハンド』。死しても、命のストックがあるヘラクレスはすぐに復活する事が出来る。

 対サーヴァント戦ないし聖杯戦争では、圧倒的に有利となる宝具だ。



「蘇生魔術の重ね掛け……。そんな反則あり……?」



 冷や汗を掻きながら凛が毒づく。いくらサーヴァントとはいえ、頭を潰される心臓を貫かれるといったダメー

ジを負えば、現界が不可能となる。他に、魔力供給がなくなり魔力を失えばそれでも現界は不可能だ。だと言う

のに、目の前のバーサーカーはそれをも超越している。

 正直、そんな奴に勝てる訳がないと凛は思う。

 だが、こんな所で折れてしまえば遠坂の名折れ、ひいては自分の尊厳に関わる。セイバーは不可視の剣を今一

度構えなおし、アーチャーも弓と螺旋剣を持つ。



「祐一、しっかりしろ!」



「……くっ」



 士郎の呼び掛けに、祐一がうっすらと目を覚ます。顔を上げ、現状を理解するのに約三秒。まだランサーが到

着していない事に対し、顔を顰める。

 しかし、もうすぐそこに来ている事は確かだ。この分だと、ギリギリ間に合うといった所か。イリヤスフィー

ルは、心底楽しめたといった表情で言った。



「バーサーカー、もう殺していいわ」



 主の命令に忠実に従う狂った戦士は、幼きマスターの願いを聞き届け、



「■■■■■――――――!!!!」



 咆哮と共に、その巨剣を振り上げる。それは、当たれば確実な死を与える死神の一撃。



「はぁぁぁぁぁぁ!!」



 その攻撃を全力で迎え撃とうとする白騎士セイバー。バーサーカーとセイバーの剣が、ぶつかり合う。後数ミリという

ところで、それは―――



ドゴォォォォォォォォォォン!!!



 ―――天空から放たれた“槍”の一撃によって止められた。その衝撃で、バーサーカー、セイバー双方は吹き

飛ばされる。

 地面に突き刺さるのは『大神宣言グングニル』と言う名の神槍。



「誰っ!?」



 イリヤスフィールが槍が飛んできた方向へ振り向く。



「……答える義務はない」



 そこには魔力遮断をやめ、完全に魔力を開放したランサーが悠然と立っていた。その姿は、バーサーカーと比

べなんら遜色がないほどに力強い。漆黒の鎧、左眼に付けられた眼帯、腕につけられた金色の腕輪。



「………」



 セイバーがそれを、信じられない物を見るような目で見る。息を呑み、目を見開く。その視線に気付いたラン

サーが、セイバーへと目を向ける。セイバーの姿を認めたランサーは、意外そうな表情をした。



「――――何故、貴方が現界しているのです」



 戦慄の声色でセイバーがなんとかそれだけを呟く。不可視の剣を握る右手は、恐怖か動揺による為か震えてい

る。しかし、戦意までは失ってはおらず瞳にはランサーに対する敵意が存在していた。



「ほう、まさかまたお前が召還されていたとはな……こういう場合、十年ぶりだなセイバー、とでも言えばいい

のか?」



「戯けた事を……私の質問に答えなさい。何故、貴方が現界している?」



 お互いがお互いを知っているのは確かだろう。だが、他の面々からすれば何を言っているのかまったく分から

ない。ランサーが来たと安心していた祐一でさえ、二人を見比べて怪訝な表情を浮かべていた。

 ランサーが二体、召還されている事に関係している事だけは確かなのは分かる。



「……セイバー、知り合いか?」



 やっとの事でそれだけを搾り出す事の出来た士郎。喉の渇きが、先程までの恐怖を蘇らせる。今も尚、その恐

怖は揺らぐことなく、士郎の中に存在している。



「……知り合いと言えば知り合いでしょうか。彼は、十年前の聖杯戦争のランサーのサーヴァントです」



 なっ、と凛とアーチャーが息を呑む。凛の場合、セイバーが十年前に召還されていた事に驚いており、アーチ

ャーは自分のいた世界とさらに歴史が違っているのに驚いているのだ。そして、もう一人の人物――祐一も、自

分の知らない事実にランサーの姿をまじまじと見つめる。

 ランサーが十年前から現界しているのならば、二体のランサーの存在とマスターがいなかったランサーの状態

に辻褄が合う。だが、マスターもなしに十年という途方もない時の中を現界したままでいる事など可能なのだろ

うか。単独行動EXという並外れた固有スキルを持つランサーではあるが、それは不可能だと思われる。



「だが、貴方は前回の聖杯戦争終結の場で、私とアーチャーと雌雄を決し敗れた筈。なのに、何故貴方がここに

存在している!?」



「……そうか、お前はアレを見ずに座へと舞い戻ったのか。それならば、知らぬのも納得できる」



 セイバーの詰問にランサーは妙な事を口にし、一人で納得する。表情を苦々しそうに歪め、ランサーは自分が

現界している理由を話す。



「破壊された聖杯から漏れ出た魔力を一身に浴び、受肉させられた。ただ、それだけだ」



 告白された事実を、凛とセイバーは信じられないといった表情で聞く。その二人とは別の驚きで、アーチャー

も表情を変える。あれを浴びた者が、もう一人いたのかという驚きが彼の中を占める。

 イリヤスフィールもそれを訊いて驚愕していたが、冷徹な表情に戻るとバーサーカーを呼び戻す。祐一達の方

へと向き直り、



「何かつまんなくなっちゃった。だから、帰るね」



 遊び疲れたから家に帰る、といった子供が言うような言葉をイリヤスフィールは言い終わってから、最初は興

味を抱かなかった祐一の顔を見つめる。

 顔に浮かぶは満面の笑み。



「強いお兄ちゃん、貴方に興味が湧いちゃった。また今度会いましょう」



 優雅に一礼を残し、従者と共にいずこかへと去っていった。その場に残るのはランサーと祐一、士郎達だけ。

 地面に突き刺さった『大神宣言グングニル』に近付き、引き抜く。ぶぉんっ、と槍を振るい戦闘態勢を取り殺気を放つ。



「どうする、今ここで前回の決着をつけるか?」



「……」



 言葉は不要、言うまでもないといった感じに構えを取るセイバー。状況の不利はどちらも一緒だろうと予測。

こちらは召還の手違いか、マスターである士郎からの魔力供給が満足にされない。対して、向こうはサーヴァン

ト二騎と魔術師三人……実質は一人である。数の差があるが、それがあのランサーにとって不利となるうるのか

……自分が完全な状態でも、勝てなかった相手だ。判断がしにくい。

 アーチャーも手に双剣、陽剣『干将』陰剣『莫耶』を持ち戦う姿勢を止めない。だが、そんな二人の前に立つ

人間が一人。



「……シロウ!?」



 セイバーを庇うように立ち塞がり、ランサーを睨みつける。ランサーはそれで、立ち塞がった青年が今回のセ

イバーのマスターであると判断した。



「ほう、その少年が今回のお前のマスターか。サーヴァントを庇うような行動を取るとは……中々」



 士郎を馬鹿にするのではなく、素直に感嘆の意を述べる。サーヴァント相手に、恐怖に負けずにこのように立

ち塞がる事は容易ではない。それは敬服に値する、と士郎の事を認めた。



「シロウ、下がって! あのランサーは恐るべき力の持ち主で……!」



 その言葉にも士郎は反応しない。ただ、オーディンを睨みつけるだけだ。その眼にははっきりと、恐怖が映し

出されている。足は震え、腕も震えているというのに士郎は下がる事をしない。



「……ランサー……だったな?」



 凛に支えられていた祐一が、ゆっくりと立ち上がる。まだ足元がおぼつかなさそうではあるが、意識は完全に

取り戻したようだ。ランサーを見る視線には、後できっちりと全部吐いてもらうぞという意志が込められている。

 それに小さく、誰にも気付かれぬように溜息をつき令呪を通して祐一に了解の意を伝える。そのまま祐一は、

俺が喋ってすぐに撤退しろという命令を下す。了解の意を、また伝える。



「バーサーカーから助けてくれた事には礼を言う。だけど、今日の所は引いてくれないか。お前だって二騎のサ

ーヴァントと魔術師三人を相手にするのはマズイんじゃないのか?」



 ランサーの能力ならば今戦っても別段問題はなさそうだが、窮鼠猫をかむという諺がある。追い詰められれば

鼠でも、猫に噛みつくという意味で使われるがこの場合も似たようなものだろう。

 さらに言えば、ランサーはセイバーの強さを前回の戦いで嫌になるほど知っている。祐一の言う事にも、一理

あるのをランサーが身をもって知っているのだ。



「……確かに、そこの少年の言う通りだな。今日の所は潔く引くとするか」



 殺気を消し、槍を消したランサーは祐一達に背を向ける。後ろから不意打ちされる事もあるというのに、何の

躊躇いもなく背を向けたランサーの行動にアーチャーは一瞬感服を抱く。



「逃げるか、ランサー!」



 叱咤するセイバー。その様子にもランサーは涼しげに答える。



「逃げるのではなく、戦略的撤退と言え。自身に不利な状況で戦う程、私は愚かではない。それに、貴様とまと

もに打ち合えば宝具を使うのは必須。お前とて、他マスターに自身の正体をばらしたくはないだろう?」



 もっとも、私もお前も互いの真名は知らぬがなとランサーは不敵に笑う。



「くっ……」



 事実が事実なだけに、セイバーは悔しそうに下唇を噛む。前回の戦いで、宝具の打ち合いになりかけた事は幾

度かはあった。だが、その度に互いのマスターがそれを阻止。結果、宝具はおろか真名すら互いは知らない。



「いずれまた会う事になるだろう。その時こそ、決着をつけることになるかもしれぬな」



 そう言い残し、ランサーは夜の闇の中へと消えていく。その姿が完全に闇へと消えた時、



「は、あ……」



 どさっ、と士郎が尻餅をつく。今になって、バーサーカーやランサーの恐怖から解放されたからだ。顔と言わ

ず、体全体に冷や汗と脂汗が出てきている。それが服に染み込み、体に張り付いて酷く不快な気分にさせる。



「シロウ、大丈夫ですか?」



 己がマスターを気遣うセイバー。その顔にも僅かだが、安堵の感情が見える。今の彼女の状態では、ランサー

に勝てない事は分かっていた。前回の戦いでも、万全の状態で決着をつけられなかったのだ。今戦えば、かなり

の可能性で―――敗北が確定していた。



「あ、あぁ。ちょっと気が抜けただけだから」



 心臓が張り裂けそうに動き、息がし辛い。だが、それすらも今の士郎には嬉しい事である。心臓が動き、息を

しているという事は生きている事に他ならない。今、自分は確かに生きているのだと実感している。



「大したもんだよ。あの殺気で立っていられるんだから」



 完全に快復した祐一が、確りと地面を踏みしめ士郎に近寄る。すぐ横にいる凛へと顔を向け、軽い微笑を浮か

べる。



「遠坂もな」



「冗談。後少しでもあのままだったら気絶してたわよ」



 額に汗を掻き、蒼白な表情。意地と根性であの殺気を耐え抜いた凛は、ある意味この中でかなりの猛者なのか

もしれない。



「……しかし、あのランサーはバーサーカーと同じかそれ以上に厄介な障害だ。あれが互いに潰しあえばこちら

としては楽になるのだがな」



 ランサーが消えていった方向を睨む。既に気配はないが、今だその場に存在しているような幻覚を見そうにな

る。自身の知る聖杯戦争とは違いすぎる事に、アーチャーは今までの常識を捨てるべきだと思う。



「ま、命が助かったんだ。それだけでもめっけもんだろ」



「……そうね。それにしてもバーサーカーに前回のランサーか……。厄介な奴らが出てきたわね」



 爪を噛み締め、苦々しい表情で呟く凛。アインツベルン、バーサーカー、前回のランサー……あまりに急な展

開に彼女の脳も多少の混乱をきたしているようだ。

 ぶつぶつと何事かを呟き続けたと思うと、



「一緒にいた方が安全か……。衛宮君、今日から貴方の家に泊めてもらうわよ? 後で家から必要な物持ってく

るから」



「え、あ、あぁ。別に構わな……はっ?」



 凛の言葉に反射的に頷きかけ、内容を理解し即座に発すべき言葉を押さえ込む。しばらくポカンと呆けた表情

をしていたが、顔を引き攣らせて顔を赤く染める。



「な、何言ってんだ遠坂! 何でお前が俺の家に……」



「あら、だって私と衛宮君は同盟を組んでるのよ? だったら同じ場所にいるのは当然でしょう?」



 顔に物凄い笑顔を貼り付け、士郎を諭す。アーチャーも生前、散々弄られ続けた事を思い出したのか、微妙に

怯えている。



「うぇ、あ、う、そ、それはそうだけど……」



 有無を言わさぬ凛の様子に怯えた士郎が、しどろもどろになりながら頷きかける。



「そこで流されるか」



 そこに祐一のツッコミが入る。しかし、自分でその無意識の行動に気付き祐一は頭を抱える。そして小声で、

『俺はツッコミ役じゃない、俺はボケ担当なんだ。ツッコミ役は香里や北川なんだ』と自己暗示を掛ける。

 その姿に顔を引き攣らせる士郎と凛。セイバーとアーチャーも心なし引いている。この中で一番切り替えが早

いのは、祐一なのかもしれない。自己暗示が終了したのか祐一が立ち上がり、



「じゃ、俺も士郎の家に滞在しようかな。このまま水瀬家にいたら、秋子さんや名雪達に迷惑が掛かる」



 凛の行動に便乗するように祐一も士郎の家に滞在する事を決める。そんな二人の言葉を訊いた士郎は、溜息を

つく。妙に疲れた溜息。



「……分かったよ」



 もう何を言っても無駄だ、といった表情をして士郎はセイバーと共に衛宮家に向けて歩き出す。そして凛と祐

一もその後に続き、その後ろをアーチャーが皮肉の混じった苦笑をしながらついていった。


 一先ず、彼らはこの日を生き延びた。



[interlude out]


つづく




人物情報が更新されました。


イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 十八歳? 魔術師
身長・体重 本編参照
使用魔術  不明

備考
アインツベルンの魔術師であり、バーサーカー(ヘラクレス)のマスター。衛宮
切嗣の実の娘であり、自分を捨てた切嗣とその息子である士郎を殺す事だけを自
身の目的とし、それ以外は一族の思惑通りに動く。
実の娘とは言っても、その肉体はホムンクルスであり短命、成長停止などの成長
不全を起こしている。本人曰く、士郎や祐一達より年上なのだそうだがとてもそ
うは見えない。まさしくロリー(ぉ
バーサーカーと戦い生き延びる祐一に興味を抱き、何かと接触しようとするようになる。




ステータス表が更新されました。

CLASS   バーサーカー
マスター   イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
真名   ヘラクレス
性別   男
身長・体重   253cm   311kg
属性   混沌・狂


筋力  A+    魔力  A
耐久  A    幸運  B
敏捷  A    宝具  A

クラス別能力
狂化   B  パラメーターをランクアップ。しかし、理性のほとんど
        を失う。宝具の使用もほぼ不可能となる。


保有スキル
戦闘続行 A  生還能力。決定的な致命傷を受けない限り、生き延びる
        事が可能。

心眼(偽)B  直感・第六感による危険回避。

勇猛   A+  狂化している事による、能力発揮は不可能。

神性   A  主神ゼウスの息子、そして死後神として迎えられたヘラ
        クレスの神性は最高クラス。

宝具
十二の試練(ゴッド・ハンド)   ランク:B  種別:対人宝具
レンジ:―  最大効果:1人





後書きと言う名の座談会


祐樹「イリヤ&バーサーカー戦終了」


祐一「描写がかなり増えてたな。無駄に」


祐樹「言うな。これは長くなりすぎた」


祐一「そのうち、物凄い長くなるんじゃないか?」


祐樹「だろうな……さて、今回はゲストはおりません」


祐一「どうせまた後で出すんだろ?」


祐樹「当たり前だのクラッカー。いっぱい出すぞ」


祐一「まぁいいけど……では、次回予告」


祐樹「バーサーカーを撃退した祐一達は、衛宮家へと戻る」


祐一「俺達は刹那な時間を、ほんの一時の日常を維持する為に使う」


祐樹「だが、いくら日常を装おうとも彼らは日常とは掛け離れた存在」


祐一「自然、俺達は聖杯戦争絡みの会話、行動を起こす」


祐樹「次章『刹那の日常』前編、中編、後編。改訂バージョンをお楽しみに」


祐一「セイバーの健勝ぶりが発揮される瞬間だな」


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