Fate/snow night 雪降る街の幻想曲





三章 刹那の日常(前編)





「くぁ〜……っ」



 寝起きの体に活を入れるために、大きく背伸びをして寝ている間に固まった全身の骨をばきばきと鳴らす。

 俺達がイリヤスフィール・フォン・アインツベルンとそのサーヴァント、バーサーカーに襲われてから数時間

後の朝。結局、俺は水瀬家に帰る事はせずに衛宮家の客間を借りて数時間の睡眠を取った。連絡を入れようとも

思ったが、ランサーが軽い説明ぐらいならしてくれたと思う。それに既に夜も遅かったので、迷惑になるだろう

と思ったしな。……帰ったらお仕置きされそうだが。

 現在の時刻は六時の少し前。水瀬家に来る前、親父と訓練をする日はいつもこの時間かもう少し前に起きるよ

うにしている。今回ばかりは、未だに頭と体がぼーっと眠ったような状態になっている。本当ならば俺達『七夜』

の者の訓練は、夜の闇に紛れて行うか『七夜の森』でするべきなんだが、ここら一帯には森や人目がつかない場

所が少なく、『七夜の森』は志貴の手によって一時立ち入り封鎖にされている為、自身の技の昇華ぐらいしか出

来ることがない。

 本当ならば志貴か親父と模擬戦をやりたいんだが、無いもの強請りをしたって仕方が無い。今、自分に出来る

事をやろう。

 衛宮家の離れから少し離れた場所に、都合よく道場があると士郎から聞いた事があるのでのでそこへと向かう。





 ――――衛宮の家は、周りにある住宅地とは違い洋風の家ではなく今は懐かしき古風な日本屋敷……平たく言

えば武家屋敷である。相沢の本家も武家屋敷のようなものだが、あそことこの衛宮の屋敷はあまりにも性質が違

いすぎる。

 魔術師にとって、自分の家とは即ち自身の工房。他者を拒み、自らの魔術の昇華を目指す研究室だ。故に、来

る者は阻み去る者は逃がさない。それは遠坂の家も同じだろう。

 だが、この衛宮の家は違う。魔術師の工房としてはあまりにも開けられており、来る者は拒まず去る者は追わ

ず……それどころか、来る者を歓迎しそうな雰囲気すらある。

 それは、魔術師としては完全なる堕落。自身を高める事を止めた魔術師は最早魔術師ではなく、ただの世捨て

人。だけど、俺はそれでもいいと思っている。その人が後悔していないのなら、な。



「っと、ここか」



 朝焼けの眩しい衛宮屋敷を部屋伝いに歩いていくと、暫く先に俺と士郎が追い詰められた土蔵が見えまた歩く

とかなり大きい道場が姿を現す。衛宮家には何度か足を運んでいるが、ここに来たのは今回が初めてだ。一学生

が一人で住む家にしては、かなりの規模を有している。

 道場へと入る前に、目に入った神棚に向かって一礼する。別に剣道や武術をしてる訳でもないが、一応の礼儀

だ。そのまま板張りの床へと足を踏み込み――――――



「…………」



 ――――――その、板張りの床に凛と正座で佇む姿に目を奪われる。

 道場には先客がいた。衛宮士郎のサーヴァントである、セイバーだ。だけど、昨日のような甲冑姿でなく長い

紺色のロングスカートに白い生地で出来たブラウス。少し違うが、三咲町でのあーぱー吸血鬼……もとい、アル

クェイドの事を思い出す。性格は月とすっぽんぐらい違うけどな。

 にしても、あんなセイバーの為に誂えましたみたいな服、どこから引っ張りだしたんだ? もしかして、セイ

バーの私物……いや、それはないか。



「……セイバー」



 いつまでも固まっている訳にもいかず、俺はセイバーへと声を掛ける。目を閉じていたセイバーが、ゆっくり

と瞼を開く。何だかそれだけで、俺はこの場の雰囲気が変わる様な気がした。

 彼女は俺を視界へおさめると、正座の状態から立ち上がりこちらへと歩いてくる。



「ユウイチですか。どうしました?」



 ……いや、今考えてみればセイバーには何も用事はない。どうした、なんて言われても逆にこっちが困ってし

まうぐらいだ。



「あ、いや、ちょっと自主鍛錬でもしようと思ってな。こっちに来る前にも、やってたから」



 嘘は言っていない。元々そのつもりで、俺はこの道場に脚を運んだのだから。

 それを教えるとなるほど、そうでしたかとセイバーは頷く。一体、どこの英雄かは知らないけど何と言うか…

…オーラとでも言うのか。それが違う気がする。しかし、女性の英雄と言えばジャンヌ・ダルク辺りが有名だが

セイバーがそうなのか?

 でもジャンヌ・ダルクは騎士ではなく、農民の娘だった筈だ。騎士道の心得を得ていると思えないんだが……。



「どうしたました? ユウイチ」



「へっ? あ、いや何でもない」



 怪訝そうに俺の顔を伺うセイバーに、慌てて何でもないと答えを返す。納得いかなさげだが、どうやら今は深

く聞いて来るような事はなさそうだ。

 しかし……またやっちまった。無駄に思考を張り巡らせ過ぎると、俺は周りが見えなくなるという癖を持って

いる。治そうとは思っているのだが、いかんせんこればっかりは治せない。考え事をすると必ずこの状態になっ

てしまうのだから。



「セイバーは、道場ここで何をしてたんだ?」



 あんまり深く突っ込まれると、後々面倒になる恐れがある。この事は早急にセイバーの頭から忘れ去ってもら

おう。それはもう、記憶の片隅にも残らないほどに。



「いえ、少々瞑想を。ここは他の場所と違い、気が引き締まる。先程、シロウも貴方と同じ事を聞いていきまし

た」



 セイバーの言う事は尤もだ。こういった道場は瞑想するのに最適な場所である。道場って言うのは、一種の結

界に近い。外界と切り離された、独立空間。見えざる何かによって、空気どころか気持ちまでも凛とさせられる。

それが道場というものだ。

 こういった張り詰めていながらも、静かで、穏やかな空気が流れる場所を俺は気に入っている。一人で色々と

考え事をしたい時などに、こういう場所へ来ると何も気にせずに考え事に集中出来るからだ。



「あ、それなら邪魔したか。悪いな」



「いえ、お気になさらずに。それよりも、一つ訊きたい事があります」



 セイバーの視線が、険しさを帯びていく。どうやら、何か真面目な話があるらしい。彼女がこんな眼をする関

わりがある事など、聖杯戦争以外にない。



「あぁ、俺に答えられる事なら」



 軽く苦笑しつつ肩を竦めながらセイバーに答えてやると、彼女は貴方でなければ答えられない事ですと言った。

俺じゃなきゃ、答えられない事……?

 ――――――――――もしかして、俺の眼の事か?



「貴方は私達の前で、煙のように消え煙のように現れていた。あれは、一体どうやっていたのです?」



 やっぱり、な。訊かれない方がおかしいのは当然か。セイバーの質問に対して、俺は後頭部をかりかりと掻く。

さて、別に隠す必要もなさそうだから構わないか。どうせ、士郎や遠坂にも訊かれる事になりそうだし。



「俺が魔眼持ちだって言うのは言ったよな? ……あれは、俺の魔眼……『空虚の魔眼』の能力だ」



「『空虚の魔眼』……?」



 案の定、セイバーは疑問の表情を浮かべる。俺の保有する魔眼には、正式な名前は存在しない。故に、俺が勝

手に『空虚の魔眼』と名付けているだけだ。



「……空間の操作。存在する空間の『歪』を視つけだし、それを言霊と共に斬り裂く事であらゆる空間に干渉す

る事が可能となる」



 眼を見開くセイバー。俺の言葉の意味を反芻し、さらに驚きを表す。



「空間の操作……!? そんな、それでは既に魔術ではなく魔法……!?」



 やはり、そうなってしまうのだろうか。ゼルレッチの爺さんに、青子さんにも同じことを言われた事があった。

そして、俺が魔術師や退魔師ではなく、魔法使いに組する人間なのではないかとも。

 別に、そういう事には興味ない。俺自身は、自分を退魔師だと認識している。それに、魔法使いになってしま

えば時計塔の連中とか、相沢本家にいる奴らが何かとうるさく言ってくるに決まっている。そんなの、俺はごめ

んだ。



「では、昨日のあれは空間を操作して空間の跳躍をしていたと……?」



 空間の跳躍と言うには、少し語弊がある。『歪』を見つけ出して言霊と共に斬りつけると、その空間に『歪』

とは別に歪みが生じそれが広がって穴が開く。その中へと自身の体を滑り込ませて、その空間内からまた『歪』

を斬りつけ、別空間へと移動するというのが正しい。

 この空間と、歪の空間の中では時間の進みが少し違う。故に、通常の空間にいる人間から見れば空間の跳躍…

…瞬間移動をしたように見えるのだろう。



「まぁ、平たく言えばそうだな。ただ、魔力消費も半端じゃないほど激しいから、あまり多用は出来ないんだ」



 空間の干渉には、魔眼での『歪』を視つけだす為に多大な魔力が俺の眼へと流れ込んでいく。魔術に詳しいシ

エルさん曰く、志貴の持つ直死の魔眼も相当の魔力が流れ込んでいくのだが、志貴には魔術師としての適正がな

いため少量の魔力と生命力――人間が生きる為の活力が流れ込んでいくのだそうだ。それによって、志貴は度々

貧血のような状態になるのだと言う。

 俺の場合は、魔術師の才能はないが適正はあるとの事。魔力も申し分ないほど漲っているらしく、問題はない

のだそうだ。



「……分かりました。訊きたかった事はそれだけです」



 そうは言うが、セイバーの顔色は晴れない。やはり、そう簡単に信じきれるような話ではない。空間の操作な

んてものは、神代の魔術師でもおいそれと出来た代物ではなかった。俺は魔眼の力とはいえ、それを可能とたら

しめている。

 化け物……ある意味、そう呼ばれても不思議ではないかもな。



「じゃ、本来の目的の鍛錬でもしますか」



 軽く体を解しながら、道場の中心近くへと歩いていく。その場で軽い柔軟をこなし、小さく息を吸う。吸った

息をゆっくりと吐き出し、心を落ち着ける。そんな俺を、セイバーが見つめてきていた。

 なんだか、居心地が悪い。落ち着けた筈の心がざわめく。居た堪れなくなって、俺はセイバーの方向へ向き直

る。



「……何? じっと見られると落ち着かないんだけど」



 苦笑しながらセイバーへ声を掛けると、小さく謝罪してからセイバーは言った。



「ユウイチ、失礼だとは思いますが貴方の技を見せてもらってもよろしいですか?」



 今日は何かと干渉される日だな……。あんまり七夜の技ってのは、他人に見せるもんじゃないんだが……。七

夜の技を全て見ると言う事は、イコール『死』に繋がる。

 暗殺術と体術の組み合わせである七夜の技は、クー・フーリンが持っていたゲイ・ボルクと存在理念が一緒だ。

見敵必殺。見た瞬間が、相手の死ぬ瞬間。あの親父によると、七夜の技を全て見た者はいないと言う。唯一の例

外が七夜の里の人間と軋間紅摩だ。

 しかし、別に見られても構わないか。親父からは見せちゃならないって言われた事もない。それに何も今戦う

わけでもなし、仮に戦ったとしても俺じゃセイバーに勝てるとは思えない。純粋な戦闘能力だけならば、人間と

サーヴァントの差は離れすぎている。



「あぁ、ただ七夜基本技しかしないけどいいか?」



 七夜基本技とは、その名の通り七夜暗殺術の基本体系である。と言っても、七夜の技にはそれしかない。俺が

言った意味には、七夜基本技から自己流で編み出した『裏・閃技』という体系をしないと言う事だ。

 七夜の技は、七夜の名の通り七つしかない。その七の技を極め、さらに究めて自身の技を作り出すのが七夜の

流儀である。親父自身にも数個の技があるらしいが、俺のように編み出したのは例を見ないと言う。それだけな

ら、暗殺術の才能だけならば俺にあるようだ。嬉しくもないが。

 俺の言葉にかまいません、とセイバーは頷いて再び板張りの床に正座で佇む。視線はまっすぐ俺へと向かって

きている。その視線は静かだ。

 右腕の袖から黒い針――俺の魔力を流し込んだ特殊な物で、黒針と呼んでいる――を八本ほど取り出し、それ

を自らの影へと投げ放つ。その黒針が影へと沈み込み、数瞬後に影から八つの黒い人影が飛び出して道場に並ん

だ。

 『裏・閃技』の技の一つである『影縫い』を応用した『漆黒影』、それの簡易型である。



「ユウイチ、貴方は魔術が使えないはずでは……」



 道場に並んだ影を見たセイバーが、怪訝な表情をしている。傍目から見れば、魔術行使をしたようにも見える

のだろう。



「ん? あぁ、これは魔術じゃなくて、俺のオリジナル技を応用した物だよ。ただの的みたいなものさ。さて…

…」



 腰を落とし、『七ツ夜』を逆手で構え後ろ手に回す。七夜の技の基本形、『七夜』『八穿』『四穿』『一風』

『八点衝』『三蹴二斬』『五凶星』、そして基本技とは別体系の『六兎』、やりますか。

 意識を完全に切り替える。目の前に並ぶ影を全て敵――死徒や魔に落ちた人間と想定――だと認識し、それ以

外の余計な物を視界から除去する。意識は全て、目の前の影に集中。目を逸らした瞬間が自分の首が飛ばされる

か胸を貫かれる……そのように考える。

 『七ツ夜』を握る右手に神経を集中させ、一気に道場の床板をだんっ、と踏み抜かん勢いで疾走。



―閃鞘・七夜―



 一つ目の影が横真っ二つに切り裂かれる。ライダー戦に行った、すれ違い様に相手を斬りつける、『閃鞘・七

夜』。



―閃鞘・八穿―



 二つ目の影が今度は縦に真っ二つになる。これもライダー戦でも行った、敵へと特攻し直前で飛び上がり上空

から斬りつける『閃鞘・八穿』。



―閃鞘・四穿―



 『閃鞘・八穿』とは逆方から三つ目の影が縦真っ二つに分かれる。『閃鞘・八穿』の対極、地上から斬り上げ

る『閃鞘・四穿』。



―閃鞘・三蹴二斬―


 瞬時に四つ目の影の両胸、腹部を蹴り穿ち、間を置かず両腕を切り裂く。神速の三つの蹴りと二つの斬撃を放

つ、『閃鞘・三蹴二斬』。



―閃鞘・一風―



 五つ目の影へと疾走。相手の鳩尾へと膝蹴りを放ち、そのまま相手の頭から背負い投げをするように叩き落し

て頭部から破壊。確実に相手の脳髄を破壊する『閃鞘・一風』。



―閃鞘・八点衝―



 六つ目の影の体がばらばらに解体される。無数の斬撃を相手へと浴びせ放ち、相手の体を切り刻む『閃鞘・八

点衝』。



―閃鞘・五凶星―



 七つ目の影が、腕、脚、体の五つのパーツに分解される。相手の両腕、両脚を切断してその痛みで絶命させる

『閃鞘・五凶星』。



―閃走・六兎―



 八つ目の影が空に浮きあがり、掻き消える。瞬時に狙った相手の部位に六発の蹴りを叩き込み、内部から破壊

を促す『閃走・六兎』。『七夜基本技』の全て、蹴り技の基本体系を放ち、最後に深く深呼吸をして『七ツ夜』

の刃を仕舞う。



「……ふぅ」



 八つの影は消滅し、道場には静寂が戻る。元々静寂が支配していたが、俺が動いた一瞬の間だけ道場の中に殺

気が渦巻いていた。セイバーからすれば極々微々たる物だろう、しかし常人からすれば殺されると思ったとして

も不思議ではない濃度である。



「美しいものですね……それが、ユウイチの使うナナヤの暗殺術ですか」



 セイバーの発言――その内容ではなく、言い方に苦笑する。セイバーの『祐一』と『七夜』の言い方は、何処

か片言だ。『祐一』の言い方は、『ゆういち』のうの発音が小さくなってしまっている。『七夜』の場合は、少

し棒読みに近い。

 まぁ、士郎の名前の発音も違うようだから仕方ないか。異国の人間からすれば、日本語の発音は難しく感じら

れるからだろう。それは俺達、日本の人間が外国の言葉を中々理解できない、話せないのと同じ事だ。



「綺麗だ、なんて他人から評価されたのは初めてだな。セイバーの戦い方と見比べると、やっぱり暗殺術とかは

邪道に映るのか?」



 素朴な疑問をぶつけてみる。ランサー、そしてバーサーカーとの戦いを垣間見ただけであるがセイバーの戦い

方は恐ろしく美しく見えた。俺の戦い方とは、全てにおいて真逆の位置に存在している。



「いえ、それがユウイチの、そしてナナヤの戦い方でしょう。私にそれを批判する権利はありません。それに、

それ以上に卑劣な手を使った相手も、私が生きた時代にはいました」



 苦々しそうな表情で、自分の生前の記憶を思い出しているらしいセイバー。わなわなと震えているセイバーを

見ていると、少し寒気が俺を襲った。得体の知れない恐怖を感じながら、まぁまぁとセイバーを落ち着ける。

 それから、少々セイバーから自分の真名が勘付かれない程度の話を聞かせてもらった。それを聞く限り、やは

りセイバーの正体はジャンヌ・ダルクとは大きく掛け離れる。それに、セイバーのあの視えない剣もそうだ。

 ジャンヌ・ダルクは視えざる剣など使わない。彼女が使ったのはごくありふれた鋼の長剣ブロードソードだと史節には残って

いる。まぁ、歴史なんてものは伝えられていくうちに次第に歪曲していくものだ。当てになるかは確証はない。

 ふと時間が気になりポケットに入れている携帯のデジタル時計を見ると、六時四十五分ぐらいになっていた。



「やば、こんな時間か。俺は一旦、家に戻るよ。秋子さん……俺の保護者に説明しないと」



 既に水瀬家は俺の家とも言えるべき場所だ。相沢本家ではない、あの家こそが俺の帰るべき本当の家。親父や

母さんと同じぐらい暖かい、優しい空気を生み出している気持ちのいい場所。

 ……我ながら少し気恥ずかしい事を考えてしまった。こんな事、誰にもばれるわけにはいかんな。



「分かりました。私はもう少々ここで瞑想しています」



 三度、道場に正座をして俺がここに来た時と同じ体勢で瞑想を再び始める。そのセイバーを背に道場を出て、

屋敷に戻る。十一月の朝の日光が、妙に暖かい。冬場に冬眠する熊の気持ちが分かる気がする。……名雪のも冬

眠と言えば冬眠か。奴の場合、春夏秋冬年中寝てるが。

 と、不意に嗅覚を刺激する匂いが漂ってくる。



「……飯の匂い?」



 それを認識すると、急に腹が減ってくる。起きてから何も食べていないのだから、無理もないか。ふらふらと

その匂いに釣られて移動していくと、衛宮家唯一の居間兼台所場に着く。台所に士郎の後姿が見えたので、そこ

へと近付いていく。



「あ、祐一起きたのか」



 俺が近付く気配を悟ったのか、士郎が台所から出てくる。その胸には「人畜無害」と書かれたエプロン、手に

はフライパンが握られている。……これは士郎の趣味ではないだろう。自分から「人畜無害」なんて書かれてい

るエプロンを着るなんて想像できん。

 フライパンの上では出し巻き卵が見事な焼き色をつけて、これまた見事な形で鎮座している。ガスコンロの上

には、湯気を上げる鍋の姿。先程の匂いの正体はこれであり、匂いから察するに味噌汁の可能性が高い。そして

グリルの中にはメインディッシュであろうお魚様が、焼きあがるのを今か今かと待ちわびている。

 秋子さんほどではないにしろ、今時の高校生が作れる料理の技能を超えている。俺の目から見て、佐祐理さん

クラスの技能を持っていると見た。



「六時前には起きてたよ。ちょっと道場で鍛錬を、な。何か手伝おうか?」



 それほど余裕もないが、見たところあと少しで全部の用意が終わりそうである。それぐらい手伝ってから衛宮

邸を出ても、全力で家まで帰れば間に合う筈だ。しかし、俺の言葉を聞いた士郎は、意外なものを見たような驚

いた表情をする。



「……祐一って、料理出来たのか?」



 ……何だその反応は。そんなに俺は料理が出来ないようなイメージがあるのか。そりゃあ、名雪に以前インス

タントカップ焼きそばの湯を捨てずに、ソースを入れたと告白した事があるさ。だけど、あれはただ単にぼーっ

としていたせいで、料理が出来ないという訳ではない。

 秋子さんにも、料理を手伝うと言った時に酷く驚いた表情をされた。流石にそこまでされると俺の頑丈なハー

トもガラスのように罅割れて傷つくぞ。



「失礼な反応だな……相沢家の台所は俺が預かってるんだぞ」



 寧ろあの親父に料理なんてさせたら、今頃俺はこの場に存在していない。病院のベッドの上で、美人看護婦さ

んと和気藹々な会話をしている所だ。もし俺以外の人間が親父の作った料理を食べたとしたら、下手な毒物より

も毒素が強いから最悪の場合死ぬ可能性すらある。

 幼い俺はそれを回避すべく必要に迫られて料理を覚えてからな……。七夜の人間は自給自足が当たり前、家事

も人並みには出来る筈なのに。あの親父は色々な意味で規格外だ。



「へぇ……初耳だ」



 そりゃ言った事ないしな、と心の中で突っ込む。別にそういうのは、自分から言いふらすような事ではないか

ら言う必要性もないと思っているからだ。多分、こういう所が俺は料理が出来ないという誤解を生んでいるのか

もしれない。



「ま、そんな事はいい。手伝うよ」



 袖を捲り上げながら、台所へと入っていく。中に入ってから気付いたが、俺が手伝う必要はないらしい。ご飯

も既に炊き上がって蒸らしも済んでいるし、出し巻き卵も出来上がっている。味噌汁は後は器に注ぐだけである

し、焼き魚も焼きあがるの待つだけだ。

 これでは、俺が料理が出来る事を証明出来ない。



「もう朝食の支度は終わってるからな……だったら、夜の夕食は祐一に任せる。その時に料理の腕を見せてもら

えるか?」



 ふむ、夕食ならば時間もたっぷりあるから色々作れるか。よし、今日の夕食で士郎の奴を驚かせてやる。俺が

料理を出来ないという印象を払拭する絶好のチャンスだ。



「ふっ、いいだろう。っと、言い忘れてたけど俺一度家に戻るな」



 学校もあるし、何より俺の今の服装は私服だ。制服は水瀬家の俺の部屋にある。今から戻って取りに行かなけ

れば、学校に登校しても即刻帰宅指導だ。



「あ、じゃあ朝食どうするんだ? 祐一の分も作ったんだけど」



 ……どうやら、今この衛宮家にいる人間の人数分を作っていたらしい。折角作ってくれた食事を、無碍に断る

のも悪いか……それにさっきから腹が減って仕方ない。こんな美味そうな食事を前にして、食欲を抑えられる奴

は人間じゃねぇ。

 かと言って、あまりに喰いすぎる奴もどうかとも思う。



「じゃあ、食べていくよ。最低でも七時半ぐらいに出れば間に合う」



 いざとなれば、『妙法速技・疾駆』を使えばあっという間に水瀬家まで行って学校まで行ける。名雪やあゆ達

は……知らんっ。今日ばかりは起こす事は出来ん。仲良く遅刻してくれ。



「分かった。後は盛り付けだけだから、待っててくれ」



 何が嬉しいのか、士郎は小さく笑いながら朝食の盛り付けに入る。主婦……否、マスター主夫の称号を士郎に

授けたいと思うほど、堂に入った後姿だ。長年、こうやって食事を作ってきたんだな。

 そんな風に考えながらぼーっと立っていると、不意に背後に人間の気配を感じた。それもかなり近くまで来て

おり、俺は内心気の緩みすぎかと驚きながら振り返る。



「………はよ」



 物凄い者がいた。掌を顔面に貼り付け、目は半目で死んだ魚のように濁った目付き、極めつけは地の底から響

いてくるような「うぁ〜」という唸り声。あまりの奇怪な生物の登場に、俺は凍りついたように固まる。

 が、すぐに石化が解けて俺は思いっきり驚き声を上げて「それ」から距離を離した。それは俺の驚き声にも何

の反応も見せず、ただひたすらに台所の方向を向いて左右のツインテールをゆらゆらと揺らしている。



(って、ツインテール?)



 弓塚……じゃない。この衛宮邸にいるツインテールといえば一人しかいない。俺の驚き声をいきなり背後から

聞いた士郎は、肩をびくりとさせてこちらへと振り返る。



「いきなり大声上げるなっ……って、うわぁ!?」



 俺と同じものを見て、士郎が恐怖の声を上げる。危うく出し巻き卵の乗っていたフライパンを放り投げそうに

なるが、その辺は料理人として頂けなかったらしく未遂に終わった。



「……何よ、変な反応して。それより衛宮君、牛乳くれる?」



 俺達を驚かせた「それ」……遠坂凛という名の物体は、図々しくも士郎に向かって牛乳を催促。その目付きの

悪さとあまりのいでたちに士郎は逆らうような事はせず、冷蔵庫の中から紙パック入りの牛乳を取り出して遠坂

に手渡す。

 受け取った牛乳パックを遠坂は、あろう事か何の躊躇いもなく紙パックの口を開きそのまま一気にラッパ飲み

をした。あまりの光景に、俺と士郎は目が点になる。



「んっ……ぷはっ! ふぅ、目が覚めたわ」



 そうやって微笑む遠坂はいつもの遠坂だった。先程の姿とのギャップが強すぎて、俺と士郎はこれが本当にあ

の遠坂凛なのかと疑ってしまう。

 そんな事をしていると、瞑想が終わったのかセイバーが居間に現れる。遠坂をじっと見つめている士郎の姿に

セイバーは疑問符を浮かべた。



「どうしました、シロウ?」



「……あ、あぁ。別になんでもないよ、セイバー……」



 未だに完全にこっちの世界に士郎の精神は帰ってきていない模様。かく言う俺も、構えを解かないままだが。



「……? ユウイチ、貴方は何をしているのですか?」



 セイバーが構えたままでいる俺を見て、呆れたように言う。その言葉で構えを解き、バツが悪そうに頭を掻い

て言い訳をする。



「いや、今遠坂が物凄い顔で入ってきたから驚いて……」



 そこまで言うと、遠坂が渋い顔をする。



「……悪かったわね。私、朝は弱いのよ」



 ふん、とツインテールを揺らしてもう一度牛乳パックをがぶ飲み。男らしい飲み方だ。少し笑いがこみ上げて

くる。



「下手したら名雪クラスだな……」



 いや、あれは寝ながら行動できるから遠坂より少し上か。と言うより、あいつは寝てても起きててもそう大差

はない。



「……遠坂、アーチャーは何処だ?」



 ふと、あの赤い外套を纏った弓兵がいないのに気付き、訊く。霊体化でもしているのかとも思ったが、遠坂の

近くに気配はまったくない。



「アーチャーなら屋根上で見張りしてるわ。私が言うまでもなくしてたから、優秀な奴よ」



 嬉しそうに天井を見上げ、屋根上で見張りをしていると思われるアーチャーの姿を幻視する遠坂。牛乳パック

を冷蔵庫に戻して、居間に出てくる。



「あ、じゃあ朝飯どうしようか? アーチャーの分に、遠坂とセイバーの分も作ったんだけど」



 何と言うか、相変わらずまめな奴だと本当に思う。士郎の言葉に遠坂は少々申し訳無さそうに、セイバーは無

表情に言い放つ。



「……私、朝食は食べないほうなんだけど」



「私はサーヴァントですから、食事の必要はありません」



 二人から言われ、士郎はちょっとうろたえる。まぁ、あぁ言われれば多少は怯むわな。さぁ、士郎はどういう

行動を取るか。諦めると説得するの二つの行動パターンがある。倍率は1:9だ。



「で、でも、せっかく作ったんだから食べてくれたほうが嬉しいんだけど」



 右手にお玉、左手に出し巻き卵を乗せたフライパンを持って困惑の表情を浮かべてそう言った。ふむ、予想を

裏切らない男だ。

 士郎の言葉に、セイバーと遠坂は少し罪悪感を刺激されたような表情をする。



「シロウがそう言うのでしたら……」



「分かったわよ。ま、たまにはいいかもね」



 諦めたセイバーと遠坂が居間の炬燵に座る。俺は屋根上にいるらしい、アーチャーに朝食を食べるか否かを訊

きに行く。



「アーチャー、どこだ?」



 声を掛けて一瞬の後、何もない空間が揺らめきアーチャーの姿が具現化。



「……祐一か。何の用だ? いや、それ以前にそう無防備に私を信用しすぎるのもどうかと思うが?」



 皮肉なのか、口を軽く歪めながら俺に向かって忠告をしてくる。



「んー……それは俺も分かってるさ。でも、何て言うかアーチャーは信用出来るって気がするんだ」



 本当に理由は分からないけどな。俺の言葉に何故かアーチャーは軽く目を見開き、息を呑んだ後小さく嘆息し

て呆れの表情を浮かべる。



「まったく、君は衛宮士郎の友人に一番適格な人物かもしれんな……」



 ――しかし、その呆れの中に一瞬の羨望を含めてそう皮肉気に漏らした。俺は相手の感情の揺らぎに敏感であ

る為、それに気付いたが恐らく遠坂や士郎辺りなら気付く事はなかっただろう。



「本題に入るけど、士郎が朝食を作ったからお前も食べるか?」



「折角だが遠慮しよう。私には監視という任務があるからな」



 すげなく断られ、居間に戻ってアーチャーが朝食をいらないのを士郎に伝えて座る。台所から士郎が朝食を持

ってくる。それも何故か、六人分。



(六人分……?)



 俺、遠坂、士郎、セイバー……視線だけで人数を確認する。アーチャーの分は少しずつ全員に振り分けている

から、明らかに二人分多い。



「なぁ、士郎。何でニ人分多いんだ?」



 メインのお魚様とサブのきんぴらごぼうを持ってきた士郎にそう訊く。既に座って、食べる準備万端であった

士郎は俺の言葉に疑問符を浮かべて、自分が並べた料理を眺める。



「え? …………あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 桜と藤ねぇの事すっかり忘れてたぁぁぁぁぁぁっ!!」



 とんでも無い事を忘れていたとも言わんばかりに立ち上がり、咆哮する士郎。それに重なるようにタイミング

良く、玄関の扉が開く音がする。



「お邪魔しまーす」



「お腹空いたー!!」



 二つの声が居間まで聞こえてくる。一つは藤村先生のものだと分かるが、もう一つはまったく訊いた事がない

声だ。訪ねてきた二人の人物の声に、士郎が目に見えてうろたえだす。



「せんぱ……い?」



「士郎ー、お腹空いたー」



 入ってきた片方の後輩―リボンの色で後輩だと分かった―は、居間の現状を見て固まる。一方、藤村先生は何

事も無いように入ってきて、朝食を食べ始める。数秒後、ん? と首を傾げ、



「あれ? 何で遠坂さんに相沢君がいるの? それに外人さんも」



 ほえ、と口にご飯を含みながら藤村先生。



「あ、ども。お邪魔してます」



 右手をしゅたっと上げて、藤村先生に家に上がっている事のお断りを言う。律儀にご飯を食べながら、あ、う

んいらっしゃい〜と返事を返してくれる。



「お邪魔しています、藤村先生」



「シロウの家族の方ですか。初めまして、私はセイバーと言います」



 次に遠坂、セイバーの順で挨拶をする。もぐもぐとご飯を飲み込んでから、藤村先生は挨拶されたセイバーに

自己紹介をする。



「あ、初めまして。私は藤村大河。決してタイガーじゃないからね」



 よろしくねー、と食事を再開する先生。もぐもぐと魚の切り身を口に含みながら、藤村先生は幸せそうに頬を

緩める。後輩の女の子は未だに固まっている。一瞬後、藤村先生の表情が変わる。



「ってどういう事しろー!! 何で遠坂さんに外人さんがここにいるの

よーー!!?」



 タイガーの咆哮が起こる。学校で聞くよりも、かなり強烈な咆哮だ。危険を察知した俺は一足早く耳を塞いで

いて、事なきを得た。がたっ、と屋根上が揺れたような感じがする。

 しかし、本当にどうでもいいが、俺は別にいても構わないのか。先生が士郎の襟首を持ち、ぐらぐらと揺らす。



「ちょ、藤村先生! それ以上やると先輩が死にます!」



 後輩の女の子が士郎の襟首を握り締めて、士郎を窒息させようとしている藤村先生を必死で止める。その女の

子の声に、藤村先生は我を取り戻す。



「説明……って、え? うっきゃあぁぁぁ! 士郎の首が変な方向にー!?」



 まさに阿鼻叫喚の地獄、といった所か。はぁ、まったくまた面倒な事になりそうだと内心溜息をつきながら、

俺は事の次第を冷静に見つめ続ける。

 しかし、流石に何やら良い感じに士郎の様子が危なげになってきたので助け舟を出す事に。



「ちょっとすいません」



 必死に体を揺らし、士郎に向かって呼びかける藤村先生から士郎を取り上げる。士郎の表情は、これまたやば

いくらいに気持ち良さそうな感じだ。もしかすれば、今頃お花畑で親父さんで会っているのかも。

 士郎の体を畳の上に寝転がせる。



「相沢君?」



 後ろから藤村先生が覗き込んでくる気配。正確には四つの気配が俺の後ろにある。どうやら全員、俺が何をす

るのか興味があるらしい。



「おい、士郎君。起きたまえ、清々しいくらいに気持ち良い朝だ」



 まずは紳士っぽく士郎に呼びかける。当然の如く、士郎はまったく反応せず気持ち良さそうな表情のままだ。

ふむ、やはりこの程度で起きるわけがないか。



「ふぅ、そんな風に無駄な睡眠を取っているとあっという間に老けるぞ? ほら、さっさと起きて共に青春を謳

歌しようではないか、しー君」



 ぐらぐらと士郎の頭を揺らしながら、俺はそう問いかける。勿論デフォで笑顔と渋い声も忘れない。後ろの方

で俺を変な物を見つめるように見てくる四つの視線があるが、完全に無視。

 うぅん、と少し反応が返ってきた。だが、完全に目を覚ましてはいない。俺は自分の額に青筋が走るのを、こ

の時はっきりと自覚できた。きっと傍から見れば俺の笑顔は恐ろしいものに見えるに違いない。



「……いい加減起きろっつってんだこの寝ぼすけがぁ!」



 ドスの効いた声で叫び、俺は昏睡し続ける士郎の鳩尾にヘッドパッドをかます。突然の俺の行動に後ろの面々

が驚いているのが分かる。

 いきなりの腹部の一撃に、気絶していた士郎もげふぅという断末魔を上げて息を吹き返す。痛みに悶え苦しみ

ながら士郎は畳の上を転がる。それを俺は笑いながら眺めていた。



「うぐぐ……な、何するんだ祐一……」



 思いっきりこちらを睨みつけてくる。余程効いたのか、涙目だ。あぁ、なんかこう背筋に寒気のような痺れる

ような感覚が走る。俺ってやっぱりサディストなのだろうか。



「気付けだ。危うく、逝きかけてた所を助けてやったんだ、感謝しろ」



「……そう言えば、死んだ筈の親父と会ってた気もする」



 相当やばかったらしい。三途の川を越えて、既にお花畑まで行って切嗣さんと語り合ってきていたようだ。も

う少し遅ければそのままお陀仏だったのかもしれない。



「先輩、大丈夫ですか?」



 起き上がった士郎に近付き、心配する後輩の女の子。軽く頭を振ってから、士郎はその子に向き直った。



「あぁ……なんとか大丈夫みたいだ」



 その言葉に士郎の後輩らしき女の子は静かに微笑む。ていうか、いい加減にこの子が誰なのか知りたい。



「まぁ、士郎が目覚めたところで……君は、誰?」



 士郎の方を向いていた女の子は、こちらへと向き直って萎縮したように縮こまる。別に変な事を言った覚えは

ないのだが、女の子は明らかに警戒心と少しの恐怖を覚えている模様。下手に何か喋るのはまずそうなので、俺

はその子が話してくれるまで待つことにする。

 それにさほど時間を必要とせず、その子は答えてくれた。



「……間桐桜です。えっと」



「相沢祐一……衛宮士郎の友人だ。相沢さん、祐一さん、相沢先輩、祐一先輩、祐ちゃん。好きなように呼んで

くれ」



 最後ににやりと笑いを込める。きょとんとしていた間桐さんだが、すぐにくす、と笑う。俺に対して抱いてい

た警戒心やら恐怖やらは、既になさそうだ。



「それでは、相沢先輩で」



「じゃあ俺は……桜ちゃん、でいいかな?」



 確認の意味を込めて、視線をやる。



「はい、いいですよ」



 朗らかな笑顔。佐祐理さんや名雪とも違う笑顔に、不覚にもどきとしてしまう。桜ちゃんは何と言うか、大和

撫子みたいな感じがする。天野とはまた違った、大人しめな子だ。



「ちょっと、士郎。説明してくれるわよね?」



「はい。私にも説明してください。何でここに遠坂先輩と美人の外人さんが?」



 ……怖い。さっきまでの桜ちゃんは何処へ行った。士郎へと詰め寄る二人……特に桜ちゃんからは鬼気迫るよ

うなプレッシャーが放たれている。俺と士郎は立場こそ違えど、そのプレッシャーに恐れおののく。

 うぅ、俺までとばっちり受けるのはごめんだ。ここは暫く口を出さない方が懸命だと思い、俺は傍観者を決め

込む事に決めた。


 
中編へつづく



後書きと言う名の座談会


イリヤ「あれ? 何で私がここに?」


バー「■■■■■ーー!!」


イリヤ「え? 作者が逃亡中だから?」


バー「■■■」


イリヤ「で、それをユウイチが追いかけてるから後書きを頼むと」


バー「■■■■ーー」


イリヤ「分かった、ありがとう。バーサーカー」


バー「■■■■■ーーー!!」


ドガァァッ!!


イリヤ「きゃぁ! いきなり斧剣振り回しちゃダメ!」


バー「■■■■ーー……」


イリヤ「もう、お城で何度も言ってるでしょ? ユウイチだって人様に迷惑かけちゃ駄目って……」


バー「■■■■ー……」


イリヤ「聞いてるの、バーサーカー!」


バー「■■■■ーー!?」


後書きにならずに終わる


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