Fate/snow night 雪降る街の幻想曲





三章 刹那の日常(中編)





 衛宮家の居間は、妙な空気に包まれていた。炬燵を中心に、士郎と桜ちゃん、藤村先生が向かい合うように座

っており、俺と遠坂、セイバーはそんな三人を横から見ている。まるで裁判所さながらだ。士郎が被疑者、桜ち

ゃんが検察官、藤村先生が裁判官、そして俺達は傍聴席に居る人間。

 ……士郎に弁護人がいない。不憫すぎる。



「……あの、ふじ」



「士郎、有罪! 桜ちゃん、やっちゃいなさい!」



「はいっ」



 まてまてまてまて。士郎の弁解を聞く耳持たず、不当裁判にて衛宮家裁判は終わりを告げ、士郎に極刑が言い

渡される。というか、藤村先生も藤村先生だが桜ちゃんも桜ちゃんだ。やっちゃいなさいといきなり言われて、

普通はいっとか元気良く答えるか?

 これ以上は流石に士郎が哀れだ。ここは俺が弁護人になるしかない。さっきから士郎が俺達に向けて早く助け

てくれ的な視線を送っている。



「まぁ、落ち着いて二人とも。士郎の言い分くらい聞いてやってもいいでしょ?」



 俺の提案に少し冷静さを取り戻した二人は、それもそうかと頷いて座りなおす。あからさまにほっとした気配

が士郎から流れる。こちらを向いた士郎の目は、『助かった祐一』と雄弁に語っているのが見て取れる。



「で、何でここに遠坂さんに知らない外人さんがいるの?」



 不当裁判を起こした時のような暴走はしていないが、それでもかなり怒気が篭っている藤村先生の声。桜ちゃ

んも藤村先生と同じぐらいの怒気を放っている。

 修羅じゃ、修羅がここにおるぞ……。士郎が二人のプレッシャーに押され、座ったまま仰け反る。士郎の弁護

に回る為、俺は士郎の横へと移動。衛宮家内裁判、第二公判の開始だ。

 まずは被疑者の発言から。



「えと……こっちの金髪の子はセイバーって言って……あー、親父の……知り合い……そう、親戚なんだ」



 たどたどしいが、なんとかセイバーのことについては答える。ここは俺の弁護が鍵を握るな。暫くは様子見…

…しかし、セイバーはまだ分かるが遠坂は傍観を決め込むつもりなのか無言でこちらを見つめている。その表情

からは何を考えているのか読み取れない。こんな時にシオンのエーテライトがあれば楽なんだが。



「切嗣さんの? 外国の女の子が親戚にいるわけない……とは言い切れないか。切嗣さんって、結構謎な人だっ

たし……」



 むむむと唸る藤村先生。眉を顰めている事から、それは本当の事なのだろう。士郎もそんな切嗣さんに感謝し

ているのか、目を瞑ってありがとうなんて呟いてすらいる。それに面白くない表情をするのは桜ちゃんに遠坂。

桜ちゃんは……まぁ、分かるとして遠坂はなんでだ。大方、この状況を楽しもうとしているとしか考えられん。



「で、その子は何でここにいるの? まさかっ、士郎の許婚だとかそういうオチ!?」



「いや、藤村先生。それは流石に無理があると思いますが」



 小さく突っ込みを入れる俺。士郎も遠坂もうんうんと頷いている。桜ちゃんは藤村先生の許婚発言にびっくり

していたが、違うと否定され安堵したような表情。非常にからかいたいところだが、今は士郎を助ける事が先決

だ。



「セイバーさんは、親戚の切嗣さんを訪ねてきたらしいんですが、既に亡くなっていた事を知らなかったような

んです。帰るにも飛行機のチケットを取るのに時間が掛かりますし、ホテルに泊まるにも宿泊費が馬鹿にならな

いでしょう? だから、士郎がそれならって泊めたそうなんです」



 すらすらと俺の口から嘘八百が飛び出す。遠坂とセイバーが感心したように、士郎が俺の事を尊敬するような

眼差しを向けてくる。あまりに自然に紡がれた俺の言葉に、藤村先生は納得する。

 曰く、士郎ならそう言うだろうと言う事らしい。長年付き合ってきただけあって、士郎の性格を良く分かって

いる。これなら懐柔は楽そうだ。



「まぁ、セイバーさんの事は良しとします。でも、遠坂さんは何で?」



 そこまでは俺の管轄じゃない。セイバーの事だけなら、俺でも何とか出来るが遠坂の事までは出来ん。だから

士郎、俺をそんな目で見るな。俺が出来るのはここまでだ。弁護士、相沢祐一はここで退場いたします。



「そ、それは……」



 俺からの救援が当てに出来ないと分かった士郎はしどろもどろになる。このまままた士郎の有罪が決め付けら

れると思ったその時、傍聴席から一人の刺客。



「藤村先生。実は、私の家は今改装工事を行っているんです」



 傍聴席から、弁護人遠坂凛の登場。弁護人相沢祐一と入れ替わり、被告衛宮士郎の弁護を受け持ちます。



「改装工事……?」



「えぇ、家は相当古い洋館なのはご存知ですよね? ですから、相当ガタが来ていまして……それで改装工事を

行っていまして、暫く宿泊する場所をどうするかと思い悩んでいた所、衛宮君にそれならば家に泊まればどうか

と言われまして」



 俺と同じように嘘八百を並べる。なんだ、それなら最初から遠坂が言えば良かったんじゃないか。別に俺がで

しゃばる必要もなかったのに。



「むむむ……またもや士郎らしい発言が。変なとこばっか切嗣さんに似て……何かお姉ちゃん不安」



 目頭を押さえてよよよと泣き崩れる藤村先生。妙に様になっていて、笑いを誘う。



「まぁ、そういう事なら仕方ないか……でも士郎。いくら同じ屋根の下だからって、遠坂さんとセイバーさんを

襲ったりしたら駄目だかんね」



「襲うかっ」



 がうっと吼えるように士郎は反論。まぁ、仮にも士郎みたいなお人よしにそこまでの甲斐性があるとも思えな

いけどな。それにセイバーや遠坂を襲おうとしても、逆に返り討ちになることになるだろう。



「……で、相沢君は何でここに?」



 あ、やっぱり俺の理由も訊きますか。このままうやむやになってしまうかと思ったのに。そこまで都合良くは

いかないか。



「企業秘密ですよ、こればっかりは藤村先生にも言えません。俺の存在の存亡に関わりますから」



 なんだそれはと言う視線が全員から注がれる。ふっ、元々理由なんてないんだ。どうせなら引っ掻き回してや

ろうか。



「もし訊きたいというのなら、死ぬ気できなさいっ。ここから先は、相沢の眷属でなければ語れぬ事だ!」



「相沢の眷属って何だよ、というかわけ分からないぞ」



 士郎のツッコミ、それも二段ツッコミだ。割と高度な技を使いよる……お兄さんは嬉しいぞ。



「ま、冗談だがな。秘密なのは同じだ。詳しく訊くつもりなら俺にも考えがあります」



「ん、どうするつもりかなぁ〜?」



 目と口がシャム猫のようになる藤村先生。俺に負ける気なんてさらさらない、と言った表情だ。どうやら、俺

を舐めてる様子。ふっ、いいだろう……手札の一つを使うか。



「……ニ週間前のマウント深山商店街のケーキ屋……」



 ぼそりと、辛うじて聴こえるぐらいの小声で呟く。それをまさに地獄耳のように聞き取る人物が一人……藤村

先生だ。びくんと震え、顔色が悪くなっていく。



「分かったわ! もう先生何も訊きません!」



 冷や汗をだらだらと流しながら目を思いっきり逸らす。その変わり様に士郎と桜ちゃん、遠坂が唖然とし俺は

にやりと思いっきり邪悪な笑みを浮かべる。藤村先生、下手に俺を突っつくと自分の首を絞める事になりますよ。

 くっくっくっと笑っていると、時間の事を思い出し居間にかけてある時計を見る。七時半を回っていた。



「やべっ、さっさと家に戻らないと。それじゃ、夕方ぐらいに荷物持ってくるんで」



 用意された朝食を一瞬で平らげる。うむ、大変美味しゅうございました。



「あれ、相沢君もうちに居つくの? 水瀬さんの家に居候してるのに」



「ちょっとした事情でして。これは本当に言えないんですよ、プライベートですから」



 魔術師同士の戦争、聖杯戦争に参加するのでセイバーのマスターの士郎、アーチャーのマスターの遠坂と一緒

にいた方が何かと有利なので泊まらせて下さい。等と言える筈がなかろう。

 まだ食事を続ける全員と別れの挨拶を済ませ、水瀬家への道のりを『妙法速技・疾駆』で駆け抜ける。朝っぱ

らからこれをすると、相当脚にクるな……負担が掛かりすぎる。雪の積もる道路を駆け抜け、水瀬家の前へと辿

り着く。合鍵を使ってドアを開ける。



「ただ――」



「おかえりなさい、祐一さん」



 小さく呟くように入ったのだが、玄関に待ち伏せるように立っていた秋子さんとエンカウント。ありえない事

だが、昨日からずっとこうしているのかとも思ってしまう。秋子さんのこちらを見る目が、非常に怖い。表情は

笑っていはいるが、目が全然笑っていない。

 そしてその手に握られているオレンヂ色のジャムは、視界には決していれない。いや、いれてはいけない。気

付かれてしまえば、捕食されてしまう。



「え、えと……連絡しなかったのは謝ります、すいません。時間がないから掻い摘んで説明します」



 秋子さんとリビングまで行って、既に学校へ行ったというあゆと真琴の事を聞き、学校でランサークー・フーリンと戦った

事、セイバーが召還され友人の士郎がマスターになった事、バーサーカーと遭遇戦をした事、俺のランサーが十

年前から現界している事、士郎達と同盟を組み、暫く衛宮家に滞在する事などを話した。



「……そうですか」



「勝手に決めてしまってすいません。でも、名雪達を危険な目に遭わせたくないんです。それに、俺がここにい

れば、ランサーが襲い掛かってくるかもしれない。だから、離れないと駄目なんです」



 あのランサーは必ず、俺を狙って現れる。その時、近くに名雪達のうち誰かがいれば殺さないという保証は何

処にもない。だからこそ、俺は今すぐにでもこの家を離れないといけないのだ。



「……分かりました。名雪と真琴、あゆちゃんには私から言っておきます」



 秋子さんには本当、迷惑ばかりかけていて非常に心苦しい。ゆっくりと頭を下げて、俺は頼みますと告げる。

この先、俺は秋子さんに頭が上がらないままだろう。色々と迷惑をかけているし、それ以外に対してもだ。

 ともかく、これで名雪達には事後承諾でいいとして。早い所、制服に着替えて学校行かないと。



「それじゃ、着替えて学校行きます。こっち帰ってきたら荷物纏めますから」



 そう言って部屋へと駆け上がろうとすると、秋子さんに呼び止められる。頭だけを振り向かせて、視線で何で

すかと問いかけた。



「それなら衣服類とかは私がやっておきますよ」



 ……ありがたい。名雪は起こさなくて良いらしく、部屋へと戻って制服に袖を通す。服を着ながら、ランサー

に衛宮家に暫く滞在する事を伝える。文句がありそうな顔だったが、何も言わず了承してくれた。

 それよりも、ランサーにはこっちが訊きたい事が山ほどある。今日の夜にでも尋問するべきと思う。制服に着

替え、階段を駆け下りる。そのまま秋子さんに見送られ、学校への道のりをゆっくりと歩いて通う。

 その途中で舞と佐祐理さんに会った。二人は、俺らの高校……穂群原学園のすぐ近くにある大学に通っている

のだ。



「よ、お二人さん」



 背後から声を掛けると、無表情に振り向き挨拶する舞。そして笑顔を浮かべながら振り向いて挨拶する佐祐理

さん。対照的な二人だが、だからこそ気が合うのだろう。この二人も無論のこと、巻き込むわけにはいかない。

暫く関わらない方がいいだろう。



「祐一さん、今日も屋上前で一緒にお昼ご飯食べましょうねー」



 いつもの会話。だけど、そのまま日常を送る訳にはいかない。佐祐理さんと舞には悪いけど、ここは断るしか

ないだろう。



「ごめん、今日から暫く一緒に昼ご飯食べれないんだ……」



 少なくとも聖杯戦争が終わるまでは、佐祐理さん達に関わるべきじゃない。皆が危険な目に遭うのだけは、防

がなければならないんだ。佐祐理さんはその言葉に寂しそうな顔をする。だけど、迷惑をかけたくないと思った

のか素直に了承した。

 しかし俺の断りの言葉を聞いた舞が、いきなり泣き出す。だぁ、いつも唐突過ぎるんだよ!



「舞泣くな。色々と事情があるんだ、分かってくれ」



 宥めるように頭を撫でる。まだ少し涙目だが、泣き出すような雰囲気はなさそうだ。少し安心する。

 そのまま三人で暫く歩くと、後ろから気配が三つ近付いてくる。振り向くと、北川と美坂姉妹がこっちに向か

って駆けてきている所を発見。俺達を見つけて走ってきたようだ。



「よぉ、北川、美坂姉妹」



 平手を上げる。その意図を悟った北川だけが、俺に手に向かってぱんと平手を合わせてきた。やはりこれは男

同士の挨拶だという事だ。香里にも分かるらしいが、それは奴が精神的に男勝りだからだろう。

 合流したメンバーと一緒に、談笑しながら登校しながら俺は伝えるべき事をさっさと言うべきだと思い早々に

いう事にする。



「あぁ、そうそう。どうせわかる事だから先に言うけど、俺水瀬家暫く出るから」



 さりげなくなんでもない事のように言ったつもりだが、やはりさらっと流してはもらえないらしく大気が震え

るほどの大声を上げる全員。送電線の上に止まっていたスズメが飛び立つ。



「ど、どういう事?」



 耳を押さえながら香里の質問に答えようとした時、背後から聞きなれた声が聴こえてくる。



「どういう事ですか、相沢さん」



 声がした方向に顔を向けると、そこには天野の姿。何故か表情が強張っており、こちらを睨むように見ている。



「まさか、真琴を見捨てる気ではないでしょうね?」



「……あのな、何を勘違いしてるか知らんが俺が水瀬家を出るのは事情があるからだ。それが済めばまた戻るさ」



 少し呆れながら言った言葉で、天野の表情が元に戻る。自分の勘違いだと気付き、ばつが悪そうだ。



「すいません。疑ったりして」



「別に気にするな。俺にも色々あるから」



 皆には隠し事だらけだしな……。魔術師は自身の存在を一般人には生涯隠し通す。もし自分の存在が明かされ

た時には、その存在を知る者全てを口封じの為に……殺さなければならない。士郎があのランサーによって殺さ

れたのは、魔術師……『こちら側』の人間からしたら『ごく当然の事』なのだ。俺も例外ではない。

 だが、俺は殺すと言う対応は取らず自らの持つ魔眼の記憶操作でその事だけを消去しつづけてきた。やはり、

人を殺すのなんてしたくはないし、見たくもない。俺はこの方法を生涯止める気はない。



「名雪達には、家を出る事は伝えてあるの?」



 深い思考の海から、香里の発した言葉によって現実へと浮かび上がってくる。



「ん、あぁ。今日のうちに荷物を纏めて知り合いの家に行くつもりだから」



 まぁ、荷物の纏めと言っても持っていく物なんてほとんどないんだが。私服とかぐらいだろう。その後他愛の

ない話を皆としながら、俺達は学校へと向かっていった。






 時間は一瞬にして過ぎ去り、昼休み。士郎と遠坂に聖杯戦争の事で話をしようと思い、遠坂の姿を探したが既

に教室の中からはいなくなっていた。もしかすれば、士郎の所に行ったのかもしれない。いつものように三人で

食事を取る三枝さん達に挨拶して、教室を後にする。

 3−Bにまで来て教室を覗いてみるが、士郎の姿はない。



「なぁ、しろ……衛宮がどこに行ったか知らないか?」



 扉のすぐ近くに座っていた男子生徒に、士郎の居場所を訊いてみる。



「む? そちは相沢祐一殿か。衛宮殿ならば、昼休みが始まると同時に昼餉を持って、何処かへと旅立っていっ

たが?」



 変な喋り方をする奴だなぁ、と真っ先に思う。ともかく、それを教えてくれた男子生徒に礼を言って教室から

離れる。後で士郎に聞いた所、あの男子生徒は後藤と言うらしい。前日に見たテレビ番組によって次の日の喋り

方が変わると言う、面白い奴だそうだ。

 しかし、士郎を探そうにも当てがない。となれば、士郎の事を良く知る人物に聞くのが手っ取り早いか。そう

考えて職員室にいる藤村先生を訪ねた。



「士郎の居場所? あー、多分生徒会室じゃないかな」



 あそこは確か、役員以外は立ち入り禁止になってるんじゃなかったかな。久瀬が以前、そう言っていたのを思

い出す。士郎は生徒会役員じゃないから、入れないと思うんだが。



「柳洞君が許可してるんだよ。士郎って料理上手いから、教室の皆に取られちゃうの。だから、避難場所に生徒

会室ってわけ」



 あぁ、なるほど。佐祐理さんぐらいの腕はあったから、それぐらいはされるか。俺も舞と良くおかずの争奪を

繰り広げたから、気持ちは分かる。

 藤村先生に礼を言って、生徒会室へと向かう。階段を登り、目的の場所へと到達。ノックをして、反応が帰っ

てくるのを待つ。



「はい……っと、相沢か。何用だ?」



 柳洞が顔を出す。奥には何故か葛木先生の姿があり、代わりに士郎の姿は影も形もない。



「柳洞、士郎は? 藤村先生にここにいるかもって聞いたんだけど」



「衛宮ならば、先程遠坂が連れて行ったが」



 俺の疑問に葛木先生が答えてくれる。



「あ、そうですか。で、何処に行ったか分かりますか?」



「……恐らく、屋上におるのだろう」



 俺の前にいる柳洞が、物凄く不機嫌そうに言う。表情は苦々しそうに歪んでさえいる。



「……何か不機嫌そうだな、柳洞。どうした、馬券でも外れたか?」



「博打などせん! それに不機嫌にもなるわ! あの女狐め、衛宮までもその毒牙に掛けようと言うのか。やは

りあ奴は魔性の女よ。喝!」



 あー、そういや柳洞と遠坂って何でか分からないが仲悪かったよな。時々、憤る柳洞と静かに反論する遠坂の

口論を目撃していた事を思い出し、納得。一気に不機嫌になってしまった柳洞をどうどうと宥める。



「落ち着けって。俺も士郎に用事があったから様子見てこようか?」



「む……。頼めるか?」



 それに、柳洞の言う通り遠坂は魔性の女に近いものがある。下手したら士郎がその毒牙にかかってるかもしれ

んしな……。いや、もう既にかかっているかも。



「あぁ。じゃあな、サンキュ。それじゃあ葛木先生、失礼します」



 生徒会室を出て、そのまま屋上へと向かう。踊り場でいつも通りに食事を取る皆と会い、少し話をしてから屋

上の扉を開きドアが開かないように棒を引っ掛ける。これで誰も入ってこれない筈だ。

 ふぅっと息を吐いて振り向くと、かちかちに固まった士郎とあくまを彷彿とさせる笑みを浮かべた、遠坂の姿

が確認できた。



「……あら、どうも相沢君」



 近付いてくる俺に気付いた遠坂が妙に綺麗過ぎる笑顔を浮かべる。三枝さん辺りから見たら赤面しそうな笑顔

なんだろうけど、俺から見たら心底人をからかって楽しんだ後の笑顔にしかみえん。



「……遠坂、お前一体士郎に何をした? かちこちに固まってるぞ」



「人聞きの悪い事を言わないで下さい。私はただ、衛宮君と一緒にお昼ご飯を食べていただけです。気が付いた

ら衛宮君は既に固まっていました」



 心底楽しげに猫被り遠坂。きっと、学園のアイドルの遠坂と一緒に昼飯食べて緊張している所に遠坂がからか

ってきたんだな……。柳洞よ、お前の言う通り遠坂は魔性の女だよ。あそこまで完璧に擬態していた遠坂の猫か

ぶりを見破るとは、流石は柳洞寺を継ぐ人物だ。



「まぁ、それはいい。遠坂、聖杯戦争の事で話をしよう」



 幸い、屋上には俺達以外の姿はない。まぁ、十一月のこんな時に屋上で弁当を食べる奴のほうがいないか。俺

だって、こんな所で食おうなんてあまり思わない。寒いのは苦手だ。



「……分かったわ。でも、ここじゃ……」



「ちょっと待っててくれ」



 目を瞑り、自己に掛けた魔眼封鎖を解く。俺の左眼が『黒色』から『紫色』に変化。懐に仕舞ってある『七ツ

夜』を取り出す。右眼を瞑り、左眼だけで空間を睨みつけ『歪』を視つけだす。



「――『断絶ブレイク』」



 言霊と共に、ナイフを一閃。再び魔眼を封鎖し、眼の色が元に戻る。先程の一閃で、屋上の空間は今現在まで

いた空間から『隔離』されている。元の空間にいる人間が見ても、そこにはちゃんと屋上は存在している。だが

今俺達が存在している場所には、進入する事など出来ない。



「……あなた今、何をしたの」



 遠坂が呻く。分かっているのだ、これが如何に恐ろしい事なのかを。一度、これをゼルレッチ爺さんと青子さ

んに見せた事があるが、二人とも酷く驚いていた。現代の魔法使い二人が驚く程の代物だ、多分一種の魔法に近

いのかもしれない。



「空間を閉鎖した。これなら話せるだろう?」



 ここは俺の支配する閉鎖空間。それこそゼルレッチ爺さんの魔法でも使わない限り、入る事はおろか見つける

ことすら叶わない。ここならどんな話でもすることが出来る。



「それが、貴方の魔眼の能力ってわけ……? ふざけんじゃないわよ、こんなのほとんど魔法じゃない……」



 殺気を込めた目つきで睨みつけてくる。これも予想できる事だったから、別に何とも思わない。軽く溜息をつ

き、話を進めないのかと問う。その言葉に遠坂は殺気を消し、今は味方なんだから別に構わないかと言った。



「……はっ。あ、あれ?」



 漸く士郎が戻ってきた。何やら、落ち着かなさげに周囲を見回している。自分の現在の状況を把握しようとし

ているらしい。



「聖杯戦争の事で話があってな、いいか?」



 士郎の目つきが変わる。こういう所だけは魔術師らしい。遠坂の後ろにいたアーチャーも実体化して、フェン

スにもたれかかっている。



「で、話って何?」



 両手を組んで、足を組む。その行動に少しだけどきっとするが、それを心中で押し殺して話を進める。



「俺が聖杯戦争に関わる事になる一日前になんだが、ライダーに襲われた」



 士郎と遠坂の目が大きくなる。アーチャーは別段、何も変化は見えない。俺と一度対峙したからか、別に不思

議な事ではないと思っているのかもしれない。



「良く無事だったわね……って、バーサーカーと戦って生きてるような人間離れした人だったわね、相沢君は」



「人を化け物みたいに扱うな。真っ向から打ち合ったせいで、死に掛けたっての」



 貫かれた部分を擦る。幻痛を感じ、軽く顔を歪めてしまう。ランサーがあの場に現れなければ、俺はあの場で

ライダーに血を吸われ、出血多量で死んでいたに違いない。



「じゃあ、何でそんなぴんぴんしてるのよ」



 誰が言ったか忘れたが、嘘をつく場合には少量の真実を織り交ぜながら虚偽を申告すると相手は騙される。こ

こで俺とランサーには、何にも関わりがないという事を印象づけておくべきだと思う。結果、士郎達を欺く事に

なったとしても今だけは士郎達の味方である事が出来るのだから。



「……昨晩に現れたランサーに助けられた」



「何ですって?」



 思ったとおり、遠坂は眉を顰めて俺を見上げる。アーチャーも士郎も俺をじっと見つめてくる。さぁ、相沢祐

一、ここはお前にとって大事な場面の一つだ。ここで人生が終わってしまう事もありうる。気合を入れろ。



「夜、魔力と殺気を感じて俺は新都に向かったんだが、そこでライダーに襲われたんだ。そして、戦っているう

ちに石化の魔眼で動きを止められて、腹を貫かれた。殺されるだけの俺の前に、あのランサーが現れたんだ」



 核心へと近付いた俺の話を、三人は無言で先を促す。それに頷き返して話を進める。



「数合打ち合って、ライダーは逃げていった。そしてランサーがこっちに近付いてきて、俺の腹に何かをしたん

だ。もう目が霞んでて、何をしてるのかは分からなかったけど。すると、俺の貫かれた傷が一瞬で治癒されて、

すぐにランサーは俺の前から消えた」



 これで俺の話は終わりだと言う。それを聞いた遠坂が小さく溜息をつく。一語一句聞き逃すまいと神経を集中

していたようで、少し疲れた様子だ。軽く肩を揉み解しながら、残念そうに話し出す。



「ふぅ、相沢君の話からランサーの正体が分からないかなって思ったけど、そう簡単に分かるわけないか。でも

ライダーの正体は見当がつくわね。十中八九、ゴルゴンの魔女メデューサよ」



 遠坂は人差し指を立てて、そう断言する。石化の魔眼の持ち主で尤も有名なのは確かにメデューサであり、遠

坂がそう断言するのにも頷けはする。だが、ライダーとは騎乗兵のはず。俺はメデューサが何かに騎乗するなど

と聞いた事がない。

 士郎もそう思ったらしく、遠坂に質問する。



「私達が一般的にペガサスと呼んでいる幻想種は、斬り落とされたメデューサの首から生まれたものなのよ。メ

デューサは魔眼持ちであると同時に、騎乗能力を保有しているの」



 ご丁寧にも、遠坂先生は無知な俺達に対してメデューサ解説講座を少しだけしてくれた。へぇ、そうだったの

か……知らなかったな。やっぱり、一般の魔術師っていうのはそれぐらい知っているのだろう。



「相沢君の情報は有益だったわね。で、こっちからも話。学校に張られている結界の事は言うまでもないでしょ

う?」



 こくりと頷く。その結界の事を調べる為に、俺はわざわざ学校に残り続けたのだから。そして、士郎が殺され

たのを見つけ、こうやって遠坂達と同盟を組んでいる。遠坂の言葉に難色を示すのは士郎だ。



「結界って、何の話だ?」



 何も知らない士郎に、学校に張られている結界について分かっている事全てを話す。それを理解した士郎は、

険しい表情で拳を握り締める。遠坂が言うには、結界は五日後には完全に機能を発揮できるようになると言う。

 それまでに、この結界を張ったマスターを見つけ出して倒すしか解除する方法はない。遠坂が言うには、この

学校には二人以外にもう一人マスターがいるらしい。そいつが結界を張った可能性が一番高い、との事。

 即ち、タイムリミットは五日間。結界が完成する前に学校に潜伏している俺達以外のマスターを見つけ、叩き

のめして結界を解除させる。しかし、こんな結界を張るなんて……一体どういう奴なんだ。

 顔を顰めていた俺の考えを読み取ったのか、遠坂は軽い推論なら立てられると言った。



「この結界を張ったのは相当の臆病か、三流以下の魔術師ね。感知されやすい結界を張るなんて、馬鹿よ」



 かなり辛辣な言葉を吐く。確かに、あまりにもあからさま過ぎる気はある。それとも、本当に三流以下の魔術

師が張ったのか? でも、張られている結界の種類が凶悪すぎる。それよりも、これは本当にただの結界なのだ

ろうか。



「……アーチャー、お前は何か分からないか?」



 考えても思考が固まらないので、アーチャーの意見を訊く。サーヴァント……英霊だからこそ分かる事もある

かもしれない、と思ったのだ。だけど、俺の予想を見事に裏切る一言を遠坂は告げる。



「無駄よ。アーチャーの奴、記憶が無いもの」



「……記憶が無い?」



 どういうこった。英霊に記憶喪失なんて、そんな難儀な物があるとは思えんのだが。英霊として世界と契約す

る時には、契約した瞬間からそいつは現世から消え英霊として座に君臨する。生前の記憶が消えるなんて、そん

な事があるのだろうか。



「……凛、それも元々乱暴な召還をした君のせいだろう? それに、戦闘に関する記憶だけならば既に戻ってい

る。相変わらず、自分の真名だけは思いだせんがな」



 呆れた表情を隠しもせず、アーチャーはやれやれと首を横に振る。む、どうやらアーチャーの記憶がないのは

遠坂の召還による影響らしい。



「しょうがないでしょ、ちょっとしたミスよミス。で、戦闘に関する記憶って事は宝具についても思い出したの

よね」



 ならさっさと言いなさいと言わんばかりに、遠坂は自分のサーヴァントアーチャーを睨みつける。それを真正面から受け

て、アーチャーは眉を顰めた。



「ここで言えば私の真名がばれるかもしれんだろう? 他人が識っているのに、私が識らないというのは酷く不

快に感じる」



 心底言いたくないと言わんばかりに、アーチャーは拒否の姿勢を崩さない。頑として譲らないアーチャーに遠

坂は折れて、もういいと手を振って降参の合図を送る。

 このまま話は流れると思ったが、アーチャーは一つだけなら分かる事はあると言う。



「この結界は、人間を溶解し魔力へと還元する代物だ。少なくとも、こんなものを作り出す奴は正気の沙汰では

ない。自身が追い詰められれば、何でもするタイプの奴だろう」



「……なんだよ、それ」



 ぎり、と士郎が歯を食い縛る。俺も初めてこの結界を目にした時はキレそうになった。士郎の気持ちは良く分

かる。でも、だからこそ俺達が暴走するわけにはいかないんだ。下手にこの結界を張った奴を刺激すれば、完成

していなくても即座に結界が発動して、学校の生徒を溶解し死に至らしめてしまう。そんな光景、見たくなんか

ない。



「士郎、抑えろ。お前が突っ走ってもこの結界が無くなる訳じゃない」



 怒りに狂いそうになっている士郎の肩を掴み、落ち着くように説得を試みる。だが、俯いて下唇を噛み締めた

まま士郎は握り締める力を弱めない。



「分かってる……。けど、このまま放置してたら」



「間違いなく、死者が出るわね。でも、今の私達には何も手立てはない。この結界を張った奴を探し出して、ぶ

ちのめす以外はね」



 遠坂の言う通りだ。一番相手を探し出しやすくなる状況は、やはり結界発動の瞬間だろう。結界を発動させる

際には、術者が近くにいなければいけない。必然と、その場にいて怪しい行動をしている者が術者という事にな

る。そいつを結界で被害が出る前に倒せれば、何も言う事はない。

 ……志貴の直死の魔眼なら、この結界を『殺す』事が出来たかもしれないが……仕方ない。



「後の事は、夜の衛宮家で話そう。セイバーも交えて話をした方が良さそうだ」



 これ以上話を続けても、何もならない。それに、時間もないし落ち着いて話すことも出来ん。士郎の家でゆっ

くり話したほうが良いと思う。

 空間を元に戻す為、魔眼の封鎖を解除。ナイフで斬った『歪』をもう一度視る。



「『接続コネクト』」



 空間を元に戻す言霊を発して、『歪』を一閃。『隔離』された空間が元に戻り、学校内の喧騒が戻ってきた。

すぐに魔眼を閉じ、軽く息を吐いて気持ちを切り替える。魔眼を使うのは魔力を吸われるのと同時に、妙に疲れ

が襲ってきて嫌だ。やっぱり、使わずに済ませたい。



「じゃ、また夜ぐらいにそっちに行くから」



 そう言ってすぐに予鈴のチャイムが鳴り響く。弁当を片付ける士郎と、購買で買ったパンの袋を纏めている遠

坂。その二人を見て、俺は何かを忘れている事に気付いた。だが、喉元まで出掛かっているのだがどうしても思

い出せない。



「じゃあ、また俺の家で。夕食の出来具合、期待してるからな」



 遠坂と一緒に士郎は屋上を去っていく。その去り際に残された士郎の言葉で、俺は忘れていた『何か』を思い

出させられた。何で、こんな単純な事に気付かなかったのだろうか……。



「……俺、昼飯食べてねー」






 空腹で目が回りそうになりながらも、俺はなんとか今日の授業を乗り越えて水瀬家に戻ってくる事が出来た。

いや、本当昼飯抜きがこれほど堪えるとは……これからはちゃんと用意しておこう。

 自室へと戻ると、ベッドの上にでかいバッグが鎮座している。中を覗いてみると、俺の衣服類が綺麗に詰め込

まれていた。流石、水瀬秋子。良い仕事してやがる。



「……他に持っていく物は……空蝉弾と銃ぐらいか」



 懐に忍ばせられるだけ、銃を持っていく。残りはバッグの中のスペースに入るだろう。後は、空蝉弾だが……

四個ほどあればいいか。今三個残っているから、一つ作っておこう。



「ランサー、机の引き出しの中にある丸い形をした物、取ってくれ」



「……これか?」



 引き出しから取り出した空蝉弾を放り投げられる。それを受け取って、開く。空蝉弾の作り方は、魔術の中に

ある空間転移の応用のようなものだ。目的地で空間の『歪』を見つけ出し、その『歪』を斬った瞬間に空蝉弾の

中に閉じ込める……それで出来上がり。後は爆発させれば瞬間的にその場へと転移させられる、というわけだ。



「『転移アポート』」



 空蝉弾が出来上がる。あまり大量に作る必要はないので、数個あれば十分だ。下手をしてこれが奪われでもし

たら、とんでも無い事になってしまうし。

 魔眼を閉じて、空蝉弾をバッグに詰め込む。作り上げた空蝉弾を見ていたランサーが呟く。



「恐ろしい物だな、その魔眼は」



「……確かに、俺も時々怖くなる」



 今は黒色に戻った眼を押さえる。

 ……空間を支配する俺の『空虚の魔眼』。その場に存在する空間を自由自在に操作、利用する事ができ尚且つ

その空間毎相手を葬り去る事も出来る、一種の兵器。これは、人の手には余るものだ。本当なら、こんなものは

志貴の持っている『直死の魔眼』と同じく存在しない方がいい。

 だが、それを使う者が正しい事に使うのなら、あってもいいと俺は思う。



「ま、いくら危険な代物でも使い方を間違えなければ大丈夫さ」



 大丈夫大丈夫と、笑いながら手を振るとランサーは苦笑する。……そういや、直死の魔眼で思い出したが志貴

達は今、どうしてるんだろうか? こっちに来てから、一度も連絡を入れてなかった。

 相当心配させてしまったかもしれない……電話した方がいいだろうか。



「……ちょっと志貴達に連絡取ってみるか」



 部屋から出て、リビングに置いてある電話の子機を取る。階段を上りながら、遠野家の電話番号を入力。呼び

出し音を聞きながら、部屋へと戻ってくる。

 多分、今の時間ならばいつもの騒ぎが起こっている所だろう。翡翠さんが困り果てて、琥珀さんが面白がって

いる様が目に浮かぶようだ。そして志貴は騒動に巻き込まれると。あぁ、思い出せば笑いがこみ上げてくる。



『……はい、遠野でございますが。どちらさまでしょうか〜?』



 呼び出し音が暫く鳴り響いてから、電話越しに懐かしい声が聞こえてくる。琥珀さんの声だ。本当に懐かしく

て、少し感動した。



「あ、琥珀さんですか。俺です、相沢祐一」



『え……ゆ、祐一さんですか!?』



 あはは、驚いてる驚いてる。これだけでも、電話掛けた甲斐があったかも。久しぶりに皆と話せると思うと、

心が躍るような気分になってくる俺だった。



後編へつづく


後書きと言う名の座談会


祐樹「やっとここまで改訂終わった……」


…………………………


祐樹「……あれ? 誰もいないの?」


…………………………


祐樹「ちょっと待て。俺一人で座談会とか無理だから」


??「はぁ、はぁ……ごめん遅れた」


祐樹「良かった……本番中だけど何とか間に合ったな、志貴」


志貴「アルクェイドとシエル先輩と秋葉に足止め喰らって……」


祐樹「あー……そりゃ仕方ないかな。あと少ししか時間ないが、どうする?」


志貴「少しでも時間があるならやろう。次回は俺達が登場だな」


祐樹「前回とかそれ以前の話は短すぎたからな。それに内容の把握がしにくかった」


志貴「で、俺達を登場させて状況を再整理、話を長めに設定する事にしたと」


祐樹「あぁ。俺自身、月姫はクリアしてないんだが既にネタバレしてるからな」


志貴「俺が七夜だって事とかシエル先輩がロアの転生体だったって事とかか」


祐樹「そうそう。まぁ、それは置いておこう。現在、改訂作業は第二幕・第三章中篇まで完了した」


志貴「この後の改訂は色々立て込むんだよな」


祐樹「書く事が多いからな……もう一度、Fate/stay nightをして設定を覚えないと」


志貴「でも、これから先祐一どうなるんだろう?」


祐樹「そりゃ、俺の書くシナリオ通りに決まってるだろ」


志貴「選択肢によっては死んだり?」


祐樹「おう。実際、選択肢書くの疲れるけどな」


志貴「祐一が死んだら、琥珀さんと翡翠、シオンとレン、その他数名が悲しむな」


祐樹「お前らもだろ?」


志貴「そうだけどさ……」


祐樹「そら、そろそろ時間だ」


志貴「あ、本当だ」


祐樹「では、次の後編を楽しみに待っていてください」


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