2.



 ……やっぱり、体育館辺りが妥当かもしれないな。次々に教室を出て行くクラスメイトに混じ

り、俺も教室を後にする。別れの挨拶をかけてくる三枝さんや、他のクラスメイトに返事を返し

つつ下へと降りていき、下駄箱で靴を履き替える。

 玄関から空を見上げれば、紅い夕焼けが穂群原学園の校舎を照らしている。






 ……昔は、こんな紅い夕焼けを見るのが嫌で、辛くて、悲しくて、寂しかったよな。今ではこ

んな風に綺麗だと思って、多少の感慨を抱くだけで済んでいる。

 やはり、色々と自分なりに過去との決着をつけることが出来たから、こんな風に思えるんだろ

うか。


(それでも、俺自身の犯した罪が消える訳じゃない……)


 自嘲の笑みを漏らす。俺はこの先、死ぬまで自分がした事を忘れる事を許されずに背負い続け

るだろう。でも、それが当然の事だ。罪の清算なんて、出来やしないんだから。


「……相沢君?」


 後ろから声を掛けられる。振り返ると、そこにいたのは香里だった。動かずにそのまま立って

いると、靴を履き替えた香里が俺の横に並び立ち止まる。

 ……互いに無言のまま、空を見上げたまま動かない。


「……何か用事があったんじゃないのか?」


 沈黙に耐え切れず、俺がそう切り出すと香里は待ってましたとばかりに軽い微笑を浮かべなが

ら答えた。


「別に、相沢君が何か思いつめているような表情だったから。何か話してくれる気になった?」


 参ったな、そんなに分かりやすい表情をしていたのか、俺? 香里の言葉に苦笑を浮かべ、何

の事だとシラを切る。そんな俺に香里は分かっていたような表情を浮かべて、軽く肩を竦めた。


「いいえ、どうやら私の勘違いだったみたいね。ごめんなさい、不躾だったわ」


 別に謝る必要もないのに、香里は謝ってくる。こういう奴だと分かっているから、俺は何も言

わない。横に立っていた香里が歩き出し、暫く進んだ後にこちらへと振り返る。


「相沢君」


 視線だけで、「ん?」という意図を香里へと投げかける。微笑を浮かべているが、目だけは真

剣な様子の香里は、身体を正面に向けてこう言った。


「無理には聞かない。だけどね、私……いいえ、名雪や栞、川澄さん達は相沢君がそうやって思

いつめた表情をしているのを気にしてるの。だから、いつかは私達に話してね」


 それじゃ、と香里は優雅に立ち去っていく。その後姿を見送り、完全に姿が見えなくなってか

ら俺ははぁ、と軽い溜息をついた。




 ―――――それは、皆を心配させた自嘲の溜息ではなく、敵わないなーという苦笑を込めた溜

息。




(あんまり思いつめすぎるのもあれか。今は今、昔は昔。そう割り切るしかないな)


 思わぬ所で心に溜め込んでいた闇が少しだけ取り払われ、俺は多少軽くなったような感じがす

る足取りで体育館の方向へと歩いていく。







 体育館へと近付くにつれて、部活に励んでいる生徒の活気溢れる声が聞こえてくる。体育館に

いるのは、恐らくバスケ部とバレー部とその他諸々の奴らだろう。周りを見回し、陸上部らしい

ランニングをしている生徒が通り過ぎたのを見計らい、静かに跳躍して体育館の屋根へと到達す

る。


「さて、ここで夜まで待ちますか……」


 気配を殺し、辺りと同化するように俺は屋根上で寝そべる。下から響いてくる軽快な音を聞き

ながら、俺は目を閉じ時間が過ぎるのを待った……。


つづく





人物情報が更新されました。


フギン・ムニン 年齢不詳 使い魔(烏)
身長・体重 データなし
使用魔術  なし

備考
ランサー・オーディンの使い魔。神話時代から存在し、オーディンの手足となっ
て働いた忠実な使い魔……の筈であるが、フギンが関西弁を喋っている事やムニ
ンが主人のオーディンに反抗的であるのは謎。オーディン本人ですら、知らない
トップシークレット。
フギン・ムニン両匹とも、烏と同じ姿形をしている。見分ける方法は皆無だが、
喋り方と態度で丸分かり。戦闘能力はほとんど持たないが、作られた使い魔程度
ならば簡単に消滅させられる。


美坂香里 十八歳 一般人
身長・体重 データなし
使用魔術  なし

備考
祐一、凛のクラスメイト。凛と学年主席を争いあっている。妹である栞が助かり、
精神的に余裕が出来てから明るくなった。良く、祐一と北川の漫才の突っ込みを
している。本人は否定しているが、それなりに楽しんでいる模様。
自分の不安を吐き出させてくれた祐一に対して、親愛以上の想いを抱いているが
それが恋なのか自分でも分からない。ただ、北川に対しても同じぐらいの想いを
抱いている。
衛宮士郎、間桐桜、柳洞一成とはほとんど面識はない。




ステータス表が更新されました。


CLASS   ランサー
マスター   相沢祐一
真名   戦神オーディン
性別   男
身長・体重   194cm  76kg
属性   秩序・善


筋力  B    魔力  EX
耐久  B    幸運  B
敏捷  A    宝具  A

クラス別能力
対魔力  B  魔術発動における詠唱が三節以下の魔術を無効化。
        大魔術・儀礼呪法を以ってしても、傷つけるのは困難。

保有スキル
神性   A  神に近い事を示すスキル。オーディンは北欧神話における神で
        あり、その神性適正も最高ランク。

単独行動 EX マスター不在でも現界できる能力。自身の魔力だけで現界する
        事が可能。

ルーン  A  北欧の魔術刻印。ルーンの所持。ありとあらゆるルーン魔術を
        習得。

魔力遮断 ―  自身の身体に流れる魔力を遮断する。魔力遮断を解除するまで、
        サーヴァントならびに魔術師として認識されない。アサシンの
        気配遮断と酷似。

宝具
大神宣言(グングニル)   ランク:A++  種別:対城宝具
レンジ:1〜∞  最大捕捉:1000人

天馬召還(スレイプニル)  ランク:C   種別:召還宝具
レンジ:なし




後書きと言う名の座談会


祐樹「体育館に隠れるを選択すると、普通に隠れれます」


祐一「香里が少しだけ出てきたな」


祐樹「ん、あんまり本編とは関係ないけど、サブストーリー的にしてみた」


祐一「弓道場や教室に隠れるとか選ぶとどうなるんだ?」


祐樹「それは選んでからのお楽しみ」


祐一「改訂作業しすぎで皆さんに怒られるんじゃないか?」


祐樹「……申し訳ございません」


祐一「いや、俺に謝られても」


祐樹「だってさ、だってさ……」


祐一「あ〜ぁ、ネガティブモードに入りやがった」


祐樹「………ブツブツ


祐一「そ、それでは。次章でお会いしましょう」


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送